行くよ 君が僕を通り過ぎた後の涙だ
行くよ 夜が僕を通り過ぎてしまう前に
出典: 涙ディライト/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
最後には、「行く」が自発的な形式で書かれています。
これまでは「君」に命令形で言葉をかける印象でした。
ここへきて、立ち去ることが「僕」自身の意思になったと分かります。
なんと、「君」のことを思って泣いているようです。
「僕」が別れを切り出した理由は、「君」を嫌いになったからではありませんでした。
むしろ、「君」のことを尊重した、「僕」なりの愛情だった可能性も考えられます。
「僕」は分かっていたのかもしれません。
もう「君」と上手くやっていくことは不可能であると。
他の選択肢として、関係を修復しようと試みることも考えたでしょう。
しかし、「僕」はそれを選びませんでした。
一度壊れかけた関係を繕うには、それなりの体力とエネルギーが必要になります。
その上修復を試みたからといって、必ず再び良い関係に戻れるとも限らないのです。
2人の繋がりをとどめようと努力するあまり、お互いの貴重な時間を無駄にするかもしれません。
「僕」は、「君」にその負担を強いたくなかったのでしょうか。
別れるという結果だけを見れば、2人の恋は悲しい結末を迎えてしまいました。
しかし、愛情がなくなったわけではありません。
むしろ、愛ゆえの別れだったのです。
新しい人生へ「行く」
それでは、「僕」はこれからどこへ向かっていくのでしょうか。
向かう先は新しい人生かもしれない、と考えることができます。
「君」と「僕」との関係において、夜という時間は憂鬱なものだったと思われます。
夜ごと繰り広げてしまうケンカ。
夕方になると、「今日もケンカになってしまうかも」と気が重くなったかもしれません。
さらに曲中で、別れを決意したのも夜間ということになってしまいました。
「僕」は憂鬱な夜に背を向けて、朝に向かって歩きだしたのです。
「夜明け」という言葉は、新しい始まりの象徴として使われることもあります。
「君」と別れた「僕」は、新しい出会い、新しい人生へと進んでいくのかもしれません。
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