速い車が好きなのさ
疑いない性能
痛いくらいに風を切り
全てを忘れ
鏡の前ボタンを留め
覚悟をきめてドアをあけよう
出典: WOLF/作詞:KOSHI INABA 作曲:TAK MATSUMOTO
単に歌詞だけをなぞると「速い車って、レーサーが乗るような車のことかな?」と思われるかもしれません。
ですがここでは弁護士のような、スーツを着る人が乗る車をイメージしてみましょう。
とすると「速い車」というものは、ただ「スピードが出る車」を意味するわけではなさそうです。
スピードが出る上に耐久性もあり、デザインも優れていてハンドルも軽い。
絶対的な安定感・安心感という保証を兼ね揃えたブランドの高級車が連想されます。
さらに鏡の前で身なりを整えるときというのは、たいていの場合気合を入れて何かに臨む前。
最高のパフォーマンスを発揮するために最高の装備をし、目標達成のためにまっすぐつき進んでいく。
多少傲慢なくらい自分に自信をもち、堂々と戦いに挑んでいく姿勢がここから見て取れます。
サビで吠える
俺は荒野
甘えりゃGame Over
愛を語るにゃ風が強い
like a ローラーコースター
止まぬいざこざ
揺れる心抑えつけて
君の目見て本音だけ吠える
出典: WOLF/作詞:KOSHI INABA 作曲:TAK MATSUMOTO
戦闘モードに入った企業戦士の心境はまるで荒れた大地に1人立っているときのよう。
隙を見せたり弱音を吐こうものなら、寝首をかかれて潰されてしまいそうな厳しい社会に生きています。
実際に弁護士が抱える案件は1人に1件ではありません。
同時並行で100件もの案件を抱える弁護士もいるといいます。
1つの案件が解決しないうちに、毎日どこかで問題が勃発しては、悩める依頼者が救いの手を求めて相談に訪れる。
まるでジェットコースターのような日々。それが弁護士事務所の実際なのです。
事実確認の中では人であるがゆえの感情や友情、人間愛などといった曖昧なものの存在が見え隠れします。
弁護士も人間です。
「その立場だったら、そうしたかもしれない」という共感や同情をしたくなる場合もあるでしょう。
けれどいくらきれいなことを言っても結果を出さなければ意味がありません。
正しさを証明するためには訴訟で勝つしかないのです。
だからこそ、自分が本当に正しいと思う言葉を「吠える」のです。
なぜ、「吠える」?
ここで注目なのは、ただ「言う」や「つぶやく」のではなく、「吠える」という表現。
吠えるというのはただ「伝える・届ける」という意味に加えて感情も併せた行為です。
「自分はこう思うんだ」と力強く主張する。大声で怒鳴る。
真っ向から現実と向き合い自分の信条も主張する。
厳しい社会で生きていくためには一人の人間として強くなければならない。
そんな甲斐の信条を歌詞で表したのではないでしょうか。
企業戦士でも安らぎたい
誰かに包まれるように抱かれた夢
けれど全ては儚くてただ消えてゆく
嫌われることを恐れて
なにかを成せると思うの?
出典: WOLF/作詞:KOSHI INABA 作曲:TAK MATSUMOTO
高いパフォーマンスを維持してバリバリ仕事をこなす企業戦士でも、心の安らぎは必要です。
夢は、現実とのバランスを取るために脳が見せるものだという説もあります。
心の中では人が本質的にもつ温かさや安心感を欲しているのでしょう。
けれど目覚めると突きつけられる現状は昨日の続き。厳しい現実です。
勝ちに行くためには手段を選ばず、法に触れるギリギリのラインまで攻めていく甲斐正午。
「そこまでしなくても」と周りから非難されることもしばしばです。
「非難されることを恐れてどうして勝つことができようか」
これは仕事だけでなくどんなことにも当てはまることかもしれません。
この部分は続く2番のサビにも通じるところがあります。
自分を信じること
俺は荒野
甘えりゃGame Over
愛を語るにゃ風が強い
吹けば飛ぶような
同情がちらほら
そんなのに振り回されない
ひとりぼっちでも本音だけ吠える
出典: WOLF/作詞:KOSHI INABA 作曲:TAK MATSUMOTO
うまくいかないことが起こったとき、周囲の人達は善意のつもりでいろんな言葉を投げかけてきます。
「やめておいた方がいいんじゃないか?」
「お前のためを思って言ってるんだ」
「大丈夫、お前は何も悪くないよ。責任を感じる必要はないんだ」
これらの言葉は一見優しい言葉のように聞こえるかもしれません。
しかし、その言葉をそのまま受け入れてしまっていいのでしょうか?
その後の自分の成長のために、今は歩みを止めるときではないかもしれない。
敵をつくってでも、歩みを進めたからこそ始めて見えてくるものがあるかもしれない。
自分の否を認めることで、今まで見えなかったことに気づくことができるかもしれない。
相手の言葉を鵜呑みにすることが必ずしも自分にとってプラスになるわけではありません。
さらに言えば、いろいろな言葉を投げかけてくる人たちは、何の責任もとってはくれません。
そんな無責任な声に振り回されることはないのです。
誰も味方してくれなくても、みんなに反対されてひとりぼっちになったとしても。
自分に責任を持てるのは自分しかいないのだから。
そんな自分を強くもつため、信条を貫くために心に決めたことを「吠える」のです。
さいごに
「WOLF」は「SUITS」の甲斐をイメージして作られた楽曲です。
仕事にプライドを持ち、自分の軸となる信条をもつ人には共感するところが多い楽曲なのではないでしょうか。
デビューして31年のB'zですが、歩んできた道のりは決して平坦ではなかったでしょう。
外野からの声もたくさん浴びてきたB'zだからこそ作られた、深い歌詞と洗練されたメロディーの楽曲です。
アルバムには文頭で上げた曲以外にも魅力的な曲が目白押しです!
同アルバムでグリコポッキーのCMにも起用されたマジェスティックについての記事もぜひご覧ください。