「何も感じられない、リズムもない

心臓がずっと止まってるみたいなんだ」

そうです。

「I was born to love you」とは全く逆の状態です。

というよりは「君」に出会う前の「僕」でしょうか。

この曲には「毎日毎日頑張っても皆にやり込められてしまう」という箇所もあります。

「1日1日が君のためにある」と高らかに歌うのとは真逆の様子ですね。

求めるものは誰も同じ

QUEEN【I Was Born To Love You】歌詞を和訳&意味解釈!伝えたい愛の深さとはの画像

もちろん別の曲ですから、この二つの曲の主人公が同じとは限りません。

しかし、愛する対象を得た経験がある人は、身に覚えがあるのではないでしょうか。

ただ繰り返されるだけの日々は、愛する存在ができたことで変わっていくのです。

自分の全てをかけて…とまではいかないかもしれません。

けれど、どんなに些細なものでも、愛する存在のためなら頑張れるという気持ちが生まれるものです。

どちらの曲も、自分や相手についての詳細な描写はありません。

だからこそ聴いている人たちの胸には、込められた思いそのものが響きます。

そして時代や国境を越えて、共感できるのではないでしょうか。

"これは自分の歌だ"と。

孤独の中にいる人へ

付け加えられた歌詞

QUEEN【I Was Born To Love You】歌詞を和訳&意味解釈!伝えたい愛の深さとはの画像

冒頭、今回取り上げるクイーンのバージョンでは、歌詞が付け加えられていると書きました。

クイーンの曲では「Kind of magic」が使われています。

そしてもう1曲はフレディのソロ曲「Living on My Own」です。

後者から抜き出されたパートは、曲の最後の方に加えられました。

ちなみにクイーン版のMVにも同曲の映像が使われています。

孤独を抱えた「僕」

I get so lonely lonely lonely lonely yeah

出典: I Was Born To Love You/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury

これが「Living on My Own」から抜き出されたフレーズです。

「僕はとっても孤独なんだ」と繰り返し訴える主人公。

ここまではアッパーで情熱的に愛を伝えてきたのに、急に弱気になってしまったのでしょうか。

後から付け足された歌詞ですから、今までの流れと合わないのでは思われるかもしれません。

けれど敢えて付け加えられたのですから、そうではない意図があるように思えます。

独りで生きる、それよりも

主人公は「君」と出会い、愛する存在がある幸せを得たのだと書きました。

裏を返せば、それまでは「Somebody to love」のようにそんな対象がいなかったのです。

もちろんそれでも人は生きていけますし、日々も過ぎていくでしょう。

けれど主人公はそんな日々を、孤独で寂しいものと思っていたのではないでしょうか。

何かを大切にできる幸せ

誰かや何かを愛すること、大切にすること。

それは、それに見合う存在がなければできないことです。

それこそ、自分の全てを投げ打っても良いと思えるほどの存在です。

自分はこのために生まれてきたのだと思えるほどの。

そんな対象に出会えるのは、奇跡に近いことなのではないでしょうか。

そんなものありふれたものだ、そう思われるかもしれません。

けれども、そんな相手と自分が、同じ時代の同じ場所に存在しなおかつ出会えたということ。

それを考えると、出会いは天文学的な確率です。

なおかつ主人公が孤独を抱えていたとしたら。

心から分かり合える存在がこの世にはないと思っていたとしたら。

愛を注げる相手が現れたことはまさに、思ってもいなかったような幸福だったでしょう。

つまりこのフレーズは「君」と出会えたことの喜びをより強調するために付け加えられたと考えられます。

自分のすべてを、君に

I wanna love you love you love you

出典: I Was Born To Love You/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury

「君を愛したい、愛したい、愛したいんだ」

そう繰り返して曲は終わっていきます。

相手を愛することだけであれば、1人でもできなくはありません。

けれどやっぱり「take care」つまり「大切にする」のであれば、より近い関係になりたいものです。

だからこそ主人公は「君」に呼びかけ続けます。

日を追うごとに強くなっていく気持ちのように。

「君を愛するために生まれてきた」というタイトル。

それはきっと、孤独だった主人公に初めてきちんと愛する対象ができたことも示唆しているのでしょう。

それほどまでに深い愛を、今、君に伝えたい。

そんな切実かつ熱い思いが、曲を聴いている人の胸をも打つのでしょうね。

きっと世代をさらに越えて、愛されていくに違いありません。

クイーンにはこの他にも、胸に響く曲がたくさんあります。

ぜひこの記事を手がかりにチェックしてみてください。