「Prime Numbers」が生まれたきっかけは?

松任谷由実が言い当てたもの

家入レオ【Prime Numbers】MVの内容を解説!証明写真機の中で繰り広げられるドラマに注目!の画像

17才の家入レオが歌う「サブリナ」は、ひりひりするような感触のある曲でした。

衝撃的なデビュー曲は切ないメロディーにティーンエイジャーの赤裸々な心情が込められていたのです。

傷つきやすい繊細な心を大人でも子供でもない女性が歌っているような、と表現すればいいのでしょうか。

モヤモヤした思いや鬱屈した感情を歌にする才能と引き換えに、彼女は苦しんでいたのかもしれません。

諸刃の剣にもなる鋭敏な感性が、あのキリッとした眼に表れているように思います。 

そんな彼女の本質的なところを言い当てたのが、松任谷由実でした。

初対面で『素数のように、どこにいても馴染めない』と家入レオを表現したのだそうです。

胸の奥に抱えていた自分自身に対する感情を彼女に代わって言葉にしたユーミンの感性。

アーティスト同士の短いやり取りの中から、はっとするような刺激を受けたのでしょう。

Prime Numbers(=素数)」は、そんな出会いから生まれた曲なのです。

「Prime Numbers」MV

数字が表す「孤独」や「孤立」

デビューから7年経って24才になった家入レオは大人の雰囲気を漂わせるようになりました。

相変わらずキリッとしたまなざしと、どこか孤独を感じさせる美しさが印象的な彼女が演じるMVです。

松任谷由実が彼女を表現した言葉を英語でタイトルにした曲ですが、素数が表すものとは何なのでしょうか?

素数(そすう、英: prime number)とは、1 より大きい自然数で、正の約数が 1 と自分自身のみであるもののことである。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/素数

要するに素数とは1もしくはそれ自身でしか割り切れない数字のことで、MVの中にも登場します。

小さい方から並べると、2・3・5・7・11・13・17・19・・・と無限に続いていく数字です。

それだけ見れば単なる数字を人格に当てはめてみると「孤独」や「孤立」という文字が浮かんでくる。

松任谷由実は初対面の家入レオから受けた印象をシンガーソングライターらしい言葉で彼女に伝えたのです。

その言葉からイメージを膨らませて出来た「Prime Numbers」のMVを見ていきましょう。

シンプルで見事なオープニング

闇夜に光る証明写真機

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最初に登場するのは闇夜にぽつんと光る証明写真機です。

周囲には何もなく、赤で「証明写真」と書かれた文字も寂しい感じがします。

ここに一人で入って写真を撮る自分を想像すると、悲しくなってしまいそうです。

続いて悲しげな短いピアノのイントロと共に映し出される綺麗になった家入レオに少しドキッとさせられます。

ただ美しいだけではなく、そのシャープな美しさは孤独を纏っているようにさえ感じるのです。

しかも歌い出しの歌詞には彼女が少女の頃から抱えていたかもしれない葛藤が見えています。

つくり笑いだけ うまくなってく
わたし自身はまだ騙せないまま

出典: Prime Numbers/作詞:松尾潔 作曲:家入レオ・久保田真吾(Jazzin'park)

たったこれだけの短い歌詞なのにそこからは深い孤独が伝わってくるようです。

闇夜の証明写真機孤独を感じる美しさ、そして葛藤を表現した歌詞

この三つだけで「Prime Numbers」の世界観を表現したシンプルで見事なオープニングだと思います。

ひとり夜の街を歩く家入レオ

唐突に現れる証明写真機

家入レオ【Prime Numbers】MVの内容を解説!証明写真機の中で繰り広げられるドラマに注目!の画像

歌う家入レオの背景には白く光るものが見えますが、この光もなんだか冷たいような気がします。

夜の街が寂しく感じるのは暗さのせいだけではなくて、彼女がひとりで歩いているからでしょう。

どこにでもある証明写真機が唐突に現れると急に現実に引き戻されたような感覚になってしまいます。

お洒落などまったく念頭にないデザインと手軽でインスタントな感じがMVの雰囲気にそぐわないのです。

もちろんこの証明写真機を目指して夜の街を歩いていたわけではありません。

それなのに一旦そこを通り過ぎた彼女が足を止めて後ろを振り返ったのは何故なのでしょうか。

ひょっとしたら「あなたの心を写してあげますよ」という声が聞こえたような気がしたのかもしれません。

満ち足りているときや誰かと一緒に楽しく過ごしているときは、周囲のことは気にならないものです。

孤独な心を抱えてひとりでいるからこそ、いろいろなことが心に飛び込んでくるのではないでしょうか。

彼女を呼び止めたのは何も喋らずただ無機質に光を放っている証明写真機でした。