「彼女の話に耳を傾けるわ
なぜって傷つけられるってどんなことかを分かっているから
あなたが好きな人を失うときにね
なぜって男の子はあなたのことを当たり前の存在として扱っているから
あなたのものをすべて破壊してしまうの」
女性の話には耳も貸さないというようなどうしようもない男性もこの世界にはいます。
自分が男性ならばそんな不幸なことをしないというのがビヨンセの想いです。
好きな相手を失うことは非常に辛いことでしょう。
その辛さに耐えきれずに生命を絶ってしまう人もいます。
失恋は抑うつ状態を引き起こしてその人の人生を暗くしてしまうもの。
この「If I Were A Boy」で問いかけている男性は浮気も平気な人物です。
すべての人間関係を破綻させてしまっても彼は社会を追われることなどありません。
この曲は「性差」において社会の仕組みやメカニズムが男性を優位にしていないかと問いかけるのです。
心配りを大切に
携帯電話をオフにしよう
If I were a boy
I would turn off my phone
Tell everyone it's broken
So they'd think that I was sleepin' alone
出典: If I Were A Boy/作詞: Brittany Jean Carlson Tobias Gad 作曲:Brittany Jean Carlson Tobias Gad
「私が男の子ならば
携帯電話の電源はオフにするでしょう
電話は壊れたと皆に伝えてね
そう皆、私がひとりで寝ていると思ってくれる」
このラインは不思議な響きをするかもしれません。
これは彼女以外とは連絡取らないようにして浮気をしないとい意味を隠しています。
この社会の中で実際に携帯電話やスマホの電源をオフにして生きてゆこうとするひとは少数です。
皆、片時も大事に自分のスマホを握りしめています。
SNSやメッセージ・アプリを使って常に誰かと一緒に情報を分け合いたいと願うのです。
「If I Were A Boy」の発表は2008年ですので、ここではスマホではなく携帯電話でしょう。
ただし、携帯電話の時代であっても誰かからの電話を待つために常に電源をオンにします。
もしくはこちらから浮気相手に連絡することもあるでしょう。
そのことでパートナーがやきもきすることなど気にしない男性もいます。
ビヨンセはこうした風潮に疑問を呈しました。
繋がりたい人と現に一緒にいるのならば携帯電話の電源はオフにしましょう。
2008年のリリースから10年以上の歴史を経ました。
時代はスマホ全盛期に変わり、状況はますます悪化しています。
今のビヨンセならばどんな歌詞で表現するか尋ねたいです。
ビヨンセの作家性について
I'd put myself first
And make the rules as I go
'Cause I'd know that she'd be faithful
Waitin' for me to come home
To come home
出典: If I Were A Boy/作詞: Brittany Jean Carlson Tobias Gad 作曲:Brittany Jean Carlson Tobias Gad
「私は自分自身を最優先事項にするの
それから思うようにルールを作るの
なぜって私は知っているのよ 彼女は誠実だってことを
私が家に帰るのを待っているの
家に帰ってくるのを」
女性はいつも帰ってこない男性を待ち続けていると歌います。
すべてのカップルに当てはまる状況ではもちろんないです。
私は浮気症の男だけを標的にしてこの歌を歌っています。
男性への攻撃がきついのはビヨンセの作家性のようなものです。
アーティストとして一本筋が入っているのでどの曲でもこうした個性がうかがえます。
現実には女性が家庭で待っているから早く帰るという男性の方が圧倒的に多いです。
それでも不埒な輩もワラワラと湧いてくるもの。
しかしこうした不逞の輩こそビヨンセの憤りのようなものを何とも思わずに生きています。
「If I Were A Boy」はそうした輩を説得するように感情をヒートアップさせて歌うのです。
ビヨンセの歌唱力は超一流ですのでエモーショナルな歌い方でも破綻がありません。
彼女の切実な想いが多くの人の心に届くと嬉しいです。
愛こそが優先事項なのに
It's a little too late for you to come back
Say, it's just a mistake
Think I'd forgive you like that
If you thought I would wait for you
You thought wrong
出典: If I Were A Boy/作詞: Brittany Jean Carlson Tobias Gad 作曲:Brittany Jean Carlson Tobias Gad
間にリフレインが挟まりますが繰り返しになりますので割愛いたしました。
申し訳ございません。
「あなたが戻ってくるのは少し遅すぎたの
間違いだったなんていってさ
私があのことであなたを許すと思うなら
私があなたを待っているなんて思っているとしたならば
あなたは勘違いしているわ」
やはり標的にしている男性は元のパートナー。
そしてそのパートナーが私に隠れて浮気をしたのが発覚したようです。
ビヨンセはどの歌でも浮気をする男性を許しません。
自尊心が高い女性なのですから浮気なんて論外でしょう。
しかも別れ際に男性に泣いてすがるような真似は一切しません。
ただこの「If I Were A Boy」のMVでは涙を見せています。
泣かない強い女を描いてきた彼女にもこうした表現は可能なのでしょう。
実際に涙を流さない人は男女ともにいません。
ビヨンセの表現の幅の広さを思い知らされます。
このページからリンクを貼りましたのでご覧ください。
このブリッジの箇所は私が少年だったらという前提もなく本音をぶつけます。
浮気や不倫というものは男女どちらもシチュエーションによっては不法行為です。
慰謝料の請求対象になることもあるので本当にやめたほうがいいと思います。
しかしそうした縛りがあろうとも気にしない男性がいるのも事実です。
不法行為だからダメということではなくパートナーの愛を欺いていることにビヨンセは怒ります。
彼女にとって愛は最優先事項なので、この事実を無視する輩は許しません。
この価値観は女性全体の尊厳に関わるとして、こうした歌を歌い上げるのです。
「If I Were A Boy」と世界の在り方
キツい意見がいっぱい
But you're just a boy
You don't understand
(Yeah, you don't understand, oh)
How it feels to love a girl
Someday, you'll wish you were a better man
出典: If I Were A Boy/作詞: Brittany Jean Carlson Tobias Gad 作曲:Brittany Jean Carlson Tobias Gad
「でもあなたはただの男の子で
あなたは理解しないでしょう
(Yeah あなたには理解できないの)
女の子を愛するってどんな感じなのかを
いつの日か自分はもっとましな人間になるってあなたは望んだりするでしょう」
これまで私が男の子だったならばという思考実験のような歌詞を紡いできました。
いよいよクライマックスになって、所詮、あなたは男だからと歌います。
残念ですが男女の相互理解は描かれません。
何せ相手は私を欺いて浮気した男性です。
歩み寄るかどうかはそのカップル次第ですが、このふたりは別れます。
女性の方から浮気した男性を蹴りつけるようなお別れです。
男性を許せないというよりもその行いが人間として受け入れられないという思いを抱えます。
どうせあなたは女性の気持ちを理解しようともしない。
それは実は根本のところで女性を愛していないということなの。
これは誰それとどうなったとかではなくてあなたが女性全体を理解していないということなの。
それはすべての女性への侮蔑であることを知ったほうがいいわ。
あなたはそれでも理解できないでしょうけれどね。
このくらいのキツい言い分です。
しかし男性には浮気をしたという負い目があるので反論の余地はありません。
こうした物言いがクライマックスに向けてさらに加速します。
覚悟して歌詞をご覧ください。