スピッツの「若葉」とは?

スピッツの「若葉」は2008年11月5日に発売された通算34作目のシングルです。

映画『櫻の園-さくらのその-』(2008年)の主題歌として書き下ろされた楽曲ですね。

普通の女学生たちの青春群像劇を描いた作品に寄り添う、優しい歌詞の世界とは...?

早速歌詞を解釈していきましょう。

スピッツ「若葉」の歌詞を解釈!

ここからはスピッツの「若葉」の歌詞を解釈します。

色んなものに当たり前のように過ごした学生時代、そんな世界からの旅立ち。

多感な時期にはあまりにも大きな意味としてやってくる卒業を草野さんならではの感性で描きあげた歌詞。

自分にとって思い出すと懐かしいと感じられる場所に思いを馳せながら、読んでいただければと思います。

自分たちを守ってくれていた優しい光

優しい光に 照らされながら あたり前のように歩いてた
扉の向こう 目を凝らしても 深い霧で何も見えなかった

ずっと続くんだと 思い込んでいたけど
指のすき間から こぼれていった

出典: 若葉/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

学生の頃どうして今自分が学校に通っていられるのかなんて考えたことがなかったという方も多いのではないでしょうか。

国の制度や学校、親と様々な要素が自分を守っていても、気づかない。

筆者も自分が親になって気づかされたことがたくさんあります。

そんな、「優しい光」に照らされた一本道をさも当たり前かのように歩いていた学生時代。

それが卒業と思うと、急に自由になるとともに、自分の歩く道が見えなくなるような心細さに襲われる。

別に未来がないとかではなくて、すぐそこに確かな熱量を持って近づいてきているのに「霧」に包まれたように何も見えないのです。

しかも、そこにいますぐ踏み出していかなければならないわけではないと思っていたのに、学生時代はあっという間に終わりを告げる。

砂時計の砂だなんて呑気なスピードではなく、指の隙間からすくった砂がこぼれ落ちていくようにさらさらと。

そんな卒業を前にした不安というほどでもない、期待ばかりでもない、未知へのモヤモヤとした気持ちが表現されている歌詞です。

その複雑な感情をこれ以上にないような言葉で表現できるというところに草野さんの凄さがあります。

続きの歌詞も見ていきましょう。

卒業を前に思い出すのは始まりの季節の「君」

思い出せる いろんなこと
花咲き誇る頃に 君の笑顔で晴れた 街の空
涼しい風 鳥の歌声 並んで感じていた
つなぐ糸の細さに 気づかぬままで

出典: 若葉/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

前の歌詞は卒業を直前にひかえた学生時代の感情を回想していた歌詞でしたが、はじめて「君」という言葉が歌詞に出てきましたね。

「君」とは、この歌詞で回想をしている主人公にとってどんな人物だったのかを考えてみましょう。

もう卒業という時にも関わらず、桜の花が咲き誇る時、その笑顔で快晴になったと思えるくらい晴れやかな笑顔を思い出す。

鮮やかに思い出すことのできるその笑顔でも、きっとそれは3年前のもの。

きっと卒業を前に振り返った学生時代の毎日を彩っていた存在が「君」だったのでしょう。

しかし、一緒にいるのが当たり前になりすぎて、二人の関係性がその後簡単に途切れてしまうだなんて考えもしなかった。

そのことが「つなぐ糸の細さに 気づかぬまま」という歌詞に表れています。

そんなにも一緒にいた二人がどうして離れ離れになってしまったのか...続きの歌詞も見ていきましょう。

自分の無邪気さが「君」を傷つけるところだったなんて

忘れたことも 忘れるほどの 無邪気でにぎやかな時ん中
いつもとちがう マジメな君の 「怖い」ってつぶやきが解んなかった

暖めるための 火を絶やさないように
大事な物まで 燃やすところだった

出典: 若葉/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

何を忘れたのか忘れてしまうくらい毎日いろんなことがあって賑やかだったあの頃。

この曲の主人公は、「君」がいつも見せないような表情で「怖い」と言った意味もわからないまま、忘れてしまっていたのでした。

その意味を何年か経って、理解することになったのです。

きっと「君」は最初の歌詞に出てきたような、何も手がかりのない未来へ、周りの人たちよりも強く不安を覚えていたのです。

もしかしたら、その時「君」はずっと一緒にいるから大丈夫だと言って欲しかったのかもしれませんね。

しかし、その時は意にも介さず忘れてしまったとしたら...。

もしかしたら、気まずい空気になるのを恐れて、「君」が真面目な表情で不安を打ち明けたにも関わらず笑い飛ばしてしまったのかもしれません。

場を温めるための火のような笑いが、大切な人の心をいたずらに燃やしてしまうところだった。

今だから自分がやったことの恐ろしさがわかる。

この曲の主人公の後悔が垣間見える部分ですね。

つまり、未来への繋がりを作ろうとしていた「君」に対して二人の関係性がいつまでも続くと思っていた主人公は何もしなかった。

だからこそ、二人をつないでいた細い「糸」は切れてしまったのです。

前の歌詞の意味が理解できましたね。

今となっては思い出せる、自分は「一人よがり」だったということ

思い出せる いろんなこと
花咲き誇る頃に 可愛い話ばかり 転がってた
裸足になって かけ出す痛み それさえも心地良く
一人よがりの意味も 知らないフリして

出典: 若葉/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗