このパートでは今までに経験してきた失恋の数々が、彼女の心を強くしてきたことが分かります。
失恋を経験することによって、恋がもたらす悲しみや喜びにも慣れてきた彼女。
しかしそんな恋をいくつか経験したことによって、彼女は初恋の時のような一途な気持ちを忘れてしまったのでしょう。
主人公はそんな初恋の頃のような、初々しい心の揺れ動きを「ダンス」に例えているようです。
初めての連続に心が動かされていた、何もかもが新鮮だった頃の恋を思い出しているのだと考えられます。
彼女は今、大人な恋よりも昔のようなときめく恋がしたいと考えているのでしょう。
温もりを求めて
彼女の求めるもの
道にできた日向なんて
やがて陰って行く
いつでもそこにある
ぬくもりが欲しいのに…
出典: ダンスを思い出すまで/作詞:秋元康 作曲:大石由梨香
ここでいう「日向」というのも、主人公の恋に関係していると考えるのが妥当でしょう。
今まで主人公のことを温めていてくれた「日向」のような存在は、いつの間にか「影」になってしまいました。
これは恋人の気持ちが薄れていくことを指しているのではないでしょうか。
彼女が今求めている「ぬくもり」というのは、恋人からの愛情だといえるでしょう。
ただ一過性の感情で愛すのではなく、もっと長い時間をかけて自分のことを大切にして欲しい。
彼女にとって今欲しいのは決して「影」にならない「日向」の存在なのでしょう。
いつでも自分のことを見守ってくれるような優しい存在に彼女が思い焦がれていることが分かります。
手に入らないもの
世界中を探したって
きっと見つからない
一人にされるなんて
信用できないでしょ?
出典: ダンスを思い出すまで/作詞:秋元康 作曲:大石由梨香
しかし彼女はそんな「日向」はこの世にはいないと考えているようです。
3、4行目では恋人からの愛情が薄れ、いつの間にか側にいてくれなくなることへの不信感が表されています。
彼女が今求めているのは、いつも自分を愛してくれるような恋人の存在なのでしょう。
恋の熱が冷めてしまえば、すぐに自分を独りぼっちにして蔑ろにするに違いない。
彼女は恋人のことをそういう人間だと考えているのでしょうか。
「ダンス」の理由
「棘」も愛して
愛を踊らせないでよ
その気になったら
光の中で
バラの棘(とげ)さえも
意味があることに
そう気付くはずよ
出典: ダンスを思い出すまで/作詞:秋元康 作曲:大石由梨香
1行目の歌詞は、楽曲タイトルにも含まれている「ダンス」という言葉と関係している言葉です。
彼女にとって今求めているのは長い間愛情が継続するような安定した関係性。
一途にお互いのことを想い続けるような関係を恋人と築きたいと考えているのでしょう。
そして、4行目の「棘」という言葉が意味しているもの。
これは人間の中にある攻撃的な側面を表しているのでしょう。
ここでは具体的に恋におけるそういった部分を表していると考えられます。
つまり、恋人に対してきつく当たったり、お互いに性格的な難点があったりすること。
そういったものも全て意味があって存在している。
だからこそ、主人公はそんな悪い面も含めて愛して欲しいといっているのではないでしょうか。
恋愛を「バラ」に例えながら、そこにある「棘」さえも愛して欲しい。
彼女が今求めているのは、全てを包み込むような愛情。
恋人からの愛を避けるのは一過性のものではなく、もっと時間をかけてそうした愛情を育んでいきたいからなのでしょう。
彼女は、お互いの良い面も悪い面も愛し合いたいと考えているのです。
今踊る「ダンス」とは
誰のため踊るのでしょうか?
太陽に問いかけてみた
木漏れ日が降り注ぐだけ
ご自由に… 見物してちょうだい
出典: ダンスを思い出すまで/作詞:秋元康 作曲:大石由梨香
ここでは、「太陽」に対して問いかける主人公の姿が描かれています。
「ダンス」を踊る理由というのは、主人公にとっても何か分かっていないようです。
他者に答えを求めても答えが出ないということは、その問いに明確な答えというものが存在していないことを表しています。
「ダンス」というのは恋人との間で行われる、恋の駆け引きを表しているのでしょう。
彼女が今踊るのは、昔のような初々しいものではなく関係性の安定を求める「ダンス」。
恋人との間に深い愛情を育んでいきたいという想いが彼女にとっての「ダンス」の理由となっているのでしょう。
自分にとって今、恋に求めるものが何か。
その問いに対して、彼女は自分なりの答えを見つけようと考えているのでしょう。