オヴェスの言葉が繰り言になりました。
もう意識が薄れゆく瞬間なのかもしれません。
エルに伝えたい大事なことをまた口にします。
愛する人の顔を視界に焼き付けて、その光景を最期の想い出にできたなら。
こうした記憶が死んだ後にどのような意味を持つかは気にかける必要はないです。
意識が途絶える最期の瞬間まで相手の顔を視界にとどめておく。
息が続いている間は間違いなくその人の人生なのですから。
生きているときの最期の光景が愛する人の顔であることは何かとても大事なことである気がします。
色々あった人生だった。
望みのようにはゆかない厳しいものでもあった。
しかし最期に愛する人の顔を間近に見られてどこか救われる想いがする。
人生そのものが救済される一瞬ですから目を開いてよく見続けたいことです。
歳相応の審美眼を養いたい
しばらく見ないうちにエルの目尻には深いしわが刻まれていました。
大変な苦労をしたのですからしわが増えるのは当たり前です。
そのエルの当たり前をまるごと愛してくれるのがオヴェスという存在であります。
女性のしわをチャーミングだと褒めるのはマナー違反かもしれません。
しかしそうした野暮なことを考えるオヴェスではないのです。
私たちは自分が歳を重ねるごとに愛する人も同様に年輪を増やしてゆくことに気付きます。
愛する相手も老いますが、その分、自分自身も同様に老いているのです。
お互いの歳の取り方が素敵なものであるならば、どうぞ老化現象も称賛してください。
人間としての深みを増して分別をつけて歳を取ります。
若い頃では考えられなかった老化現象ですが、その分、精神の方は充実しているはずです。
歳若い頃の審美眼では捉えきれなかった老いの美を私たちは身につけます。
生涯のパートナーや愛する人はともに人生を乗り切ってきた戦友のようなもの。
平穏無事な人生ばかりではないでしょう。
エルのような波乱万丈な人生に揉まれて老いの美を身にまとう。
近年、容姿が「劣化した」などという言葉が生まれました。
とても心寂しことです。
一方で上述したようにグレーヘアの方が増えてきます。
世相は様々な要素が混濁して収集不可能な状態になってきました。
こうした時代にあって何を美しく思うのかでその人の深みのようなものが計れる時代になります。
審美眼を磨いて本質を見る力を養ってゆきたいです。
「Loves」が伝えたこと
看取ることの大切さ
エル おやすみ 先に眠るね
君に出逢えて 愛せて 幸せだったよ
出典: Loves/作詞:林保徳 作曲:林保徳
オヴェスが息を引き取ります。
最期の言葉はエルへの感謝と愛の告白でした。
自分の最愛の人に最期まで付き添ってもらえたことは幸福であったのでしょう。
遺されるエルの心象は描かれていません。
それでもオヴェスは幸せだと自分の口で伝えています。
私たちが歳を重ねて、あるいは不慮の事故などで旅立つとき。
その際に誰かがそばにいてくれることはとても大事なことです。
近年、老いも若きも孤独死する人が増えて社会問題になっています。
ひとりで旅立つことはどれほど心細いことなのでしょうか。
想像を超える現実がそこにはあります。
誰かに看取られることの幸福。
また看取った側も故人にできることはすべてできたと思えるような心境が生まれます。
大事な瞬間に立ち会うことの大切さをこの曲「Loves」から学びました。
すべては夢でありました
そろそろ種明かしの時間です。
この記事を読んでくださっているリスナーはもうご存知でしょう。
これまでのドラマはすべてエルの夢の中の話です。
どうしてそうなったのかはアルバム「L-エル」や関連書籍でご存知だと思います。
エルは路上で倒れてそのままこのような夢を見ました。
夢であったことを悲劇と見るかどうかはリスナーの判断に委ねられます。
この曲「Loves」を単体で鑑賞する際には様々な事柄に思いを寄せたくなるのです。
私たちは愛する人の最期のために何ができるのか。
もしくは最期の瞬間に私たちは愛する人のために何を伝えられるのかということ。
このテーマはアルバム「L-エル」という枠組みを超えて色々な深い問題を考えさせられます。
人生って、愛って何だろう。
リスナーがそう考えるようになったならばAcid Black Cherryの深い想いが成就します。
美しい物語の中に入ってゆけて幸せでした。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
OTOKAKEとアルバム「L-エル」
OTOKAKEにはAcid Black Cherryの関連記事がたくさんあります。
中でもアルバム「L-エル」の表題作の記事をご紹介。
アルバム全体についての大切な記述がいっぱいです。
ぜひご覧ください。
【L-エル-/Acid Black Cherry】歌詞に隠されたストーリーとは?アルバム表題曲! - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
活動休止前最後のアルバムとなったアルバム『L-エル-』の中核をなすタイトル曲「L-エル-」。この曲で表現されているのは驚くほどに純粋に相手を想う愛でした。
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