「恋詩」の歌詞を見てみよう

1番の歌詞をチェック

絡まった蜘蛛の巣があたしを指差して 浮ついた胸の奥に皮肉を投げる
快楽に溺れし人の涙は 儚き夢の証
彼方に生きる民にあたしは無力 憂うべき運命(さだめ)に何を祈る
現実に流れし人の涙は 眩しき夢の魂

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

「蜘蛛の巣」に例えられているのは、絡まりついてくる恋心でしょうか。
「彼方に生きる民にあたしは無力」「現実に流れし人の涙」という歌詞が出てくるので、この「あたし」が生きているのはどこか浮世離れした世界。
楽曲自体の持つ妖しげな雰囲気や全体の歌詞から察すると、この「あたし」は遊女なのかもしれません。

垣間見た心の中咲く 一輪の花の色は見えぬ
妖艶と麗しき罪の名は 忌々しき愛と共に在りし

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

「忌々しき愛」という言葉が出てきました。
「あたし」にとって、愛は尊いものではなく忌むべき存在のようです。

夜を越えあたしの夢今開く 胸の中に宿りし恋の詩
「一夜の戯れよ」と淡として 餞(はなむけ)の辞(ことば)を捧げましょう

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

吉岡の力強い歌声が印象的なサビでは、「一夜の戯れ」「餞の辞」という言葉がでてきます。
「あたし」は誰かと、一夜だけ共に過ごしたのでしょう。
その夜は一度きりのもので、永遠に続くものではないことを分かっているからこそ、「あたし」は淡々と別れの言葉を口にします。
しかしその胸の中では、すでに「恋の詩」が宿っている…つまり、「あたし」は恋をしてしまっているのです。
「夜を越え」と歌っていることからも、「あたし」の恋心は既に一夜限りのものではなくなっていることが読み取れます。

2番の歌詞をチェック

切なき胸の内は一向(ひたすら)隠して 今宵の静寂に吐息は溶ける
甘美な唇に伝う指先 密かに濡れてゆく

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

抱いてしまった恋心を誰にも察されぬよう、ひた隠しにする「あたし」。
続く歌詞からは、エロチックな光景が想像できます。
この歌詞が描き出す世界では、これらの妖艶なできごとは決して非日常ではないように読み取れます。
やはり、「あたし」は遊女や娼婦といった職業の女性なのでしょう。

さんざめく光の中待つ 罪深き人の影は見えぬ
永遠と唄われし罪の名は 儚き愛のもとに宿し

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

「罪深き人」、つまり恋心を抱いてしまった相手のことを待ち続ける「あたし」。
「さんざめく光」は、太陽というよりは夜のネオン街を差しているように思います。

日々を越えあたしの夢今散らし 胸の中の扉は閉ざしましょう
一夜の戯れにも煌煌と 燃え盛りし愛を冷ましましょう

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

再び、吉岡がサビを歌い上げます。
先程とは違い、2番では「胸の中の扉は閉ざしましょう」「冷ましましょう」と歌われています。
「あたし」は、抱いた恋心をなかったことにすることを決めたようです。
夜の世界に生きる女性にとって、一人の男への恋心は許されないもの。
懸命に恋心を冷まそうとする姿が描かれています。

無造作に絡んだ指を解き今 この胸の熱(ほとぼ)りは癒えよう
恍惚と喘ぐ声は空に消え 日溜まりの花と変わるのです
また芽吹くのです そう生きるのです

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

徐々に思いを冷ましていこうとした「あたし」。
しかし遂に、誰かと「無造作に絡んだ指」を解いた、と歌っています。
さらに次の行を読み解くと、おそらく「あたし」は夜の世界から足を洗い、昼間の世界を生きる道を歩み始めたようです。
どれだけ隠そうとしてもなかったことにできなかった恋心。
それがついに、「あたし」の生き方さえも変えてしまったのですね。

やがて時は満ち人は変わるもの 強く儚き愛と生きるもの
つれなき恋路をただ阻むのは「あたし」という名の影無双

出典: 恋詩/作詞:山下穂尊 作曲:山下穂尊

時の流れと共に「あたし」は変わり、愛を憎いものとは思わず、その愛を大切に生きることにしました。
彼女が抱いた恋心を吹き消そうとしていたのは、他ならぬ彼女自身。
「人は変わるもの」と言っていますが、彼女の人生はきっと良い方向に変わったことでしょう。
最後は1番のサビを再度高らかに歌い、愛の喜びを叫びながら、この曲は終わっていきます。