クライマックスへのブリッジ
あの頃の君の笑顔で この部屋は
みたされていく
窓を曇らせたのは なぜ
出典: そして僕は途方に暮れる/作詞:銀色夏生 作曲:大沢誉志幸
ブレイク、あるいはクライマックスへのブリッジの箇所です。
「僕」はもはや「君」の面影に浸ることでしか自分の気持を慰められません。
「君」が「僕」といたときに魅せた笑顔を幸せだった時期の象徴として想い返します。
「君」が去ることを決意して「僕」だけを残して去っていた部屋。
この部屋を「僕」はまだ引き払うことなどできません。
このラインに滲むかつての「君」への心残りのようなものが切ないです。
しかし旧い記憶は時間と共に褪せます。
もう「君」は戻ってこないという事実が世界との接点を曇らせてしまいました。
「君」の決断や選択を尊重する
新時代の男性像・女性像
君の選んだことだから
きっと大丈夫さ
君が心に決めたことだから
そして僕は 途方に暮れる
出典: そして僕は途方に暮れる/作詞:銀色夏生 作曲:大沢誉志幸
「君」が「僕」のもとを去るその決断はすべて「君」の選択。
そのときそのときの決断や選択こそがその人の人生の総決算です。
未来が幸せであろうと不幸せであろうとそれはすべて「君」の決断と選択の結果。
だからこそ「君」はどんな未来をも背負うことができるのだよと「僕」は勇気付けます。
ただし「君」のその決断のプロセスに「僕」は一切ノータッチで蚊帳の外に置かれていました。
置き去りにされたような気持ちが「僕」の心に巣食っています。
この空虚な感じと「僕」はこれから折り合いをつけて生きていかなければなりません。
それは過酷な運命のように感じます。
胸にぽかんと穴が空いた心境で物事の成り行きを見守るのです。
「そして僕は途方に暮れる」
「僕」が醸し出す「君」の決定への無言の服従は大袈裟にいうと日本男児のマッチョさからもっとも遠いのです。
新しい時代の男性像をいち早くこの曲の歌詞に感じた女性たちによって支持されました。
まだ女性にとって男性の意を介さずに物事を決断してゆく「君」も新時代の女性像に想えたのです。
まぶしくて切なくて複雑な印象を整理できないままに人々は新しさに敬服します。
大沢誉志幸も銀色夏生もともに「そして僕は途方に暮れる」で時代を画したのです。
言葉にならない「僕」の想い
歌い出しへの回帰
見慣れない服を着た
君が今 出ていった
出典: そして僕は途方に暮れる/作詞:銀色夏生 作曲:大沢誉志幸
クライマックスは冒頭の歌詞のリフレインです。
一連の回想が一周して円環を閉じました。
あとは「君」が新しい服を着て街へ出てゆくのを見守るだけです。
「僕」の葛藤や寂しさも哀しみも無関係の文脈へと「君」は跳躍しました。
相変わらず「僕」は部屋に残されて諦念の中で燻ります。
しかし時間は決して逆戻りはしません。
大沢誉志幸の言葉にしないハミングでの歌唱が続きます。
もはや新たに加える言葉はないのです。
哀愁漂うクライマックスと俳句のようにシンプルさを極め尽くしたサウンド。
音と音の隙間に「僕」の言葉にならない想いが滲んでいます。
「そして僕は途方に暮れる」
人と人との些細なすれ違いが男女の別離というダイナミックな人生の変わり目を創り出すことを表現します。
決断や選択の外に置かれて人生模様を眺めている心境の心もとなさなどを言葉少なに教えてくれました。
いつ聴き返しても斬新な印象を持つ「そして僕は途方に暮れる」は忘れ難い青春の歌です。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
OTOKAKEで振り返る大沢誉志幸
作曲家としての大沢誉志幸
中森明菜【1/2の神話】歌詞に秘められた想いが切ない…!「半分だけよ」と主張する少女の素顔とは - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
「1/2の神話」は中森明菜さんが18歳のときのヒット曲。同年代の少女は、その素顔に共感するのでは?懐かしい世代も少女の心を理解しましょう♪
無料で音楽聴き放題サービスに入会しよう!
今なら話題の音楽聴き放題サービスが無料で体験可能、ぜひ入会してみてね