嵐14枚目のアルバム『Japonism』に収録

嵐(大野智)「暁」の歌詞を徹底解説!引用された百人一首の影にあるのは悲恋?!雅やかな歌詞をご堪能あれの画像

今回紹介する楽曲「暁(あかつき)」は、リーダー・大野智さんのソロ曲。

2015年10月にリリースされた14枚目のアルバム『Japonism』に収録されています。

このアルバムはタイトル通り「和」を強く意識した楽曲が多く収録されました。

リード曲の「心の空」は作詞・作曲・編曲を布袋寅泰氏が担当し、ギター演奏も布袋氏によるものです。

「原点回帰」をテーマにしたこのアルバムを制作することで、改めて自分たちの原点を見直したそうです。

日本に生まれてさまざまな人との出会いを重ねたことで今の自分たちがいる……。

そんなたくさんの人たちへの感謝も込められているアルバムとして作られました。

リリース形態は初回限定盤、通常盤、よいとこ盤の3タイプ。

初回盤にはと布袋氏が共演した「心の空」MVのDVDが付属。

通常盤は紅白歌合戦でも披露された「ふるさと」ほか、全4曲入りのCD付き。

よいとこ盤は少年隊の楽曲「日本よいとこ摩訶不思議」と、メンバーのトークが収録されたCD付きでした。

大野智の真骨頂!

「振り付け師」の一面も

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テレビのバラエティやドラマ、CM、スポーツキャスターなど、それぞれが活躍を見せている

でも大野さんってそういった場では本来の力を見せてくださらないのです……。

大野さんが最も実力を発揮するのはやはりコンサート!

中でも自身のソロは、振り付けも大野さんが考えていることが多いです。

今回紹介する「暁」も振り付けは大野さんが考案したもの。

レッスン場で腕を組んだままほとんど動かず、「よし、できた!」と帰ったこともあるとか。

「家でもできるじゃん!」とメンバーに言われ「家じゃダメなんだよ!」と必死に弁解していました。

やはりレッスン場に来ると「振り付け師」としてのスイッチが入るのでしょうか……。

「暁」の振り付けも、歌詞になぞらえた動きが組み込まれ、歌の世界がより感じられるようになっています。

振り付けについては後述することにして、まずは引用された百人一首を紹介しましょう。

天皇・三条院の悲しみ

「心にも あらでうき世に ながらへば

恋しかるべき 夜半(よは)の月かな」

百人一首にもあるこの歌の作者は三条院(さんじょういん)。

天皇でありながら不遇に見舞われることが多く、40代前半に逝去したと言われています。

この歌は「私が望んでいなくともこの世に生きながらえてしまうかもしれない。

そのときにはこの夜更けの月を恋しく思う日がくるだろうか……」と歌っています。

この頃、三条院は病(やまい)でほとんど目が見えなかったそうです。

夜更けにぼんやりと霞んで見える月に想いを馳せてこの歌を詠んだ……。

そう考えると何とも切ないと思いませんか。

この歌の根本には「どうにもならないやるせない想い」が潜んでいます。

そこを押さえていただいたうえで歌詞をひも解いていきたいと思います。

月夜にあなたを想う……

届かない、溢れる想い

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ふと見上げ おぼろ月浮かんだ 夜に
可憐に咲いた 花よ
時代が 流れ 流れても
遠く 時を超えて 運んでゆく あなたの元へ

離れてく 千切れ雲
追いかけて さざ波
触れずとも 魅せられて
儚き 影の中で

出典: 暁/作詞:s-Tnk 作曲:三留一純

主人公はある女性を一途に想い続けている男性。

でも彼女とは滅多に会えないようです。

彼は会えない時間、目に映るいろんな情景に彼女を重ねます。

夜空に浮かぶ月に、可憐に咲いた花に。

時は日々流れていくけれど、彼女に対する愛情が消えることはありません。

空を流れる千切れ雲や、寄せては返すさざ波……。

傍にいて体温を感じることはできないのに、それでも想いが募ってしまう。

終わることなく繰り返される情景が彼の気持ちにも終わりがないことを教えるのです。

もう会えないと分かっていても

風 いたずらに 吹き抜けて 水面(みなも)に
浮かぶ空 掻き乱してゆく
移ろう(時を)願う
手を伸ばしても ただ 溢れるだけ

もう 来ぬ人を 待つような 想いで
過ぎてゆく あてもなき夜
心(消えぬ)景色 汚れなき 微笑みに

「心にも あらで憂き夜に 長らへば…」
知らぬはずの 燃えるように 鮮やかに 輝いて

出典: 暁/作詞:s-Tnk 作曲:三留一純

風は気まぐれに吹いては空を乱し、水面に映された景色も消してしまう。

何もないまま日々を過ごしている男が手を伸ばしても何ひとつ手に入れられない。

ただ、彼女への想いが溢れることを自覚するだけ。

自分の前から去って行った彼女を待っているのか。

いくつの夜を越えたら心の闇が明けるんだろう。

目を閉じると浮かび上がるのは彼女の無垢な微笑み。

「望んでいない重苦しい夜がこれからもずっと続くのか……」

あの燃えるように鮮やかだった日々を私は知ってしまったのに。

夢の中でしか会えない