「ヒビスクス」の重いテーマ
「ヒビスクス」とはハイビスカスのこと
タイトルの「ヒビスクス」はハイビスカス(Hibiscus)のラテン語読みです。
一年中、ハイビスカスの花が咲く沖縄をイメージしたと思われる歌詞。
沖縄の悲しい歴史に通じた歌詞で草野正宗による渾身の作品といえます。
とても深く重い内容ですが、詩的イメージへの訴え方が素晴らしいです。
ハイビスカスの花が芳しく美しいように、この歌詞もどこか美しい。
とはいえ美しさばかり誇った内容ではない重さを伴う歌詞。
不二の美しいバランスで悲しい出来事を詩的に伝えるこの曲の歌詞を丁寧に解釈していきます。
主人公は飛行士
「ヒビスクス」の歌詞は難しい言葉は一切使われていないです。
それでも意味を読み解こうとすると何度も壁にぶつかります。
心して読んでください。
主人公は若い青年
過ちだったのか あいつを裏切った 書き直せない思い出
幼さ言い訳に 泣きながら空飛んで クジラの群れ小さく見える
後ろめたいままの心が憧れた
約束の島で 再び白い花が
出典: ヒビスクス/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
ピアノのコードストロークの後に続く歌い出しの歌詞です。
誰を裏切ったのかは分かりません。
それでもその出来事に主人公がどこか後悔を感じているようなニュアンスが窺えます。
一度、起きてしまった出来事は取り返しがつかないもの。
自分の未熟さを言い訳にする。
主人公は若い青年のようです。
舞台は沖縄?
泣きながら空飛んで クジラの群れ小さく見える
出典: ヒビスクス/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
主人公が飛行士であることが明かされます。
鯨がいる海、そしてタイトルのハイビスカスが咲いている土地。
色々と勘案するとやはり舞台は沖縄であると分かります。
沖縄の海の上を後悔にむせび泣きながら飛行する。
憧れた島、沖縄のどこかの島。
ハイビスカスの白い花が咲いている。
この後のドラマに注目しましょう。
歌われているのは戦争
サビはBメロからスムーズに移行。
歌詞もBメロを受けて続いていきます。
では、見ていきましょう。
武装解除する飛行士
咲いた変わらずに 優しく微笑むような
なまぬるい風 しゃがれ声で囁く
「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」
武器も全部捨てて一人 着地した
出典: ヒビスクス/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
飛行士が武装解除してひとりでどこか約束した島に着陸するシーンが描かれています。
沖縄と飛行士との関連を考えると太平洋戦争の沖縄戦での特攻隊が思い浮かぶはずです。
特定の歴史的な事実とこの歌詞がどこまでリンクしているのかはもっと慎重に見極めないといけません。
それでも沖縄戦での特攻隊もモチーフのひとつになったのは疑いようがないです。
一方で「ヒビスクス」は戦争一般への兵士個人の抵抗を普遍的に取り扱った歌詞とも読めます。
中々、読み解くのが難しく、軽々しい断定を許さない歌詞です。