もう怖れることはなくなった

マドンナ【ライク・ア・ヴァージン】歌詞を和訳&解説!意外と初々しい?マドンナの代表曲はどんな内容?の画像

Gonna give you all my love, boy
My fear is fading fast
Been saving it all for you
'Cause only love can last

出典: ライク・ア・ヴァージン/作詞: Billy Steinberg Tom Kelly 作曲: Billy Steinberg Tom Kelly

「ライク・ア・ヴァージン」という文句こそ出ませんがコンセプトは貫徹しています。

「あなたに私の愛すべてを捧げましょう

私の恐怖心がすぐに消えるわ

あなたに捧げるためにすべてを守り抜いてきたの

なぜって愛だけが絶えることを知らないからね」

不遇な時代を過ごしてきたので、今の男性と出会ってバラ色な世界が現れます。

目の前の彼に対してあらゆる愛の言葉を投げかけるのです。

この恋愛は主人公の女性を勇気付けます。

物事を怖れる心が消え失せるのは恋愛がもたらす万能感に由来するでしょう。

やっと手に入れた愛ですから、いつまでも消え入らないように愛の火を灯すのです。

異性との交流がない孤独な日々を長く過ごした後に素晴らしい愛に出会った方は納得できるでしょう。

孤独を癒やされるような成功した気持ちに寄り添う歌詞であります。

一方で今、孤独な境遇にある人にはまばゆい光のように希望を指し示す歌詞なのです。

いずれこんな素敵な恋愛があなたを待っている。

マドンナは実際に不遇な下積みを経験しているからこそ人々に希望を与えることができました。

愛こそ人の心を引き裂いたり、壊したりすることがあります。

しかし、順調なときの愛はその人のあらゆる肯定的な側面の後ろ盾になるのです。

自信をつける主人公

愛によって新しい人生が始まる

マドンナ【ライク・ア・ヴァージン】歌詞を和訳&解説!意外と初々しい?マドンナの代表曲はどんな内容?の画像

You're so fine and you're mine
Make me strong
Yeah, you make me bold
Oh your love thawed out
Yeah, your love thawed out
What was scared and cold

出典: ライク・ア・ヴァージン/作詞: Billy Steinberg Tom Kelly 作曲: Billy Steinberg Tom Kelly

使役動詞のmakeが人と人の関係を結んでいます。

「あなたはとても最高で、私のものよ

あなたは私を強くして

Yeah,あなたは私を大胆にさせるわ

Oh あなたの愛が解き放ってくれた

怖がりで凍てついた私を」

Fineの訳し方は様々あるので最高以外にも洒落た言葉がありそうです。

とにかく新しく訪れた愛に飲まれて彼の魅力に没入します。

自分ひとりだけではなく、愛する人とともに世界と関わることができる。

これだけで勇気を得た気分になるのです。

恋愛は人を変えます。

臆病だった少女が怖いものなどないと思えるほどに成長する。

恋愛の効用で一番素晴らしいものは自分に自信が持てることではないでしょうか。

自信が持てるようになるとその人の普段の行動も大胆で奔放なものに変わります。

恋愛のいい効用は周囲の人への態度まで変えてしまうのです。

愛の力によって照らされた主人公の女性は周囲の人にも幸せをお裾分けできる大人の女性へ変貌します。

不遇な状況に囚われた人はどうしても行動がこじんまりしてしまうでしょう。

その点で生まれ変わった彼女は明るく周囲を照らせる存在へと自らを成長させるのです。

雪解けであふれて春の川に注いでゆくイメージ。

「ライク・ア・ヴァージン」は恋愛がもたらす幸福しか歌いませんので安心して聴いてください。

「feel」が意味するもの

文化を進化させた歌

マドンナ【ライク・ア・ヴァージン】歌詞を和訳&解説!意外と初々しい?マドンナの代表曲はどんな内容?の画像

You're so fine and you're mine
I'll be yours' till the end of time
'Cause you made me feel
Yeah, you made me feel
I've nothing to hide

出典: ライク・ア・ヴァージン/作詞: Billy Steinberg Tom Kelly 作曲: Billy Steinberg Tom Kelly

間にサビのリフレインが挟まれます。

繰り返しになりますので訳出は割愛しましょう。

「あなたはとても最高で、私のものよ

時間の果てまで私はあなたのものになるわ

なぜってあなたは私に感覚を甦らせてくれたから

Yeah,あなたは私に感覚を甦らせてくれるの

私には隠すものなど何もないわ」

彼を自分のものと宣言して、自分も彼氏のものになります。

理想的な愛の形でしょう。

この世の果てまでと永遠の愛を誓うのです。

不幸な時代には考えられなかったことが普通のことに変わります。

不遇な状況では人にとって大事な「feel」が得られなかったと彼女は歌うのです。

「feel」は感覚と訳出しましたが、肉感的な愛における大切な「feel」も含んだ話になります。

愛を観念的に捉えると破綻するのは目に見えるようです。

近代日本文学が描く愛の破綻などを思い起こしてください。

肉感的な愛の裏付けがない愛は理想の中で生きるもの。

そのためにお互いが理想と外れることがあればすぐに破綻するでしょう。

洋楽一般は早くから肉感的な愛を歌います。

しかしマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」は女性から一歩進んでこうした愛の形を歌ったのです。

このことはとても大きな前進を社会全体にもたらしました。

意志を持って女性性を歌い上げた先駆者的な存在がマドンナです。

女性の側からの肉感的な愛の復権の象徴でありました。

一番熱い愛の表現

ダンス・ポップで愛の復権を

マドンナ【ライク・ア・ヴァージン】歌詞を和訳&解説!意外と初々しい?マドンナの代表曲はどんな内容?の画像

Like a virgin, Oh, oh
Like a virgin
Feels so good inside
When you hold me
And your heart beats
And you love me

出典: ライク・ア・ヴァージン/作詞: Billy Steinberg Tom Kelly 作曲: Billy Steinberg Tom Kelly

また間にサビのリフレインがあります。

紙幅の関係で訳出いたしません。

「まるでヴァージンのようだわ,Oh oh

ヴァージンみたいになるの

身体の内側から大きな悦びを感じるわ

あなたに抱きしめられると

心臓の鼓動が聴こえる

あなたは私を愛してくれるのね」

「ライク・ア・ヴァージン」の中では一番熱い箇所かもしれません。

あなたといると最初に知った愛の感触を取り戻せる予感がするというのが一貫したテーマでしょう。

心臓の鼓動の音を感じられることから愛されていることを知るのです。

ひとりで生きている人には得られない気持ちでしょう。

孤独に錆び付いていただけの主人公が解放されたように新しい愛を精一杯生きます。

幸せの絶頂の中で生きていることを実感する人間像は率直さがあり素敵です。

人生の悦びを何に求めるかは人それぞれですが愛に生きられる人は魅力的でしょう。

恋をしたことがある人に再び愛の悦びを教えてくれました。

こうした価値観は黒人音楽の中で多く育まれてきます。

マドンナは「ライク・ア・ヴァージン」のようなダンス・ポップにこうした精神を復興させるのです。

すでにマドンナによって一変された世界に生きる私たち。

しかし今の女性ポップ・アーティストの活躍の土壌はマドンナがひとりで果敢に切り拓いたものです。

「ライク・ア・ヴァージン」と時代の変遷