できないよそれが できないのどうしても ああ
できないとそれでも できないの私には ねえ
出典: DEKI☆NAI/作詞:眉村ちあき 作曲:眉村ちあき
生きることに試行錯誤する、主人公。
心の奥底からこぼれだす、悲痛な想いが伝わってきます。
あるべき姿が理解できても、うまく立ち振る舞えないジレンマに苦しんでいるのです。
考えれば考えるほど、頭の中のモヤモヤが晴れません。
そもそも人や物事に接することが不器用なのでしょうか。
世知辛い世の中に生まれてしまった自分を、嘆いているのかもしれません。
何もかもが複雑で、ギスギスした生きにくい現代社会への「ぼやき」なのです。
現実と向き合う
大体 こんなにも毎日失敗ばっかなのに
この歳まで 生きてこれたのが
ぶんしゃからか天才
一握りの人材 周りを見ればほら
下唇出して泣きそうなの一人しかいねえ!!
出典: DEKI☆NAI/作詞:眉村ちあき 作曲:眉村ちあき
自分の不甲斐なさに、自己嫌悪へと陥る主人公です。
もとより、生きること自体が下手くそだといっています。
誰かみたいに、うまくなんて渡り歩けるはずはない。
それでも、なんとか大人にはなることができたのです。
主人公からすると、かろうじて奇跡的だったのかもしれません。
「ぶんしゃからか」、一見謎なこの言葉。
インド語で、「あらえさっさ」を意味するそうです。
どこか楽しげな言葉で、自画自賛ともとれる印象を受けます。
自分自身を鼓舞しながら、今日まで乗り切ってきたといっているのではないでしょうか。
周囲からの手助けをもらい、音楽という世界でようやくカタチになってきたとなぞらえているのです。
成功する者はほんの欠片でしかない。
自分はその一部にもなり得ていない、ただ日々を生きながらえてきただけだといっているのでしょう。
しかし、そうそうそれはいつまでも続きません。
うまく生きている周囲と比べ、劣等感を憶えているのです。
心の中では、すでに泣きだしてしまっているのでしょう。
どんどん泣き崩れていく表情が垣間見えるのです。
ともすれば、孤独の境地に片足を踏み入れそうになっているのかもしれません。
赤ちゃんって楽!
いつまでも赤ちゃんのような私と社会
バブって行くけれども
バブって行くけれども
バミッても無駄なだけ
バミッても無駄なだけ
これからも悟っていくけれども
悟っていくけれども
これっぽっち以下の声で泣き叫んでる
出典: DEKI☆NAI/作詞:眉村ちあき 作曲:眉村ちあき
アルバム『劇団オギャリズム』の1曲目だけに、「オギャる」と「バブる」をかけているのでしょう。
そうです。この楽曲は、眉村ちあき自身の想いを投影した作品なのです。
わめきながら前へ前へと、ただまっしぐらに這い這いをする赤ちゃん。
自分はまだまだ未熟で、赤ん坊のように幼いと表現しているのです。
「バミって」、芸能の世界では立ち位置の目印をあらわします。
どれだけ計算しても、何の意味も為さない。
いくら目星をつけていても、ちょっとズレる。あげくの果てには、驚くほどにブレているのです。
目指す夢まで途方もなく遠いと、意識しはじめたのかもしれません。
今よりもっとさらに上へ。
眉村ちあきが望み描く未来。そのギャップに立ち止まっている有り様なのです。
ステージで歌う声量には遠く及ばず、囁くほどの音でしかありません。
その「音」は誰にも響かないのです。
殻に閉じこもっていたい
玄関で立ち尽くす玄関で立ち尽くす…
出典: DEKI☆NAI/作詞:眉村ちあき 作曲:眉村ちあき
日々、「夢」へのプロセスを想像する主人公。
外へ出るのが怖いのでしょうか。
今日も何かを間違えないかと不安になっているのでしょう。
他愛もないことにも敏感になり、過剰に反応しているのかもしれません。
ファンや誰かに、値踏みされるのを怖れているのです。
しくじることに、たじろぐ主人公。
もしかすると、天変地異が起こればいいとまで考えているのかもしれません。
ジロジロと上から下まで、どこか試されるような心地の悪い胸中を表しています。
家から出れさえすれば、きっといつもの自分を取り戻せるはずだと戒めているのです。
落ちつくところはやっぱり...
わからないけど 不思議だよ君には 嫌われたくないから
なるべく 近づかないよ 近づけないよ
出典: DEKI☆NAI/作詞:眉村ちあき 作曲:眉村ちあき
こんなつまらない状態の自分では、合わす顔がない。
「君」とは、ファンのことを指しているのでしょう。
幼稚な殻を破るまで、もう少しだけ待ってほしいといっています。
痛切な願いを訴えかけているのではないでしょうか。
発信したいメッセージはいっぱいあるのに、まだそちら側へは踏み込めないといっているのです。
それは、「私以外のみんなが決めて」と解釈は締め括らせていただきます。