続いて名古屋。
ここでも仙台と同じように出会いが描かれています。
1行目の「今池」というのは名古屋の地域で、エンターテインメントが盛んな場所です。
映画やジャズやブルース音楽にあふれた地域。
おしゃれな印象を感じます。
そんな地域にあるスナックで出会った女性。
その女性は何か悩んでいる様子を感じるのではないでしょうか。
涙をためていて、今にも泣き出しそうな様子です。
おそらくその様子はたとえ表情を見ていなくても、背中から悲しそうな表情を受けていると思います。
その女性のことを見て、相談に乗ってあげたい、悲しみから救ってあげたいと感じているのです。
この名古屋でのシチュエーションは、この曲の中でも一番大人な印象を受けます。
スナックでの出会いということからも夜。
そして今池というジャズやブルースが盛んな場所ということで、どこか大人な雰囲気を感じます。
悲しい表情
支えたい大阪
今にも空が泣き出しそうな
道頓堀の橋のたもとで
何を思案のこいさん一人
声かけたいな大阪の人
出典: ふりむかないで/作詞:池田友彦 作曲:小林亜星
場所は変わって大阪です。
3行目の「こいさん」とは関西弁で「商家の末娘」という意味。
船場言葉と呼ばれ、商家でよく用いられていた関西弁です。
関西弁の中でも、高貴な印象のある方言です。
この言葉からも、曲の雰囲気に合った上品な、ダンディーな印象を受けるのではないでしょうか。
1行目の描写から何か悲しそうな様子が伝わってきます。
雨が降る直前のようです。
そして何かを考えている女性。
空の雰囲気も相まって、かなり悩んでいる様子が伝わってきます。
その何かを考えるうしろ姿を見て、相談に乗ってあげたいと思ったのでしょう。
自分が救ってあげたいという気持ちが芽生えたのです。
別れの博多
泣いているのか笑っているのか
那珂川ばたにたたずむあなた
ついてゆきたいあなたのあとを
ふりむかないで博多の人
出典: ふりむかないで/作詞:池田友彦 作曲:小林亜星
最後のシチュエーションは博多。
2行目に出てくる那珂川は、福岡市中心部に流れている川です。
シチュエーションは違いますが、歌詞はほぼ東京と同じことがわかります。
東京では「すてきなあなた」と前向きな表現をしていました。
しかし博多では、その女性はたたずんでいます。
この言葉はあまりポジティブな印象は受けません。
しばらく何かを考え動いていない状況。
そして1行目、女性がどんな表情なのかがわからないことが伝わってきます。
女性は川の方を向いていて、主人公はその女性のうしろ姿を見ているという状態だと考えられます。
そして、本当は女性と共に歩いて行きたいけれども、それはできない。
もしまた女性が振り向いて目があってしまったら、気持ちがさらに揺らいでしまう。
だから「ふりむかないで」と述べているのです。
女性の後ろ姿
「ふりむかないで」に込められた意味
タイトルにもなっている「ふりむかないで」。
この歌詞が出てくるのは、東京と博多だけです。
それ以外は「~したいな」と、これから自分がどうしたいかが描かれています。
しかし東京と博多に関しては「しないで」と相手に任せる言葉。
また東京と博多は、ほとんど同じ歌詞でしたが、全く違った印象を受けました。
東京は女性のことを「上京する人」と考えると、前向きなもの。
「応援したいからふりむかないで」というイメージです。
しかし博多は「自分の気持ちが揺らぐからふりむかないで」と前向きではないイメージ。
東京は「あなたのため」、博多は「自分のため」にふりむかないでほしい。
同じ言葉でも気持ちに変化があることがわかります。
惹かれる理由
ここまでさまざまなシチュエーションで女性を見ていることがわかりました。
全員違う女性で、それぞれ全く異なった感情が伝わってきます。
しかし、どのシチュエーションでもその女性の姿が気になっていることがわかります。
そしてどの女性も、一体何を考えているのかが全く歌詞の中では描かれていません。
どんな気持ちなのか、全く主人公はわかっていないのです。
その女性がどんな表情か、なぜ急いでいるのか、なぜ泣いているのか、何を考えているのか。
はっきりとした女性の想いはわかりません。
だからこそ惹かれてしまうのです。
そのミステリアスさ、か弱さ、儚さをとても魅力的に感じてしまうのです。
そしてもし悩みを抱えているのであれば自分が支えたい。
そんな男性としての感情が描かれていると感じました。
「男性は女性を守るもの」という気持ちの表れです。
とはいえ、最後の博多では、男性の少し弱い部分が描かれています。
それがまた人間らしさなのです。
まとめ
ハニー・ナイツの「ふりむかないで」の歌詞について解説しました。
時代が変わっても多くの人にカバーされ続けているこの曲。
1970年の曲ということもあり、現在の曲とはやはり印象が少し違います。
男性と女性の関係性も現在とは異なっているように感じるかもしれません。
しかし、男性が女性に惹かれる理由は今でも変わらないのではないでしょうか。
どこか共感してしまう部分がきっとあるはずです。
だからこそ、長く愛される曲なのかもしれません。