極限状態を切り抜けたひとりの作家

【ヒビスクス(スピッツ)】歌詞の深すぎる意味を解釈!囁く声は誰のもの…?モンスターが意味するものは?の画像

「ヒビスクス」が本当に沖縄戦の特攻をモチーフにしていると仮定します。

ここでの主人公の選択は史実を顧みると極めて少数のひとにしか当てはまらないです。

とはいえ、特攻隊の生き残りの方はたくさんいらっしゃいます。

特攻に飛び立つ前に戦争が終結した幸運な方たちです。

生き残った方の中でも特に有名なのが作家の島尾敏雄であります

島尾敏雄の体験と「ヒビスクス」

島尾敏雄の特異な体験は「出孤島記」や「出発は遂に訪れず」などの名作短編に結晶します。

島尾敏雄は1945年8月13日、翌日に出撃する準備命令を下されたのです

しかし翌日になっても出撃命令自体が滞ったままです。

翌日とは1945年8月14日、大日本帝国がポツダム宣言を受諾した日。

極度の緊張状態、いつ出撃命令が下り、死に向かわなくてはならないかと怯えた日々をなんとか切り抜けます。

島尾敏雄は後年、この体験を小説で問い、戦後文学の極北として絶賛されるのです

戦時下の緊張状態にありながら、島尾敏雄は南の島で後の妻・ミホと出逢います。

長編小説「死の棘」に連なる島尾文学の始まりがこの頃に凝縮されているのです。

「ヒビスクス」の歌詞を理解する上でもとても助けになる読書体験を得られるはず。

島尾敏雄の戦争文学の全体像を俯瞰で覗くと「ヒビスクス」の難解な歌詞もよく理解できます

「ヒビスクス」の歌詞の普遍性

【ヒビスクス(スピッツ)】歌詞の深すぎる意味を解釈!囁く声は誰のもの…?モンスターが意味するものは?の画像

1番のサビの歌詞がまた繰り返され、クライマックスのカタルシスを感じさせます。

もう一度、歌詞を振り返りましょう。

生き残るための智慧を伝えたい

咲いた変わらずに 優しく微笑むような
なまぬるい風 しゃがれ声で囁く

出典: ヒビスクス/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

ハイビスカスが咲き、生ぬるい風を頬に感じる土地。

「ヒビスクス」の歌詞には「沖縄」という単語は登場しません。

おそらく草野正宗は歌詞に沖縄戦を超えた普遍性をもたせたかったのでしょう。

ハイビスカスも「ヒビスクス」とラテン語読みさせることで、聴き手の理解にわざとワンクッション置きます

沖縄であり、ハイビスカスが咲くどこの戦場でのことであってもよい。

とにかく生き残る知恵を伝えたいという草野正宗の思いを受け止めたいです

誰も殺さず、誰にも殺されない

【ヒビスクス(スピッツ)】歌詞の深すぎる意味を解釈!囁く声は誰のもの…?モンスターが意味するものは?の画像

「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」
武器も全部捨てて一人 着地した

出典: ヒビスクス/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗

主人公の行動が「非国民」と非難されるのは祖国が戦争状態にあるときだけです。

極限状態にあってもまずは同調圧力に負けずに自分の生命を守れ

終戦まで隠れているのもよし、白旗掲げて敵に投降することだって生き残るためには必要です。

武装解除して誰も殺さず、自分も殺されない、そして自死と同じ特攻などは回避する

特攻隊は最初こそ志願制でしたが、後に強制徴兵に変わります。

その辺りの事情も考えながら書かれた歌詞でしょう。

まとめ:「ヒビスクス」が訴えたかったこと

【ヒビスクス(スピッツ)】歌詞の深すぎる意味を解釈!囁く声は誰のもの…?モンスターが意味するものは?の画像

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

スピッツの「ヒビスクス」が決して単純な歌ではないことをご理解いただけたはずです。

むしろCMソングに採用されたのが信じられないくらいに重いテーマの歌詞になります。

「ヒビスクス」に込められた世界平和への希求

【ヒビスクス(スピッツ)】歌詞の深すぎる意味を解釈!囁く声は誰のもの…?モンスターが意味するものは?の画像