死は何故訪れる?
どこかで触れた言葉
重なる答えが
悪戯に降らす雨
出典: VANITAS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
ここで、「死」について問いかけます。
この疑問は、昔から繰り返されてきたのでしょう。
色々な答えがありますが、真実は生きている者にはわかりません。
ただ「こうなのかもしれない」と想像を重ねるのみです。
想像を重ねれば重ねるほど、その答えは自分に都合のよいものになってきます。
いけないと思いつつも、死へのあこがれが生まれてしまうのです。
そんな思いに捕らわれて、抜け出せなくなってしまう人もいるでしょう。
戻ってこない人を思って流す残された人たちの涙が、雨のように降り注ぎます。
生きることからの解放
近しい人の死
君よさよなら
振り返らない瞳
思い焦がれた
せせらぐ時
耳を澄ます
出典: VANITAS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
そんな思いを持って生きる中、「君」と呼ぶ人物が亡くなります。
恐らく、親しい間柄だったのでしょう。
あこがれを抱いていた死が、思いがけない形で目の前にやってきました。
呼んでも2度と答えることのない君の死は、もちろん悲しんでいます。
しかし、どこかでうらやましいと思う気持ちもあるのではないでしょうか。
心の中で自分が持っている願いを、君は先に叶えたのです。
死とは想像しているような安らぎだったのか、心の中で君に問いかけます。
生から解放される幸せ
叶えられない夢に
終わりを隠してたから
この日が素晴らしき日でありますように
君さえが…
出典: VANITAS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
亡くなった君が抱いていた夢は、今の人生では叶わないものだったようです。
不治の病や近しい人の死などを経験して、自ら死を望むというケースもあります。
自分と同じように、君も死にあこがれを抱いていた1人だったのかもしれません。
君が亡くなったこの日は、君の願いが叶った日でもあるのでしょう。
生から解放されることで君が幸せになれたのなら、それで良かったのだ。
近しい人を失った悲しみの中で、そう考えます。
前を向いて生きる
祈りを捧げるような間奏の後に、幻想的な光景が広がります。
まるで生と死の境界を表しているかのようです。
生と死の象徴
薄翅蜉蝣光求めて
迷い込んだ心はいつも
未来へ
彼岸花揺れる
出典: VANITAS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
蜉蝣は羽化してから早ければ数日、長くても1ヶ月ほどしか生きられない生き物です。
そんな儚く短い命でも、限りある今を懸命に生きようとしています。
ここでは生を象徴しているのでしょう。
反対に彼岸花は不吉なイメージがあり、死を象徴する美しい花です。
しかし、実は「再会」や「転生」という前向きな花言葉を持っています。
この部分の歌詞は、前を向いて生きろというメッセージを伝えているのではないでしょうか。
もう後ろは向かない
ここからサビまで、前と同じ歌詞の繰り返しです。
前向きなメッセージの後では、言葉は同じでも受け取り方が変わってきます。
1回目は亡くなった君への呼びかけでしたが、ここでは自分への決意ではないでしょうか。
亡くなった君に最後の別れを告げて、後ろを向くのをやめようとしているのです。
死にあこがれていた自分への決別でもあるのでしょう。
終わりを願う夢は、叶えようとしてはいけないものです。
前に向かって進むと決めた今、後ろ向きな夢は終わりました。
歩き出すと決めた今日が、後から思い返したときに良い日であるようにと願います。