あるあさ ぼくは みせのおじさんと
けんかして うみに にげこんだのさ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

ある朝、主人公は上司(=みせのおじさん)と思いっきり衝突します。

そして、上司と大喧嘩したことをきっかけに、勢いで会社(=みせ)を辞めてしまいました。

会社に通う必要がなくなった主人公。

そんな主人公は、自分の力で自由に生きる道(=うみ)を選んだのです。

要するに、サラリーマンを辞めて自営業を始めたということなのでしょう。

上司にガミガミと怒られることにうんざりしていた主人公。

だから、このような生き方を選んだのだと思います。

当時の世相において会社を辞めて独立する道を選ぶ生き方。なかったわけではありません。

しかし、その選択肢は現在のようにたくさんあったわけではなかったのです。

「転職」という概念がまだ浸透していません。

よって他の給料のいい会社に行ける確率はほんのわずかだったのです。

だから会社を辞めてしまったのなら独立資金を貯めて自分で店を起こすのが一般的でした。

それは「一国一城」の主を示す魅力ある言葉です。

嫌な上司や会社からの指示や文句を聞くくらいなら自分の好きなようにやってみたい。

これは当時のサラリーマンの多くが密かに思っただったのです。

「うみのそこ」で自由に生きる主人公

はじめて およいだ うみのそこ
とっても きもちが いいもんだ
おなかの あんこが おもいけど
うみは ひろいぜ こころがはずむ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

「うみのそこ」で生きていくことを決めた主人公。

きっと自営業を始めたばかりで、まだまだ駆け出しの底辺であることを示しているのでしょう。

自由に生きることを選んだ主人公は、今まで知らなかった世界でのびのびと過ごしはじめます。

しかし、会社を辞めた後も主人公には「おなかのあんこ」という負担がのしかかっています。

この「おなかのあんこ」については"贅肉"や"借金"など様々な解釈があるようですね。

ちなみに、筆者は「主人公の家族」を指しているのではないかと思っています。

会社からは解放された主人公でしたが"家族を養う"という責任はついてまわるのでした。

自分を応援してくれる人たちもいるけど…

ももいろ サンゴが てをふって
ぼくの およぎを ながめていたよ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

「ももいろ」は、幸福感を表す色です。

会社を辞めた主人公は、自分を幸福にしてくれる場所(飲み屋など)にも行くようになりました。

そこで出迎えてくれる人たち(=サンゴ)は、みんな手を振って応援してくれます。

主人公は、すっかりいい気分に満たされているようですね。

しかし、サンゴたちからしてみたら、主人公の野望なんて所詮は他人事。

だからこそ、無責任に応援できるという側面もあるのでしょう。

しかしながら、今までのような会社づきあいをしなくなった解放感

こんな幸福感を味わったのは何年ぶりでしょう。

お世辞やおべっかを言いながら飲みに行ってもちっとも楽しくなんかありません。

好きな時に飲みにいって自分の好きな店に行ける。

「ああ、なんて幸せな毎日なんだ」

主人公は心からそう思わずにいられないのでした。

2番~ラストの歌詞

「なんぱせん」が指しているものとは?

まいにち まいにち たのしいことばかり
なんぱせんが ぼくのすみかさ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

会社を辞めてから毎日が楽しくて仕方ない主人公。

そんな主人公が住んでいるのは、古い家(=なんぱせん)です。

難破船というと、昔は綺麗な状態で活躍したであろう船。

しかし、今となっては海の底で眠っているただの古い船です。

つまり主人公は、昔は綺麗だったけど、今は古くなってしまった安い家に住んでいるのでしょう。

ということは主人公は家族も親元からも離れて気ままな1人住まいを楽しんでいるのでしょう。

今でいう「移住」という感じでしょうか。

都会の雑踏から離れて田舎のたたずまいを楽しむ。

サラリーマン時代にはとてもかなわなかった夢の実現でしょう。

「サメ」はどんな人間を表しているの?

ときどき サメに いじめられるけど
そんなときゃ そうさ にげるのさ

出典: およげ!たいやきくん/作詞:高田ひろお 作曲:佐瀬寿一

自由を満喫している主人公ですが、時々嫌な奴(=サメ)も現れます。

このサメというのは、主人公が太刀打ちできないほどの威力を持つ人間を指しているのでしょう。

どんな世界で生きていたとしても「太刀打ちできない人間」はいるものなのです。

主人公がそんな人間に遭遇した時は、真っ正面から戦わずひたすら逃げます。

きっとこれは、主人公が会社員時代に身につけた処世術のひとつなのでしょう。

本当は美味しいものでも食べたいけど…