1番で出した結論は可能性の1つに過ぎず、「君」と「僕」はまだ歩き続けているようです。
外の景色は移り変わり、すっかり夜になってしまいました。
「君」はまだ言いたいことがあるようです。
「僕」はそれに気づきつつも、足を止めることはありませんでした。
蘇る思い出
淋しさは静かに夜に鳴いてる涙
それを知ってる僕ら ふわっと浮く言葉の影を鳥を見上げるように目で探す
出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
しかし、2人が「別れ」という2文字について考えていることは事実でしょう。
いくらケンカを繰り返しているとはいっても、ここまで2人で暮らしてきたのです。
付き合ったばかりの頃、同居を始めたばかりの頃には、幸せだったのではないでしょうか。
それらの思い出があるからこそ、簡単に別れを決めてしまうことができません。
2人に慣れた人が1人になったら、寂しく思わないわけがないでしょう。
それぞれ、1人になる自分の姿を想像しているところなのかもしれません。
「まだやり直せるよ」と言えれば簡単なはずです。
しかし、最近続くケンカを考えると、それを口に出すのも難しいのでしょうか。
お互いに考えていることがあるはずなのに、言い出すことはできずにいます。
同じ結論
行けよ 夜が僕を通り過ぎてしまう前に
出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
結局「僕」は、再び同じ言葉をかけました。
「僕」の出せる結論は、別れ意外になかったようです。
さらに「僕」は、最終的な結論を夜明けまでに出すようにと言外に迫っています。
このことについて、何日もかけて議論する気はないようです。
あるいは、毎晩繰り返してしまうケンカに嫌気がさしているのかもしれません。
未来に思いを馳せて
残された「僕」
離れ離れの夜半ば過ぎのひとり言には
僕は慣れるはずだ 月明かりが川を照らす
出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
結局、「君」は別れを受け容れて立ち去ってしまいました。
「僕」は真夜中の野外に1人残された形になります。
もう家に帰っても、「君」が温かく迎えてくれることはありません。
会話が減ったことが虚しくて、独り言をつぶやいてしまうこともあるかもしれません。
最初は虚しい思いになることもあるでしょう。
しかし「僕」は、そんな状況に慣れることができるのではと期待を寄せています。
心の痛みは時間の経過と共に薄れ、受け容れていくことができるようになるのでしょうか。
それにどれくらいの時間がかかるのかは、誰にも分かりません。
川が表すものとは
ここで、風景の重要な描写があります。
キーワードになるのは川です。
「僕」に見えている風景から、「僕」のもう1つの期待を読み取ることができます。
川とは、水が流れているところです。
過去にこだわらず手放すことを、「水に流す」と表現します。
過ぎたことは忘れよう、過去は過去だから。
「僕」はこれから1人の日々を過ごさなければならないことを悲観的に見てはいます。
けれど、彼の心にまったく希望がないわけではなさそうです。
「君」との思い出は、大切な経験として心の奥にしまわれるかもしれません。
後悔することも多いでしょう。
ですが、いつまでもそれにこだわることはしないのです。