東からの風は絨毯のように 生まれた街へ飛んでった
それでもまだ 飛び足りなかったようだった
そして僕は君を絨毯で まだ見ぬ世界へと連れてゆく
遠くなっても近くにいるようなんだ
心はひとつになったんだ パンとピーナツクリーム頬張って
どこへ行けども思い出せるならば
愛し合うことの寂しさと 思いやることのぬくもりを
ここに置いておけばいいんだ
夢見たように飛んでゆけるから
出典: 魔法のじゅうたん/作詞:岸田繁 作曲:岸田繁
厳しい現実の中にありながら、生まれた街へ帰っていく姿が描かれています。
東京へ、アメリカへ憧れた自分たちは、故郷へ戻り、そしてさらにどこかへ行こうとしているのかもしれません。
"遠くなっても近くにいるようなんだ 心はひとつになったんだ"という部分は、インターネットのことだけではないと思いたいですね。
"愛し合うことの寂しさと思いやることのぬくもりをここに置いておけばいいんだ"という部分も、人情というものを忘れることが歌われているように思います。
夢見たように飛んでいくことが歌われているようで、失われていくことも同時に歌われているのかもしれません。
フォークソングの中にあった魂
1960年代以降、日本の土着の音楽はフォーク・ソングだったと思います。
演歌から続いて次の世代はフォークソングに思いを託した。
でも音楽は人々の心とともに変化し、多様になりながら、失われゆく歌もたくさんあると思います。
世代を経て変化していくこと、変化しないこと。
両面を捉えながら岸田は歌っているようです。
歌に隠されている思いは、決して明るいことばかりではないけれど、「魔法のじゅうたん」がどこかへ辿り着くように、僕たちもどこかへ辿り着くことができればいいですね。
「魔法のじゅうたん」のコード譜
くるり・岸田の世界観
デビュー曲「東京」でもそうだったように、故郷を時には離れて活動のフィールドを広げていった岸田。
でもずっと心の中にあるのは故郷である京都であり、たとえ旅をして新しい世界を切り開いたとしても、自分の根ざす魂の場所が彼の歌にはあり続けているように思います。
だから哀愁があり、変容していく世界に対してノスタルジックでもある。
彼の歌にはちゃんと魂があり、それは昔から続いている京都という街のあり方とも通じています。
そういう根がありながら、泣いたり、笑ったりしながら旅をすることも歌われています。
自分がどこから来たのかという部分をしっかりと持っていて、大切にしているのでしょう。
彼は様々な音楽を吸収しつつ、歴史を尊んでいるのだと思います。
デビュー曲「東京」
エレクトリックなサウンドが魅力的な「ワールドエンド・スーパーノヴァ」
生命を歌う「奇跡」
失われつつある都市への哀愁「琥珀色の街、上海蟹の朝」
彼らの軌跡を追いかけ、彼らの未来を追いかけるだけできっとわかることがたくさんあるような気がします。