吹けば青嵐
何もかも捨ててしまえ
今に僕らこのままじゃ
誰かも忘れてしまう
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
青嵐の突風ではこの世の中が変わらないなら、いっそのこと全部なくなってしまえばいい。
1番よりもっと強さを感じられるサビの歌詞です。
この画一的で常識的ばかりを求められる世の中じゃ、個性なんて埋没して終わってしまいます。
結局こんな社会に生きていたら、自分の爪痕は残せません。
自分の存在なんてちっぽけすぎるほどちっぽけで、そのうち忘れられて終わってしまうだけのもの。
そんな風な投げやりな思いが感じ取れます。
吹き飛ばしたいのは胡桃やかりんどころではない
青い胡桃も吹き飛ばせ
酸っぱいかりんも吹き飛ばせ
もっと大きく 酷く大きく
この街を壊す風を
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
「青い胡桃(くるみ)」「酸っぱいかりん」という言葉も、宮沢賢治の童話の中に登場します。
どっどどという風の音とともに、胡桃やかりんも吹き飛ばしてしまえという場面です。
歌詞の中にこの童話の一節を織り込みながら、本当に吹き飛ばしたいのはもっと大きなものでしょう。
大きく社会の秩序全部吹き飛ばしてほしいという強い思いを感じます。
風の又三郎に委ねたい思いとは
主人公は、風の又三郎のような、すべてを吹き飛ばしてくれるかのような突風を待ち望みます。
けれど本当は彼自身、わかっているのでしょう。
都合のいい突風は起こるはずもなく、世の中も変わらない。
変えていくのは自分たちの力でしかないのだと。
悲しみも夢もすべて捨ててしまいたい
吹けよ青嵐
何もかも捨ててしまえ
悲しみも夢も全て
飛ばしてゆけ 又三郎
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
青嵐を起こす何かは、主人公にとってはまさに風の又三郎的な存在です。
本当は鬱屈したこの社会全部を吹き飛ばしてほしかった。
でも吹き飛ばしてほしいのは、本当は社会だけではないのかもしれません。
主人公を含め、今を生きる人々が持っている悲しみとか、かなわない夢とかすべて、すべて。
それ全部を吹き飛ばして、リセットしてほしいと望んでいるのかもしれません。
本当は自分が声を上げていかなくてはならないとわかっている
行けば永い道
言葉が貴方の風だ
誰も何も言えぬほど
僕らを呑み込んでゆけ
出典: 又三郎/作詞:n-buna 作曲:n-buna
今を生きる主人公はまだ20代くらいの前途ある若者でしょう。
これから長い長い道のりを進まなくてはなりません。
歴史が敷いてきた秩序のもと、自分の前に果てしなく続くであろう道のり。
それでも、それ全部をまっさらにしてしまいたいと感じているようです。
もちろん世の中の常識が変わるということは、当事者である自分自身だって変化を求められます。
仮にそうだとしても。
そんな変化に自分が飲み込まれてしまってもいいから、すべてが変わってほしい。
大きな変化が起こらないことくらいわかっているけれど、それでもすべてを新しくしたい。
そんな心の叫びが歌詞から伝わってきます。
そしてラストは童話の一節「どっどど」という強い風の音で締めくくられます。
なんだか強い風が一瞬自分の耳を切り裂いて、そして過ぎ去ってしまうような…。
一抹の寂しささえ感じられるラストなのです。