第2位 難破船

強い思いが歌から伝わってくる映像。

たかが恋なんて 忘れればいい
泣きたいだけ 泣いたら
目の前に違う愛が
見えてくるかもしれないと
そんな強がりを 言ってみせるのは
あなたを忘れるため
さびしすぎて こわれそうなの
私は愛の難破船

出典: http://lyrics.wikia.com/wiki/%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C:%E9%9B%A3%E7%A0%B4%E8%88%B9

この曲自体は、シンガーソングライターの加藤登喜子さんの曲だそうです。 たかが恋なんて、本当に忘れればいいと思います。

でも中森明菜さんは自分の愛を本当に歌える人だったのでしょう。 youtubeの映像をみても、彼女の真剣な歌が映像から伝わります。 ちょっと怖い情念が伝わってきます。

「ミ・アモーレ」や「DESIRE」が、時代の中で踊らされている歌姫の気の強い部分だったとしたら、 この難破船は本当は愛を信じたいと思っているひとりの弱い女性の歌なのかもしれません。 事実、1989年7月に当時交際していた歌手の自宅のマンションで自殺未遂という事件をおこしました。 これは彼女が「難破船」という歌を歌った後のことです。

 日本は古来から和歌の世界ですが、そういう言霊の世界が歌にはあるのかもしれません。 悲しい例ではありますが、中森明菜さんは本当に魂をこめて歌っていたからこそ、その愛が裏切られた時に、悲劇をおこしてしまうのです。 絶頂の中で、そのいちばん上で歌っていた彼女。 そんな彼女が強い思いの中で転落していく。 その姿に時代の象徴としての歌姫の姿があったように思えてなりません。

第1位 二人静(ふたりしずか) -「天川伝説殺人事件」より

古典的な世界観がとても意味深。

「きっと、愛しすぎたから…」

出典: http://lyrics.wikia.com/wiki/%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C:%E4%BA%8C%E4%BA%BA%E9%9D%99

冒頭のモノローグがすべてをあらわしています。 すべては愛しすぎたからおきたことなのでしょう。

殺めたいくらい愛しすぎたから…

出典: http://lyrics.wikia.com/wiki/%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C:%E4%BA%8C%E4%BA%BA%E9%9D%99

歌の中でもう一度語られます。 殺したいぐらい愛しすぎたと。 ここに日本的な情念が男性に裏切られて殺意すら抱く悲しい女性の姿があります。 でもそういう自分の体験を経て、彼女は次のように歌います。

添い寝して 永遠に抱いていてあげる
いい夢を見なさいな うたかたの夢を
夜桜がさわぐ

出典: http://lyrics.wikia.com/wiki/%E4%B8%AD%E6%A3%AE%E6%98%8E%E8%8F%9C:%E4%BA%8C%E4%BA%BA%E9%9D%99

生きるということは、古典的な世界からすれば"うたかたの夢"なのです。 自分の人生を歌いきった、そういう歌姫だからこそ、すべてを超越して、 いい夢をみなさいと語りかけているかのよう。

中森さんは曲調がラテンだったり、未来的だったり、バラードだったり様々なテイストの歌を歌うことができる稀有な人物です。ファンからすれば、「二人静」は古典的すぎる曲なのかもしれません。 しかし芸能界を走り続ける中森さんのひとつの達成として、古典の世界、詞の世界と、実際の人生と歌が極まったひとつのアートとしてこの曲を1位に選びました。歌われた女性の情念。殺したいぐらい愛したという情念の表現が、古典の世界へと回収されていく不思議さを感じます。

カバーアルバム「歌姫」

中森明菜のアルバム一覧|歌詞特集とランキング紹介♪の画像

90年代以降は中森明菜はカバーアルバムに取り組むようになりました。 ひとつひとつの歌にこめられた思いがあり、そういう様々な人の思いを自分の歌として歌えるようになった彼女。 まさに歌姫になった彼女の姿があります。

最後に

2017年に中森明菜の歌を聴く。それは稀有な体験でした。まるで詩と彼女の人生が重なっているような幻想的な思いがしました。だからここで紹介した歌姫としての中森明菜は、彼女が生み出した世界観にのみこまれた筆者がみた幻かもしれません。しかし歌というもののなかに、今も魔法があり、そして言霊を操る歌姫という存在がもし今もいるなら、そのひとりは間違いなく彼女です。

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