くるり「魔法のじゅうたん」

くるりの23枚目のシングルは両A面シングルです。 「魔法のじゅうたん/シャツを洗えば(ヴァージョン2)」として発売されています。

魔法のじゅうたん(くるり)のポップな輝きを放つ歌詞を徹底解釈!コード譜はこちら♪の画像

くるりのボーカル/ギターの岸田繁は京都出身。

メンバーチェンジを繰り返し、故郷を遠く離れ、世界中の様々な音楽を吸収しながら、珠玉のポップソングをいくつも生み出しています。

彼らのいちばん深いところにあるのはフォーキーな日本語の歌であるということ。

「魔法のじゅうたん」は奥田民生ら日本語ロックを牽引してきたアーティストの魂を受け継ぎながら、響く言葉が魅力的な楽曲です。

YouTubeでくるり「魔法のじゅうたん」をcheck!

岸田繁自身がディレクションしたMVも魅力的です。

様々なミュージシャンと出会い、別れ、それでも音楽を追い求めてきた岸田繁。

もちろんこの曲の後も岸田は歌い続けています。

でもどこかで彼が奥田民生のような境地で歌っていたのではないかと思わせる部分があります。

奥田民生「イージュー★ライダー」

奥田民生が90年代に"僕らの自由を"と歌ったことに対して、岸田は「魔法のじゅうたん」で新しい"僕ら"を歌っているのではないでしょうか?

名曲をテープに吹き込んで
あの向こうの
もっと向こうへ

僕らの自由を
僕らの青春を
大げさに言うのなら
きっとそう言うことなんだろう

出典: イージュー★ライダー/作詞:奥田民生 作曲:奥田民生

魔法のじゅうたん(くるり)のポップな輝きを放つ歌詞を徹底解釈!コード譜はこちら♪の画像

奥田民生のこの歌はアメリカから影響を受けて、どこまでも走り続けるイメージがあります。

90年代は、何もないけれど、音楽があればそれでOKという雰囲気がありました。

くるりの岸田はそういう日本語ロックの系譜について敬意を払いつつ、この歌でヴァージョン・アップしてみせたような部分があると思います。

また両A面である「シャツを洗えば」がユーミンとのデュエットであることも示唆的ですね。

僕らの自由はどこへいったか? 「魔法のじゅうたん」の歌詞に迫ります。

くるり「魔法のじゅうたん」の歌詞を読む

君のこと沢山 知ってるつもりだったな
だけど こんなにも分からなくなるなんて
素敵な時間も ありふれた朝も
今日は青空だけどさみしいなんて
僕のこと沢山 話せば話すほど
なぜか こんなにも分からなくなるなんて
強い向かい風が頬をかすめる 
君のにおいを感じればいい

出典: 魔法のじゅうたん/作詞:岸田繁 作曲:岸田繁

君のことを知っているつもりで知らない。

僕のことを知っているつもりでわかっていない。

そういうお互いのわからなさについて歌われています。

そして風は向かい風。 自由を謳歌する時代ではなく、厳しい現実があるということに誰もが気づいています。

でも、そういう現実に対して、岸田は"君のにおい"を感じればいいと歌っています。

僕らはこんなにも沢山の 
夢見がちだった風景を変える
これからのことだろう
目に見えるものすべてが 
耳に余るものすべてが遠くなっても 
離れないで

出典: 魔法のじゅうたん/作詞:岸田繁 作曲:岸田繁

ここで歌われる"僕ら"は、奥田民生が歌った"僕ら"とは違って、夢見がちだったことを認めています。

"こんなにも沢山の夢見がちだった風景を変える"という部分はとても難しい部分ですね。

未来に対して明るくポジティヴで解放的だった自由が失われてしまったのです。

そして目にみえるものや耳に聴こえていたものが遠ざかっても、"離れないで"と歌われています。

ここは哀愁を感じる部分です。

人と人が出会ったことの尊さを歌いながら、離れゆくことが余白から感じられます。

泣かないでピーナッツ 
クリームになったピーナッツ
パンと バターナイフで塗って食べよう

出典: 魔法のじゅうたん/作詞:岸田繁 作曲:岸田繁

ピーナッツは元々はあのピーナッツです。

でも加工されてクリームになったピーナッツはパンに塗って食べるものです。

ピーナッツが泣いているのは、元々の姿を失うから。 でもパンとひとつになる。

これは人というものが生きていくなかで他人に変容させられ、何かとくっつくように加工されていることの喩えでしょうか?

ユーモラスに歌われていますが、なんとなくせつない部分でもあります。