切ない別れ話

曲は、夜に向かう夕暮れ時から始まります。

登場人物は、シンプルに2人だけ。

「君」と、曲の主人公である「僕」のみです。

2人の仲がぎくしゃくしていることが、歌詞の中から読み取れます。

別れ話の最中なのかもしれません。

2人はこのまま別れてしまうのでしょうか。

もつれる会話

話を聞き続けられない

夕日とライターの火を重ねて 赤く服が染まる
君は何か言いた気だけど 僕はまた歩き出す

出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

「君」が「僕」のどちらかは、タバコを吸う人のようです。

服を赤色に見せるほど強い夕陽から、曲の時間帯が日没の直前であることが窺えます。

会話の途中だったのでしょうか。

「君」は言いたいことがあったようです。

しかし、「僕」はそれを聞く前に歩きだしてしまいました。

「君」が話したそうなそぶりを分かって、あえて気づかない振りをしたのです。

言いたかったこととは何なのでしょうか。

少なくとも「僕」にとって、それは聞きたくない言葉だった可能性が高いでしょう。

泣くのが分かっているから

それとない日々で今 夜に待ってる涙
それを知ってる僕ら 宙に浮く言葉の節々を息を掴むように探すのさ

出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

2人は夜も同じ空間で過ごす間柄のようです。

同居している恋人同士かもしれません。

多くの人が、夜は家に帰ります。

家の中はプライベートな空間です。

外では抑え込んでいた感情が、帰宅後に噴出してしまうのでしょうか。

2人が毎晩ケンカをしている可能性が浮かんできます。

感情が昂るあまり、「君」と「僕」のどちらか、あるいは両方が泣いてしまうのでしょう。

外に出ている間は、周りの人の目が直接的にあります。

それが無意識の抑止力となって、激しいケンカに発展せずに済んでいるのかもしれません。

しかし家に帰れば、外部の目はなくなります。

昼間の何気ない一言が発端となって、口ゲンカが始まってしまうのでしょうか。

その流れは、今回が初めてではないようです。

2人にとっては、ほとんど毎日のように繰り返される出来事かもしれません。

このまま家に帰れば、今日もケンカしてしまうのではないか。

小さな予感に気づいているからこそ、言いたいことをすぐ口に出すことはしません。

けれど互いに、「相手は言いたいことを我慢している」と分かるのでしょう。

言うか、黙っておくか。

口に出すならばどんな言葉を使おうか。

無言の懸念が2人を阻みます。

結末の可能性

行けよ 君が僕を通り過ぎて流れる涙
行けよ 夜が僕を通り過ぎてしまう前に

出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

家に帰る前に、「僕」は1つの結論を導き出しました。

「君」に立ち去るよう促したのです。

2人を待つ別れを決定的にする一言だったと思われます。

「君」はその言葉に涙を流しました。

激しいケンカを繰り返す中でも、色あせない愛情を持ち続けていたのでしょうか。

夜は深まっていく

決意はまだ

薄暗い街灯のライトで引っ張った影踏んで
君は何か言いた気だけど 僕はまた歩き出す

出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎