RADWINPSの野田洋次郎とコラボした一曲。

米津の情感溢れる歌声、野田の透明感のある歌声が魅力的です。

「PLACEBO」は有効成分を含まない「偽薬」と呼ばれる薬のこと。

そんな偽薬になぞらえて歌われる恋の想い。

ここでも正しい答えが出ないまま想いに翻弄される姿が描かれています。

けれど「プラセボ効果」という言葉がある通り、偽の薬でも効果を及ぼすことがある。

正解ではなくても良いと肯定する想いが込められています。

パプリカ

米津玄師【STRAY SHEEP】アルバム全曲解説!タイトルに込めた思いは?社会への使命感を読み解くの画像
オリジナルバージョンは元気あふれる歌声とパフォーマンスが印象的。
それに対してセルフカバー版は落ち着いた穏やかな印象。
優しい歌声がどこかノスタルジックで暖かいアレンジとなっています。
オリジナルバージョンの子供たちを見つめる大人のような眼差し。
迷い続ける日々の中、ふと思い出す幼い日の思い出。
そんな印象を受ける一曲となっています。

馬と鹿

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TBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」主題歌
ドラマの内容から2019年のラグビーW杯でも注目された一曲です。
ここに描かれているのは、苦しみながらも進むことをやめられない姿。
傷つき苦難にぶつかりながらも信念を貫く姿に涙がこぼれます。
宝石を磨くことは傷つくことと同じ。
「カムパネルラ」でも描かれたものと同じテーマが通っていることを感じます。
誰もが傷つき苦しんでいる中に寄り添う一曲です。

優しい人

繊細な感情を描き出す一曲

アルバム中盤に収められた「優しい人」。
この一曲は当初、米津自身もこの曲に傷つく人がいるのではないかと語っていました。
「あなた」と「わたし」、そして「あの子」が登場するこの曲。
描かれる「あの子」の姿にはいじめや虐待が思い起こされます。
そんな「あの子」への「あなた」の眼差しに抱く嫉妬。
傷つけられる「あの子」への「わたし」の思いは美しく優しいものではありません。
だからこそ「わたし」もまた罪の意識に苦しんでいる。
繊細な感情が交差して描き出されています。
そこには冒頭の「カムパネルラ」と同様に「銀河鉄道の夜」の物語も思い起こされます。

誰もが痛みを抱く中で

「優しい人」は、いわば「優しくない人間」の視点で描かれています。

いじめられている子がいても助けようとしない。

それが自分ではなくてよかったとすら思ってしまう。

そんな自分のあり方が正しくない、優しくないということもわかっている。

そういった心境に共感できる人は、実は多いのではないでしょうか。

アルバムを通して描かれているテーマのひとつに「迷い」があります。

迷って自分で正しい答えが出せる人ばかりではない。

迷い、正しくない判断をしてしまう弱さ

そんな感情にも寄り添う一曲です。

Lemon

アルバムの始まりとなった一曲

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TBS系ドラマ「アンナチュラル」主題歌

楽曲は300万ダウンロードを突破。

米津のみならず平成・令和を代表するヒットソングとなりました。

アルバムとしてはこの「Lemon」がシングル曲としては最も早くリリースされた曲。

メガヒットとなった背景もあり、米津はアルバムの軸としてこの一曲を想定しています。

アルバムを貫くテーマ「喪失」

「Lemon」で歌われた死別喪失への悲しみと痛み。

それはドラマのテーマでもあり、米津自身の実体験も織り込んだものでした。

それゆえに多くの人の共感を集め、これほどまでのメガヒットに成長したといえるでしょう。

そしてアルバムがリリースされた2020年。

奇しくもリリースされた2020年は多くの人が今までの日常を失い苦しんだ一年でした。

その中でアルバム制作を進めた米津が込めた思い。

それは喪失に対して寄り添い共に悲しむ、というあり方だったのではないでしょうか。

「カナリヤ」や「カムパネルラ」にも共通するテーマ。

それは「大切なものの喪失」。

同時にそれは「いつか失ってしまうものだからこそ今を愛する」という思いなのです。

まちがいさがし