機械音を使用した星野源の新境地
5thアルバム「POP VIRUS」収録曲
マルチに活躍する星野源さんの5thアルバム「POP VIRUS」。
「サピエンス」はこのアルバムに収録されています。
タイトルは、ホモ・サピエンスなど動物としての人間の学名に使われる単語ですね。
テレビCMでも使用されたため、星野さんのファンでなくてもサビを聞いたことがある人は多いでしょう。
最初から聴いてみると、機械的な電子音を使ったイントロがなんとも印象的。
このような音は、それまでの星野さんの楽曲にはありませんでした。
彼にとっての新しい挑戦となったようです。
アップテンポで爽やかなメロディとは裏腹に、歌詞は機械になりたいと考える人間の苦悩が克明に表れています。
何故機械になりたがっているのでしょうか。
そこには星野さんを含めて誰もが感じたことのある「暗い側面」がありました。
こだわりがたくさん詰まった「サピエンス」の歌詞を解説しましょう。
ドコモ「星プロ」シリーズのCMでも話題
先にお伝えした通り、「サピエンス」はCM曲として使用されていたことがありました。
星野さんご自身が出演するドコモのCM「星プロ」シリーズ。
その「青春のドまんなか・スタート」篇というCMに使われています。
恐らくこのCMで「サピエンス」を知ったという人が多いのではないでしょうか。
「サピエンス」のアップテンポで明るいメロディは、青春学園ものによく合っていますね!
自分は人間
「サピエンス」は人間と機械がテーマ。
電子音が基調のメロディにもよくそれが現われています。
最近ではAIなど、機械の存在が強まる世界になってきました。
歌詞の主人公は、「いっそ自分が機械になれれば」と嘆きます。
いったい何が起こったのでしょうか?
いっそ機械になりたい
独りに浮かんだ
滲む音楽が
貴方の鼓膜を揺らした
機械になりたいんだ
優しさを持った
加速するハットは
ベースを連れる
出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源
どこからか頭の中に浮かんできたフレーズを、「貴方」という相手に聴かせます。
なんだか楽曲を作っている場面のようですね。
星野さんの作曲風景が元になっているのかもしれません。
そこで何故か主人公は、自分が機械になることを望みます。
思い浮かんだそのメロディを、機械のように完璧に演奏したいという思いでしょうか。
この音楽に使われるのがハット、つまりドラムのハイハットシンバルとベースです。
人間が演奏すると間違える可能性があっても、機械がやれば手元が狂う心配はありません。
効率だって、機械の方が圧倒的に良い筈。
完璧な演奏をしたい、というのは多くのミュージシャンが一度は思うでしょう。
機械になれない
ふと足を止めた
些細なユリーカ
誰かの足もと照らした
機械になれないんだ
僕たちはいつも
見えてる天竺
目指しながら
出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源
2行目の「ユリーカ」とはギリシャ語で「発見」という意味です。
主人公達は何かを発見したようですね。
本当にちょっとしたものでも、それが路頭に迷う人に道を示してあげられることもあるでしょう。
音楽を作る主人公達にとっての転換点となる可能性もあります。
そうやって何かを見つけ、積み重ねられるのは人間にしかできません。
機械はこれらができないのです。
発見を積み重ねながら、この先にあるゴールに進む。
このゴールを「天竺」と呼んでいるのは、西遊記のパロディでしょう。
「天竺」とはインドのことで、三蔵法師たちの旅の目的地です。
彼らと同じように、主人公とその仲間たちは4人組なのかもしれません。
何かを見つけ、道を切り開くのは人間だからできることといえます。
それをやって進んできた主人公は「ああ、自分は機械になれないな」と思いました。
人間には人間の良いところもあるのです。
機械になったら、こういう足もとにあるお宝には気付けないでしょう。