いま知っておきたい名曲「N氏について」
2016年にYouTubeで公開したMV「されど奇術師は賽を振る」がユニークでした。
そしてこのMVは凄まじい勢いで再生回数を増やしていきます。
嘘とカメレオンは2017年にインディーズ・ベースでミニ・アルバム「予想は嘘よ」を全国発売しました。
嘘とカメレオンの下剋上を地で行くようなブレイクはすでにこの頃から始まります。
MV「されど奇術師は賽を振る」の次に発表されたのが「N氏について」のMVです。
「N氏について」をメジャー・デビュー・アルバム「ヲトシアナ」にて新録音で再収録して世に問い直しました。
そのロック色にあふれるサウンドとMVに中毒症状になるリスナーが続出しています。
歌詞の意味がわかりづらい?
「N氏について」の歌詞は文学的素養に恵まれた女性ボーカリスト(チャム)による罠や仕掛けが多彩です。
そのために歌詞の意味がストレートに理解されません。
それでも少しずつ手がかりを探して、歌詞に隠された意味や思いに迫っていきましょう。
ねじくれたラブ・ソング、それが「N氏について」の正体?
歌詞は手紙文体で綴られています
拝啓 N氏聞こえますか?
この世の果てで甘い物でもどうぞ
ジョーカー辿った 嘘つきだあれ?
月の影踏みで遊びましょ
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
このように歌詞は手紙文体です。
N氏がいったい誰なのかは終盤になっても明らかになりません。
それでも手紙を綴るには何かしらの訴えや理由があるはずです。
シュールな歌詞なので、そこを厳密に暴き立てるのは無粋です。
しかし甘い物への誘いをしている辺りにN氏への好意を読むことができるでしょう。
サビのラインが美しい
嫌。『1+1=2』なんだって
当たり前の答えなら聞いちゃいない
愛を初めて知ったかのように
染まるのが楽しいの
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
サビの歌詞の前半部分です。
非常に美しいラインですね。
当たり前のことや、常識への不信や反発が読み取れます。
一方で愛という人間本来の本能に司られる感情への絶対的な肯定こそがこの歌詞の芯なのでしょう。
初恋が人を大きく変えるのは皆さんも経験のあることだと思います。
その素晴らしい体験のように楽しいことへの憧れが読めます。
喩えとして非常に共感できるはずです。
「N氏について」の歌詞がシュールであるにも関わらず、根強く支持されたのはこの辺に理由がありそうです。
理解するより言葉の美しさに酔いたいです
いろんな嘘 本当に
迷いながら選んだ
星のかけらは壊した
出典: N氏について/作詞:チャム 作曲:渡辺壮亮
興ざめさせられるような真実よりも嘘を志向するチャムという女性の遊び心が描かれています。