加入オーディションの狭き門
AKB48のオーディションの倍率は、300倍を優に超えます。
日本で最も倍率の高い大学の学部は、同志社大学の心理学部で120倍となっています。
この数字を見れば、AKB48の加入がいかに狭き門か、お分かりいただけると思います。
「ひと夏の出来事」に登場しているメンバー達は、極めて難関なオーディションを勝ち抜いた、精鋭中の精鋭達なのです。
そんな「精鋭」になるために、一体どれ程の努力を彼女たちは今まで積み上げてきたのでしょうか。
毎日必死に振付を覚え、容姿の美を追求し、AKB48という最高の舞台を夢見て歯を食いしばって努力してきたのです。
このMVの前半部分では、メンバー達がイルミネーションを設置し、入念に準備し、夜の森を最高の空間に仕立てています。
そうして完成した至極の舞台で、彼女たちは、自身の持てる全ての力を込めて、最高のパフォーマンスを披露します。
これはまさに、アップカミングガールズのメンバー1人1人が経てきた人生を表現しているといっても過言ではありません。
「麦わら帽子」はなにを意味しているのか…
歌詞が紐解く「麦わら帽子」の真の意味
アップカミングガールズのメンバー達は、MVの中でダンスシーン以外ほぼ全ての時間、麦わら帽子を着用しています。
MV監督は、なぜそこまでして麦わら帽子を着用させたかったのでしょうか?
それは、この曲の歌詞に出てくる「麦わら帽子」が、「ひと夏の出来事」という曲にとって非常に重要な意味を秘めているからなのです。
まず、冒頭のサビの歌詞を見ていただきましょう。
君のあの麦わら帽子
風に吹かれて飛んでった
列車の窓 あかね空
一瞬の夏の終わり
出典: ひと夏の出来事/作詞:秋元康 作曲:野井洋児
この時点では、大半の方々がまだ歌詞がなにを意味しているのか、十分に理解する事は出来ないでしょう。
なんとなく「列車に乗っていたら麦わら帽子が飛んで行ってしまったんだな」くらいの理解度だと思います。
しかし、その後の歌詞を追っていくごとに、この冒頭の歌詞の輪郭がはっきりとしたものになっていきます。
ホントの兄妹みたい
そう言われて育って来た
君といつでも一緒にいるのが
普通と思ってた
でもなぜか 急に僕は
手を繋ぐのが恥ずかしくなったんだ
何も変わらない二人だったのに
浴衣の君にハッとしてからかな
出典: ひと夏の出来事/作詞:秋元康 作曲:野井洋児
一行目の歌詞でもうお分かりいただけたかと思いますが、冒頭の歌詞に出てきた「君」は、歌詞中の主人公の幼馴染の事だったのです。
「本当の兄弟みたい」と周りの人から言われるくらい、近しい存在だった幼馴染の女の子を、歌詞中の語り手は徐々に異性として意識し始めます。
そうして少しずつ、彼女と疎遠になっていくのです。
君のあの麦わら帽子
僕がもっと手を伸ばせたら
風にそう飛ばされずに
終点へ走り続けてた
大人になるってそういうことか
ふと思い出した切なさ
出典: ひと夏の出来事/作詞:秋元康 作曲:野井洋児
そうして、再度サビに戻ってきます。
冒頭と2回目のサビに出てきた「麦わら帽子が風に飛ばされてしまった」という歌詞。
一番最初のサビでは、「ただ帽子が風にあおられて飛んで行ってしまった」というだけに聞こえます。
しかし、2回目のサビでは随分と違った印象を抱くのではないでしょうか。
語り手が失ったもの
思春期を境に特別な想いを抱くようになった幼馴染が被っていた麦わら帽子。
そんな大切な品を、語り手である男性は失ってしまうのです。
そうして彼は「大人になるってそういう事か」となにかを悟る。
語り手は、麦わら帽子を車窓から無くしてしまった時「彼女との思い出や淡い恋心も一緒に手放さなければならない」。
と感じたのではないでしょうか。
まとめ
今回は、AKB48<アップカミングガールズ>の「ひと夏の出来事」のMVを紹介しました。
いかがだったでしょうか?「イルミネーション」や「麦わら帽子」などの、MV中に頻出するものは、精巧な比喩だったのです。
心が洗われるような美しいMV。皆さんもぜひ一度、ご覧になってください!