恋する図形 (cubic futurismo)【上坂すみれ】歌詞解説！哲学的な歌詞に酔いしれよう…！

「未来主義」とはどのような意味を持つのでしょう？

これはイタリアに端を発しヨーロッパ全土に広まった20世紀初めの破壊的な芸術運動のことです。

後に共産主義運動に発展することから上坂さん大好物のロシアに繋がるのです。

詳細はググっていただくとしてようやく「現代美術」というキーワードと繋がりました。

「恋する図形（cubic futurismo）」のテーマは「現代美術」であることは前述しました。

この現代～と続く表現はアート界隈ではよく使われる言葉です。

とてつもなく深い世界なので解説した方がよいのかどうか...。

ものすごくかいつまんで説明するなら「常識に囚われずに表現を行う」行為そのもの。

結果として出来上がった作品は万人には理解されず後世で認められることが多いです。

現代アートの世界ではピカソ、岡本太郎、草間彌生、ジョン・ケージなどが有名。

誰もが見たことのあるピカソの絵画はまさに「Cubism（キュビズム）」の代表格。

一番初めの歌詞に出てきますね。しかし言葉は解体されています。

その後もロシアの現代美術用語をカタカナ表記にすることで意味性を乖離。

「恋する図形（cubic futurismo）」の歌詞はこのような世界中の美術用語がひたすらに羅列されます。

そして言葉の並び、上坂さんの無機質な歌唱法で全ての意味は漂白されるのです。

解体された美術用語。

その先には「この美術部には問題がある！」の1人の登場人物が存在します。

イケメンなのに「二次元嫁」を描くことに人生を費やす内巻すばるくんです。

彼は人生の伴侶となるべき運命の女性＝ファム・ファタールを追い求めます。

その先に見えたのが「二次元嫁」だったのです。

彼にとっての「二次元嫁」は時間軸・空間軸を超越した究極の美。

主人公のみずきちゃんは奥手ながらも彼に振り向いてもらいたい気持ちでいっぱいです。

2人の噛み合うことのない恋愛観こそがまさしく究極の近代美術。

そんなアニメの世界観を端緒に表現したのがBメロの歌詞なのでしょう。

ここでようやく光明が差してきました。

通常のJ-POP、そしてラブソングに必要不可欠なものが姿を現しました。

それは「主語」です。

しかしその「主語」すらも漂白された言葉の羅列に埋もれていってしまいます。

広い意味での「歌」に定義はあるのでしょうか？

主体となる人物が目にした光景、感じた気持ちをメロディーに乗せたものを私たちは歌と呼びます。

形式上省かれることはあっても「主語」のないJ-POPはほとんどありません。

だからこそのTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの起用なのでしょう。

日本にはYMO～ヒカシュー～電気GROOVEへと受け継がれるテクノポップという系譜が存在します。

テクノの源流は遡ると「Cubism」から派生した現代音楽です（キッパリ）。

美術部を舞台にしたシュールな作風の「この美術部には問題がある！」。

そのテーマソングにはテクノポップと現代美術の融合は必要不可欠だったのです。

ここまで真剣に歌詞の意味を考えてくださった皆様にお知らせがございます。

「恋する図形（cubic futurismo）」の歌詞には意味はございません。

いえ、もしろラブソングから恋愛と物語を排除すること。

アニメの世界観と合致させること。

その2つが我らが師団長上坂すみれ閣下の目的だったのです。

意味性を剥奪することに意味を見出す行為。

ある分野では「VANDALISM（破壊行為）」「Dadaïsme（ダダイスム）」と呼称します。

しかしこの行為には高度な音楽性と言語感覚が必要とされます。

故にJ-POPの分野においてこれほどキュートでポップな実験作はかつてない領域なのです。