高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも 若すぎたと
ただ思うだけ けれどしあわせ

出典: ひこうき雲/作詞:荒井由美 作曲:荒井由美

松任谷由実歌詞を考察している方の中には、この歌詞が自殺と結びつくという方もいます。しかし、果たしてそうでしょうか。

病気が徐々に悪化していき、病室で過ごすことが多くなっていた彼は窓から空を見ることが多くなったのだと思います。死の直前まで、彼は空を見ていたのでしょう。

「今はわからない」というのは、今となっては彼が空を見ながら何を思っていたのかわからないという意味です。

もちろん、それは他の人にわかるはずがありません。ただ、死ぬのが早かったと思うことしかできないのです。

そこで、気になるのが「けれどしあわせ」という歌詞だと思います。

高校生まで生きた彼には、彼にしかわからない悲しみと同じように喜びもあったはずです。

ただ、彼の死を悲しいと思うのではなく、「必死に生きたよね」「つらかったよね」「けれど、幸せなこともあったよね」という彼をあたたかく見送る気持ちがこめられているのではないでしょうか。

今は幸せになったという解釈

若くして亡くなったのに、なぜ幸せといえるのか…。

この歌詞にも多くの考察が寄せられています。

生きていた頃にも幸せなことが沢山あったはず、という解釈を上記しました。

そしてもう一つ、死んで空に行くことが出来たから幸せという捉え方。

病室の高い窓から空を見て憧れ続けていたのでしょう。

死ぬ直前、何を思ったのか誰にもわかりません。

皆はただ、可哀そうと口々にいっているのです。

しかし、死んだ本人は憧れ続けた空に舞いがることが出来て夢が叶っています。

自由に気持ちよく、空に昇っていったのです。

病気から解放されて幸せだったのかもしれません。

憧れた空にいくことが出来て幸せだったのではないでしょうか。

繰り返される言葉

 曲の最後では、サビの歌詞が繰り返されます。死の間際まで空を見上げていた彼は、自由な空への憧れを持っていたのではないでしょうか。

今、彼は空を自由にかけ回ることができます。そんな彼に対しても、「けれどしあわせ」という歌詞は向けられているのです。

そして、あまりにも短かった彼の生きた時間と、鮮やかに空を切り裂き消えていくひこうき雲のはかなさを重ねているのだと思います。

「ひこうき雲」の歌詞は特攻隊をテーマにしていた?

反戦の意味を込めた

この曲の歌詞は、友人の死を歌ったものであるというのが定説です。

命というものを雲に例えて歌ったのでしょう。

しかし一説では特攻隊の様子を歌ったのではないかともいわれています。

ユーミンはかつて鹿屋航空基地を訪れており、反戦の意味を込めて作られたという説です。

この場合、あの子とは特攻隊の若者を指すことになります。

聴く者によって多くの捉え方が出来る歌詞なのでしょう。

特攻隊の若者を歌った

この歌のもう一つの解釈である「特攻隊の若者たち」を考察してみます。

あの子は昇っていく
何も恐れない そして舞い上がる

出典: ひこうき雲/作詞:荒井由美 作曲:荒井由美

確かに、これから敵の戦艦へ突っ込んでいく姿を表現しているかのようです。

実際には特攻隊に志願した若者たちは、死を恐れていたのではないでしょうか。

時代という大きなうねりが、志願という心にもないことをさせてしまったのでしょう。

または、洗脳にも似た英雄の姿が特攻隊だったのかもしれません。

この歌詞を反戦の歌として捉えるのならば、言葉通りではない深い意味があるはずです。

死を恐れないという若者の姿を、何ともいえない複雑な感情を持って表現しています。

高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない

出典: ひこうき雲/作詞:荒井由美 作曲:荒井由美

ゼロ戦の窓から広い空を眺めていたあの子の様子が浮かびます。

若くして命を散らせていった若者たちの姿です。

実際に特攻隊には、ベテランのパイロットではなく半人前の若者が選ばれました。

その理由は明白です。

技術が低く敵を倒す能力が低いものが選ばれた、歴史的には命の軽視といわれています。

幸せと歌っているのは、名誉という名の勲章をもらったことを示すのでしょう。

当然、この部分も風刺的な歌詞になるのではないでしょうか。

もしも特攻隊の歌という解釈をするならば、とても悲しい歌に聴こえます。

時代に流され本当の幸せを掴むことの出来なかった若者たちの歌となるでしょう。

この歌をどう解釈するかは、聴く人の自由です。

様々な心情に響く歌こそが、名曲といえるのです。

まとめ

今回は、松任谷由美の「ひこうき雲」について紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

「死」がテーマになっている深い意味を持った歌詞は、とても切ない気持ちになりますね。生きるということについて、とても考えさせられます。

そのような繊細なテーマを持った曲だからこそ、「風立ちぬ」の主題歌に選ばれたのではないでしょうか。映画のストーリーと重なる部分があると思います。

この他にも、松任谷由実の「荒井由美」時代には、たくさんの良い曲があります。この記事を読んで、興味を持った方はぜひ聴いてみてください。

こちらはシンガーソングライター松任谷由実“ユーミン”のオフィシャルサイト「Yumi Matsutoya Official Site 松任谷由実 オフィシャルサイト」です。

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