例え天使だって誰かを救うためには自分の身を挺さないといけないようです。
そして彼は何度も人を救ってきたのでしょう。
その姿はボロボロで、まさに死神さながら。
彼はどうせボロボロになるならと何も持たず、食べるものも最低限。
そして悲しみに耐える準備はいつだってできています。
本当は愛されたい
見た目とか体裁とかどうでもいいっていって抱きしめてよ
いつか男とか女とか関係なくなるくらいに愛し合おうよ
出典: 死神/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
ここで登場するのは、「その人が救われるのならそれでいい」と言っていた彼の本心。
本当は「死神だ」と罵られて深く傷ついているのではないでしょうか。
「見た目がどんなにボロボロだって、みんなから死神だと言われていたって、そんなこと関係なく愛してほしい」
人のために自分の身を挺することをいとわない彼ですが、本当は愛されたかったのです。
芽生えてしまった憎しみ
おまえみたいなやつが子供を育てちゃいけないとか言われて
いつか歴史が僕を正しいと証明したって意味がない
僕をボロボロにした全て 僕はどうしても殺したくて
誰もはみ出さないクソ平和のため 僕だけが僕を殺してきたけど
出典: 死神/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
この部分から、ずっと感情を押し殺して来た彼の気持ちに変化が見え始めます。
散々罵られても、人を救い続けた彼。
その行いがいつか報われるのでは、彼にとっては意味をなさないんです。
だって、彼はいつかではなく、今に生きているのですから。
傷付いた彼に芽生えたのは、自分をボロボロにしたものへの憎しみの気持ちでした。
天使から死神へ
死んだように生きてこそ 生きられるこの星が弱った時に
反旗を翻せ 世界を殺める 僕は死神さ
出典: 死神/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
彼は自分を押し殺さないとこの世界では生きていけませんでした。
そして積もりに積もった悲しみは今憎しみに変わったのです。
もうすぐやって来るこの世界が弱るとき、すなわち自分を罵ってきた人々の心が弱るとき。
そのときこそ彼が復讐を遂げる瞬間です。
こうやって、天使は本当の意味で死神へと姿を変えてしまったのでした。
心の闇の根底にあるのは
川は海へとひろがる 人は死へと溢れる
やり尽くしたかって西陽が責めてくる
かなしみを金にして 怒りで花を咲かせて
その全てが愛に基づいて蠢いている
出典: 死神/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
ここからサビです。
ここで表現されるのは、限りある人生においての無力感でしょう。
川が海へ流れていくかのごとく、いずれ人が死んでしまうのは避けられないこと。
そんな時間とのせめぎ合いの中で、沈みゆく太陽はその日を全うできなかった自分を責め立てます。
そして後半部分に並ぶのは、人間の心の闇を感じさせる言葉。
悲しい思いをしながらお金を稼ぐ人が居れば、怒れる気持ちからのし上がった成功者も居ます。
でもその心の闇の根底にあるのは、結局は人を愛する気持ちではないでしょうか。
自分が悲しい思いをしてでも守りたい人がいるのかもしれません。
怒れる気持ちも、周りの人をどうでもいいと思っていれば生まれないでしょう。
光と闇は表裏一体。
相容れない存在なのかもしれませんね。
世界の終わり
投げつけた右腕は 君の君を探して
駆けつけたその足で 隕石を蹴散らして
世界の終わりなんて僕たちはもうとっくに
みたことあったんだ そう 何度も負けたけど
出典: 死神/作詞:大森靖子 作曲:大森靖子
ここで描かれるのは死神が身を挺して人を守ってきた様子です。
世界が弱ってきたら復讐しようと思っていた死神。
しかし自分がその世界の終わりをもう何度も見ていることに気付きます。
そう、彼が触れてきた悲しみはまるで世界の終わりを感じさせるようなものだったんです。
「身を挺して何度も誰かを救うたびに自分は世界の終わりを見てきた」
このことに気付いた彼はどんな気持ちを抱くのでしょうか…。