オリジナルが魅力的に見える為のカバー

米津玄師【STRAY SHEEP】アルバム全曲解説!タイトルに込めた思いは?社会への使命感を読み解くの画像
米津が菅田将暉作曲した「まちがいさがし」のセルフカバー。
セルフカバーにあたり、米津はオリジナルと重ならないように意識したといいます。
オリジナルがさらに魅力的に感じられるカバーに。
そう意識して作られたセルフカバーは、プリズマイザーを駆使した優しくきらめくような音作り。
プリズマイザーは以前米津と菅田がコラボした楽曲「灰色と青」でも効果的に使われています。
力強くまっすぐに歌い上げる歌声が印象的な菅田のオリジナルバージョン。
それに対してふんわりと包み込むような穏やかさと優しさがあふれています。
プライベートでも親交のあるふたり。
セルフカバーの暖かく優しい曲調は、菅田に対する親しみと感謝のメッセージにも感じます。

オリジナルバージョンへのアンサーとして

小鳥のさえずるイントロ。
ここからはアルバム最後のナンバー「カナリヤ」が思い起こされます。
美しく穏やかな場所を想起させる中、大切な人を思うような歌。
最後のサビで、セルフカバー版は歌詞を「どうでもよかったんだ」とわずかに変えて歌われています。
その変化は、優しいきらめきの中に隠した本音をふと吐露するような感情を感じます。
先述の「灰色と青」では、離れていながらお互いを思う友情が描かれていました。
その物語と「まちがいさがし」のセルフカバーには共通するものがあるように感じられます。
どちらも思うようにいかない現実の中、大切な人を思う気持ち。
それでも出会えてよかったと感情をこぼれさせる歌声。
それは菅田のオリジナルバージョンを受けた、物語の続きともいえるセルフカバー。
再び菅田のオリジナルバージョンを聴きたくなる、そんな一曲です。

ひまわり

乾いた印象のハードなロックナンバー。
タイトルから受ける明るく優しいイメージとは裏腹な印象さえ受ける一曲です。
暗く苦しい場所で、なおも太陽を向こうとする。
そうやって足掻く姿にひとつの美しさを見出す、そんな思いが伝わります。

迷える羊

変わりゆく世界の中で迷いながら

「カロリーメイト」CMソングに起用されたナンバー。

不協和音を多用したコードからは独特の不穏な空気を感じます。

アルバムタイトルと同じ題を持つ「迷える羊」。

ここにはまさに「STRAY SHEEP」というアルバムの持つメッセージが凝縮されています。

それは「迷い」と「喪失」というふたつのテーマ。

「迷える羊」では今までの常識が失われ、日々迷いの中生きている。

そんな不安定な心境が音楽の面からも表現されています。

不安定な日々の中でも変わらないもの

サビでは一転して壮大さを感じるメロディの進行が印象的です。

不安定な情勢の中迷い続ける毎日。

それでも大切な人への思いや願いは変わらない

そんな二つの思いがメロディの中に表現されています。

Décolleté

「BOOTLEG」以前の米津を彷彿とさせるアンニュイドラマチックなナンバー。
退廃的なイメージと西洋的な雰囲気が独特のロマンチシズムを生んでいます。
元々米津の持つ物語的なサウンドや独自の美学。
それが感じ取れる印象的な一曲です。

TEENAGE RIOT

米津玄師【STRAY SHEEP】アルバム全曲解説!タイトルに込めた思いは?社会への使命感を読み解くの画像

「ギャツビー」CMソングに起用された一曲。

Flamingoと両A面シングルとしてリリースされた疾走感のあるロック・チューンです。

誰もが青春時代に感じたことのある虚しさ刹那的な美学

滅びゆくものにこそ惹かれるような危うい感情が描き出されています。