ただ 馬鹿馬鹿しさの中
歌い出す

出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源

機械になりたい、でもなれない

その悩みは、音楽を奏でる上で必ずしも必要ないことです。

主人公は自分でそのことに気付き、「馬鹿馬鹿しい」と思ったのでしょう。

確かに悩むよりも、音楽作りに没頭したほうが有意義かもしれません。

そうやって自嘲しながら、主人公は自分の作った歌を歌い始めます。

演奏し、歌うことが彼らの使命だから。

人は間違える生き物

ああ 僕らは
いつまでも間違ったまま
世界を変えて走り出す
ふざけた愛(かな)しみを味わったまま
やめない意味は
いつの日も寂しさだ

出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源

この歌詞でいう「僕ら」は主人公とその仲間にも、人類全体を指しているようにも解釈できます。

機械と違って、人間は間違える生き物です。

しかも間違った何かをベースに、世界を作り変えてしまいます。

これは音楽に限らず、何でもそう。

歴史が間違いの繰り返しであるように、人は間違いを繰り返しながら生きているのでしょう。

進んだ後でようやく間違いに気付き、かなしむことは端から見たらふざけているように見えるかもしれません。

それでも人間は、間違えたという悲しみを味わっても突っ走り続けます。

走ることをやめられない理由は「寂しさ」

世界を作り変えないと、走らないと人間は寂しさを覚えるというのです。

寂しさを感じないように、走り続けずにはいられないのでしょう。

「かなしみ」も「悲」ではなく「愛」を使うことで、若干ポジティブな意味合いになっているのも特徴的。

そもそも昔は「愛し」を「かなし」と読んでいました。

「悲しい」という表現になったのはその後の時代になります。

星野さんはそのことを知り、敢えてこの漢字を当てたのだとか。

機械と違って間違い続ける人間は、愚かでかなしいかもしれません。

ですがかなしくてもどこか愛おしい、そんな存在でもあるのです。

「クソみたいな世の中」で

二番は、現代社会の負の側面が少し強調されます。

星野さんのお言葉を借りるなら、「クソみたいな世の中」でしょう。

身も蓋もないこの呼び方が、多くの人の共感を呼ぶ要素ですね。

こういった暗い部分を包み隠さず表現するのが、星野さんの魅力。

「サピエンス」が収録されているアルバムPOP VIRUS」では、この言葉がキーワードになっています。

この曲が映し出す今の社会とはどんなものなのでしょうか。

愛を受け取る

花がひらく
君がわらう
偶にもらう
愛をもらうよ

出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源

ここは今まで以上に抽象的な歌詞ですね。

もらった愛の花が開いたことで、相手が幸せそうに笑うということでしょうか。

「花が開く」というのは、何かを達成したり成就したりするように感じられます。

そしてたまには主人公も同じように、相手から愛を受け取るのです。

大好きな人と、愛情を渡したり受け取ったりする。

要するに、愛し合うことを意味しているのかもしれません。

夢の中の話

ただ 空々しさの中
夢を見る

出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源

幸せそうな場面から一転、現実に戻ったかのようなシーンになってしまいました。

愛の受け渡しはだったのでしょうか。

そしてこの「空々しさの中」こそが、現代社会の負の部分が端的に表されているように感じられます。

「空々しい」とは、「真実味がない」だとか「嘘っぽい」という意味の言葉です。

前の愛し合う場面は、今の世間からしたら作り話めいているように感じられるのかもしれません。

今の社会って、真実味がないものは良くないものという風潮がどこかにある気がします。

夢を見ることが悪いことというような…。

主人公もその圧力を感じているのでしょう。

それでも大切な人と愛を分かち合うという夢も捨てていません。

人なら転んだって笑い合える

ああ あなたは
いつの日も間違えたまま
泥水蹴って走り出す
ふざけた愛しさを抱えたまま
転んだ後に
目が合って
笑うだろう

出典: サピエンス/作詞:星野源 作曲:星野源