楽曲の構成がミソ
サビ
生まれたての波が優しく 足を撫ぜる
「このままではいられない」とささやいている
重ねた手のひらが導く 旅は続く
Yes,I Overstand Yeah
出典: OVERSTAND/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
一般的に現代J-POPの楽曲構成は、Aメロ→Bメロ→サビという形です。
しかし、1960年代や1970年代のJ-POPでは、この曲のようにAメロ→サビという構成が一般的でした。
Aメロ→サビという構成はシンプルですが、シンプルな分だけ伝えたいメッセージがリスナーに強く伝わるというメリットがあります。
さて、サビの歌詞です。
「生まれたての波」とはどういう意味なのでしょうか?
文字どおり海の波打ち際に足を付けているのか、それとも主人公の心に生まれた何かしらの変化なのか。
外面への旅なのか、内面への旅(精神的な旅行)なのか。
主人公は「このままではいられない」と、自問自答していますね。
どちらの解釈もできる歌詞ですが、筆者は後者の方だと感じます!!
韻を踏んだ歌詞がリズミカル!!
2番Aメロ
Far Away 遠く遠くへ行く
触れたい 触れたことのないもの
Eye and Eye 奥 深く吹く
新しい 強く優しい風
出典: OVERSTAND/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
どこかへ旅する人の心境をシンプルに描いていますね。
自分が見たこと、触れたことのないものに対する欲求、そして奥深く知りたいという欲望。
主人公はひとつの転換点を迎えているみたいです。
また、「遠くへ行く」と「深く吹く」で韻を踏んでおり、言葉にリズミカルさを出しています。
2番サビ
燃え尽きそうな夜明け前のブルース 口ずさめば
なにも知らないような気持ちにしてくれる
語りかけたら応えてくれ
Yse,I Overstand Yeah
出典: OVERSTAND/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
自問自答している主人公が好きなブルースを歌うと、良い意味で空虚になれる。
真っ白な、なにも書かれていないノートに自分の歴史を記すことができる。
それでも大事なものは、語りかけたらすぐに反応し、呼応する。
後から詳しく書きますが「Suchmos」は『FIRST CHOICE LAST STANCE』を契機に、新しい一歩を踏み出しています。
バンドにとって非常に大きなできごとだったと思いますが、この曲の作詞をしたYONCEさんの、その当時の心境が分かる歌詞だと思います。
入学、結婚、出産など、人間誰しも大きなできごとや身の処し方を決める時、大いに悩むと思います。
そういう時人間は自分の内面に入り、どのようにすればベストなのかを考えなければいけません。
それは音楽をやっている彼らだって同じなのです。
その苦悩がダイレクトに伝わってくる箇所だと思います。
Cメロ
これから迫りくる、得体のしれない未来に向かって問いかけてる主人公。
人と人とのつながりが唯一だと確信する彼は回想します。
「失った21st」というのは、何を失ったのでしょうか?
歌詞中に具体的な内容が無いので筆者の想像になりますが、21歳の時に主人公を傷つかせる事件があったのだと思います。
この歌詞の前に「Respect」とありますから、尊敬していた人からの裏切りや、主人公が好きだったアーティストが信頼を裏切る何かを起こしたのか。
なかなか解釈は難しいですが、「21st」とは年齢を指すのだと思います。
次のサビは、前のサビと同じ歌詞なのでここでは割愛します。
『OVERSTAND』の楽曲を解説
『OVERSTAND』の冒頭は、水や海を思わせるシンセサイザーの音から始まります。
その音がまるで水滴のような音色で、規則的なリズムを奏でていますね。
やはりこの曲と「水」は関連がありそうです。このシンセサイザーの音が、楽曲全体のテーマになっていると思います。
テンポはゆったりとしていますが、力強いドラミングがそれを感じさせません。
入っている音もそれほど多くありません。ドラム、ベース、ギター、シンセサイザー位でしょうか。
音が主張するというよりも、音と音のすき間を意識してプレイしているように感じます。
ボーカルはブルーノートやフェイクを使った、レベルの高い歌唱になっていますね!!
カラオケでこの雰囲気を出そうとしても、ただダルそうに歌っているのではありませんので、なかなか難しいと思います......。
最後のサビで転調し、その後はコーラスになりますが、往年の「ビートルズ」や「プロコル・ハルム」をしのばせる曲調です。
彼らのブリティッシュサウンドの影響が感じられる箇所ですね!!