いつか恋人に会える時
私の世界が変わる時
私泣いたりするんじゃないかと感じてる
きっと泣いたりするんじゃないかと感じてる
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
ここで、歌詞の女性が泣かない理由が明らかになります。
ただ強い女性だからという理由で涙を見せなかったわけではないのです。
女性といっても、実はまだ本当の恋をしたことがない少女だったのですね。
しかし、普通の若い少女たちはすぐに恋愛の熱に浮かされてしまうもの。
それに比べば、自分を「いつか…」と客観視できている点で周りよりも少し早熟なのかもしれません。
いずれにせよ少女にとって、まだ涙が出るほどの熱を感じたことはなかったのです。
あの曲とリンクしている?
ああ卒業式で泣かないと 冷たい人と言われそう
でももっと哀しい瞬間に 涙はとっておきたいの
出典: 卒業/作詞:松本隆 作曲:筒美京平
ほぼ同時期にデビューし、同じく80年代のアイドルとして活躍した斉藤由貴。
そんな彼女のデビューシングル【卒業】にも泣かない女性が登場します。
卒業式の場面。
別れを惜しんで、涙を流している同級生を尻目に、歌詞の女性は泣きません。
この部分と【飾りじゃないのよ涙は】の内容が、どこかリンクしています。
涙はこれからの自分のもの。だから簡単に見せたくない。
それが当時の少女共通の健気でいじらしい想いだったのかもしれません。
それぞれ、歌詞に登場する女性は強そうに見えますが、実は繊細なのです。
いつかの自分のために涙を残しておこうとするなんて、ロマンチックで素敵です。
涙は女性のアクセサリーじゃない
飾りじゃないのよ涙は HA HAN
好きだと言ってるじゃないの HO HO
真珠じゃないのよ涙は HA HAN
きれいなだけならいいけど
ちょっと悲しすぎるのよ涙は HO HO HO.......
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
タイトルがそのまま歌詞に使われている、印象的なサビ。
そこでは、男性が持つ理想の女性像に喝を入れています。
1980年代はまだ、“女性はか弱くてお淑やかであれ”という考え方が一般的。
そのため男性は涙を流す女性に弱かったのです。
例えば喧嘩をした時、別れ話をした時…。
素直に涙を流す女性は可愛く思えたのでしょう。
涙を流さないなんて、そんなに自分を愛してないのでは?と疑問に思ってしまう男性が多かったのかもしれません。
世の中にそんな価値観が充満している中でも、少女は涙を流しません。
本当は泣きたいこともあったでしょうが、余計に悲しくなってしまうから泣きたくないのです。
それに、女性の涙はアクセサリーなんかじゃない!と強い心を持っているのでしょう。
女性であれば、みんなその信念に痺れてしまうこと間違いなし。
自分の心を奮い立たせるために聴きたい一曲です。
歌っている映像もチェック!
ザ・ベストテンで歌った貴重な映像
1978年から10年以上人気を誇っていたTBSの番組「ザ・ベストテン」。
その舞台で堂々と【飾りじゃないのよ涙は】を歌い上げる中森明菜の映像が存在します。
まだ10代でありながら、その見た目は既に大人の女性。
少し不良少女の様にクールな姿が彼女の魅力です。
この曲でもメンズライクな黒いジャケットを羽織り、カッコ良くキメています。
当時1980年代の女の子は、みんな彼女の姿に憧れていたでしょう。
それくらいこの映像からも彼女のセルフプロデュース力が伺えます。
井上陽水のセルフカバー
実はこの曲の作詞・作曲を担当した井上陽水自身もセルフカバーを行なっています。
そんな彼が歌う映像も見つかりました。
こちらはライブ映像で、曲はジャズ調にアレンジ。
中森明菜はカッコ良く派手に、井上陽水はしっとりと歌い上げているのです。
また雰囲気も全然違い、まるで別の曲を聴いているかの様。
どちらが良いかなんて甲乙つけがたい程それぞれに魅力があります。
敢えて言うなら、お酒を飲みながら聴きたいのは彼のカバー。
ワインが似合う大人な方はぜひこちらもチェックしてみてください。