人と人の相互理解
こころは こころを 求めあう ぬくもりを
手をつなぎ 歩いてゆく
出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren
Keedyのオリジナルヴァージョンには存在しない歌詞です。
ふたりの存在が離れてあっても私の心はあなたを求め続けることが歌われます。
また、ここではあらゆる人称が存在しません。
誰の心と心の問題なのかは明示されないのです。
人類一般に共通するような事柄であり、とても普遍性に満ちた歌詞であることが分かります。
人は皆、お互いを強く求め合い生きてゆく存在なのでしょう。
相互理解によって社会を平穏に保ちつつ、寄り添って生きてゆくことが描かれています。
温かみのある人間関係が望ましいことであるのはいうまでもありません。
このことは映画や原作である「命」とはまた別の命に対するテーゼでもあるでしょう。
命ある限り、私たちは必ず手を伸ばして他の誰かと触れたいと願うものです。
その熱い脈動こそがここで歌われる温もりの源泉なのでしょう。
「We」になりきる覚悟
歌詞の裏側を読み解く
We'll be wishing on the same star
Looking at the same moon
そらへと差しだした
この指のむこう
ひとつをもとめあえる
ふたりがいい
Sitting on the same star
Talking about a same dream
出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren
再びサビです。
歌詞が若干違うことにご注意ください。
「私たちは同じひとつの星に願いをかけるでしょう
そして同じ月を見つめるの
そらへと差しだした
この指のむこう
ひとつをもとめあえる
ふたりがいい
同じひとつの星のもとにしゃがみこんで
同じひとつの夢を語り合うの」
先ほども指摘いたしたようにKeedyのオリジナルヴァージョンで頻出する「I」「You」が出てきません。
分かれたパーソナリティ同士ではなく、本当にひとつになってしまう「We」だけが残されます。
どこまでも相手と同化してしまいたいほどに愛し合う情景が強調されるのです。
どこか切迫した想いが透けてくるような気がします。
誓い合わないと離れ離れになってしまわないかという、心の裏側の不安にこそ裏打ちされたもの。
歌詞は書かれている内容だけではなく、なぜ違う見方に触れていないのかを考察するとより面白いです。
実際はこのふたりには固有の距離感が横たわっているのでしょう。
だからこそふたりでひとつであり続けることを星に願わずにはいられないのです。
このふたりの幼さも滲む愛に幸福が訪れるといい。
いつか私たちリスナーも星に願いをかけるような気持ちになります。
「Wishing On The Same Star」に教えてもらった
ふたりの最初の約束を大事に
We'll be wishing on the same star
Looking at the same moon
空を見上げて優しい気持ち思い出すから
ひとつに結ばれない
そんなときも
Wishing on the same star
Looking at the same moon
出典: Wishing On The Same Star/作詞: Diane Warren kenko-p 作曲: Diane Warren
駆け足でたどってきましたが、もうクライマックスです。
切実な願いが明かされる場面なので注意してみていきましょう。
「私たちは同じひとつの星に願いをかけるの
同じ月を見上げながら
空を見上げて優しい気持ち思い出すから
ひとつに結ばれない
そんなときも
同じ星に願いを託して
同じ月を見上げるわ」
大事な箇所に気付いたでしょうか。
語り手本人がひとつになれないときもあると認めるのです。
いつも一緒に時間を過ごすことはできない。
あるいは何かの行き違いで意見が別れたりすることもあるでしょう。
人と人の付き合いなのですから、そうしたすれ違いはむしろ大前提なのです。
語り手の私はそのことを最後になって認めます。
クライマックスに至って「命」という作品の中での恋人との死別という事柄も念頭に置かれるのです。
しかしどんなにすれ違いが生じていても、いつもあの星に願いをかけましょうという約束は有効でしょう。
ですからふたりにすきま風が吹いたときにこそ、お互いが同じ星に祈りを捧げることが大事です。
星空を眺めるとその広大さに心が癒やされます。
すこし温もりを取り戻した心でもう一度相手と手を繋ぐ気持ちが芽生えればやり直せるのです。
ふたりの原点を再確認するような想い。
これこそが同じ星に願いをかけるという約束の本当の存在価値が輝く瞬間を呼び込みます。
ふたりがひとつになるために
今、中々恋愛がうまくいっていない方はこの曲を一緒に聴いてみてはいかがでしょうか。
そしていつでも同じひとつの星に願いをかける約束を交わしましょう。
せっかくふたりで共に生きてゆくことを決めたのですから、こうした永遠の約束をしてみるのもいい。
安室奈美恵が教えてくれた恋愛を成就させるためのおまじないのようなもの。
「Wishing On The Same Star」
私たちは同じ惑星にいて、同じ月を抱いています。
その事自体がすでに奇跡でしょう。
この惑星の中でひとりとひとりが巡り合うのはさらに特殊な奇跡です。
巡り合ったのならば大切な約束を交わして、いつまでもその約束を忘れずにいたいもの。
恋愛における究極の悦び。
それはふたりがひとつになれることです。
「Wishing On The Same Star」はそのことを思い出させてくれる名曲に違いありません。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。