「Flyte Tyme」で目を啓く

SOUL'd OUT【Flyte Tyme】歌詞を徹底解説!ステージは宇宙?無重力で見つけた答え!の画像

2003年4月9日発表、SOUL’d OUTの通算2作目のシングルFlyte Tyme」。

タイトルとおりに宇宙遊泳がテーマ。

宇宙空間を漂う人工衛星からインスパイアを受けた楽曲になっています。

日本科学未来館で撮影された公式MVがこの曲のイメージを的確に伝えているのです。

いつものようにDiggy-MO'とBro.Hiによる合作での作詞作曲になっています。

気の合うブラザーたちとともに空へと飛び立つイメージが雄大です。

SOUL’d OUTのシングルでは一番の売上を誇る代表曲でもあります。

彼らをこの楽曲で知った方も多いはずです。

遠い宇宙から地上における私たちの営みを見つめる目は中々シビアなものになっています。

それでも信じあう仲間たちとは高みを目指そうと歌うのです。

登場するのはSOUL’d OUTの3人のメンバー

そして遠景には私たちが暮らすこの世界があります。

SOUL’d OUTの3人はなぜ宇宙を目指したのでしょうか。

歌詞からこの設定についての真摯な真意を探りたいと思います。

仲間を信じ合えることの素晴らしさに目を啓かされるでしょう。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

考えるな感じろ

WA! シュビドゥビドゥバ FEEL ME TONIGHT ×3
WA! シュビドゥビドゥバ FEEL ME TONIGHT ×3
C'MON Y'ALL
AND WE CAN FEEL SO GOOD TOGETHER

出典: Flyte Tyme/作詞:Diggy-MO',Bro.Hi 作曲:Diggy-MO',Bro.Hi

歌い出しの歌詞です。

この箇所はお聴きいただいたとおりにコーラスでありサビとしても機能します。

楽曲の始まりにサビを置いてみたのです。

多くのHIP HOPの特徴的な構造を踏襲しています。

まだ宇宙という設定は見えてきません。

しかしこのサビは楽曲全体の方向性を示しているのです。

考えるな感じろの精神で物事の本質に迫ってゆくことなどSOUL’d OUTの根本思想が見え隠れします。

皆、ここに集まって今夜を楽しもうと呼びかけているのです。

おそらくこの時点で実際のライブのステージを想定して書いた歌詞だと推察できるでしょう。

ここでの「WE」とはSOUL’d OUTとそのクルー、リスナーたちを指すのです。

今夜を楽しめる感性がオレたちにはあるんだよという想いを託しています。

歌いやすいメロディーですのでライブではファンが合唱できたはずです。

ライブではとにかくリラックスしたり、逆に興奮したり、とにかく楽しめることが大事でしょう。

SOUL’d OUTはリスナーとの絆を何よりも大事に考えていたのです。

ライブ会場で盛り上がることができる楽曲をシングルとしてリリースしました。

彼らの思惑は多くの人の賛同を獲てシングル・チャートのTOP10に初めて飛び込むのです。

この機会に当時発表された公式MVをご覧いただきましょう。

こちらのページにリンクを貼りましたのでクリックして鑑賞してみてください。

精神の解放のために

まずは行動することが大事

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YO まずはまっすぐにとんでけよFLY
向かい風焦って面食らってもう一回
遠くひらけた世界はばたきたい
FREE MY MIND SATELLITEももう近い
にっちもさっちもいかなくなって そう途方にくれた日々も
今じゃMEMORY YO KEEP IT REAL
いつでも仲間達と刻む名前を
Diggy-MO' Diggy Diggy Diggy Diggy

出典: Flyte Tyme/作詞:Diggy-MO',Bro.Hi 作曲:Diggy-MO',Bro.Hi

何をするにおいてもまずは行動することが大事だという考えがこの曲のベースになっています。

この思想こそがSOUL’d OUTの基本姿勢なのでしょう。

HIP HOPはニューヨークという街の各地域で同時多発的に勃興した音楽です。

ライムにはゴスペルの教説などが色濃く影響を与えています。

時代を画するまったく新しい音楽の誕生のように思われていましたが実情は違うのです。

荒んだ自分たちの生活を律して立ち直ってゆこうという彼らなりの倫理観をビートに乗せました。

ブラック・コンテンポラリーや1970年代のポップスをサンプリングしてバックビートにします。

この破綻しそうな現実から抜け出そうとする意志の力がHIP HOPの骨になっているのです。

SOUL’d OUTもこうした伝統をそのままに受け継いだ歌詞を紡ぎます。

チャラチャラしたパーティーの話だけをしている訳ではないのです。

人生をどう切り拓いてゆくか彼らなりの想いをライムにしました。

その内容は闇雲に飛び出してゆくような破天荒な意志からくるものでもあります。

そうでもしなければ精神の解放は叶わないだろうという思想がバックにあるのです。

何よりも囚われた精神を解放して自分の人生を切り拓いて社会へ働きかけることを推奨します。

2003年といえば今よりはまだ楽観的なムードがありました。

2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロによって私たちの世界観は薄暗くなります。

しかしその暗がりがさらに深刻になってしまって、視界が利かなくなった現在よりはまだマシでした。

気力さえあれば人生も世界も変えられるという思想がまだ効力を発揮していたのです。

精神を解放して飛んで行く先に人工衛星まで近付けると歌います。

意志の力でどこまでも行けるという発想は若さの特権かもしれません。

若いリスナーにはこうした意志をいつでも持っていて欲しいと願います。

近年の若い人たちは格差社会の中でどうやってサヴァイヴするかという課題に一生懸命です。

格差というものが意志の力だけではどうにもならない現実を追認しがちでしょう。

時代の風は変わったのでしょうか。

サークルを大事にしてゆく

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一方でSOUL’d OUTは仲間(クルー)を大切にします。

陽キャ・陰キャという言葉がなかった時代です。

皆、それぞれのサークルを大切にしながら生きていました。

SOUL'd OUTにとって仲間との絆は至上の価値があったのかもしれません。

2014年に一身上の都合により脱退を申し出たトラックマスターのShinnosuke。

彼の意志を汲んで新たなメンバーを加えて存続するという道ではなく解散を選びました。

SOUL’d OUTの3人の絆はそれだけ強いものであったのでしょう。

このセカンド・シングルの時点ですでに友情の大切さを刻み続けます。

メンバー3人とファンとの繋がりも大切なものとして描かれているのです。

「Flyte Tyme」はさぞかしステージ映えする楽曲だったのでしょう。

ステージを媒介にしてともに宇宙空間まで飛翔するようなイメージをこの楽曲から感じます。

1980年代のアメリカ合衆国のポップス・ロック界は「We are the world」という観念を生みました。

しかしニューヨークのギャングスターたちはラップで仲間だけとの絆を大切にしていました。

やがて時代は変わって覇権を握ったのはニューヨーク生まれのHIP HOPです。

ここから誰もが皆、自分とその周りのサークルという現実的な囲いを大切にしだします。

愛の形というものがHIP HOP文化の普及によって少しずつ変わってきたのでしょう。

現実世界への批判精神

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it's the city of desire 眼下に見下ろせばBro.Hi inspire.
FIRE!!旅立てFrom ガイア to astral
See A-yo my man Diggy-MO' tell me (What?)
Tell again (Ai) so 騒いだまんま Fly high
Try Ah まるで Rocket ダミーじゃないぜ Are you ready?
この若さの呪縛 起爆剤でもってぶっとばすまで Yeah

出典: Flyte Tyme/作詞:Diggy-MO',Bro.Hi 作曲:Diggy-MO',Bro.Hi

このラインから現実社会への批判を感じ取ることができます。

宇宙遊泳中の視点から地球の各社会を見つめてみると何てちっぽけなものだという思いになるでしょう。

人類は色々の国々と街に分かれて暮らしています。

ときにこの違いが紛争の種にさえなるのです。

違う国同士での戦いだけではありません。

同じ街の中でいがみ合い足を引っ張り合いながら私たちは生きているのです。

街にはこうした欲望が渦巻いているとSOUL’d OUTは歌います。

資本主義社会の原動力は欲望・欲動です。

飽くなき欲望・欲動に煽られて競争社会を作り上げているのでしょう。

互いの足の引っ張り合いに汲々として生きている私たち。

しかし宇宙からこうした姿を見下ろすと愚かさが分かるとSOUL’d OUTは思っています。

だからこそ地球から宇宙への飛翔が大事になるのです。

今いる場所からもっと巨視的な視点を持てる場所への移動を推奨しています。

ロケットに乗って宇宙をステージにしてオレたちは好きなことをやり続けると宣言するのです。

彼らはそうすることで若いということが足枷になって自由になれない社会からの離脱を謀ります。

今はさらに若者の貧困化が大問題になっているので、このラインは若いリスナーに訴えるものが大きいはず。

若い力がひとつになれば現状を打破できるはずです。

しかしこの国ではそうした風潮を嫌います。

政治の腐敗が進行してもそれをよしとするのですから、おそらく教育の失敗なのでしょう。

隷属することになれてしまって抗うことの価値を見出だせなくなる社会ができあがりました。

SOUL’d OUTはこうした現状を吹き飛ばすことを画策していたのです。

この歌がヒットしたようにこうした歌への需要はあったようです。

しかし現実までは変えられませんでした。

それでも私たちは極限状態にあっても祈りを忘れる訳にはいきません。

「見るまえに跳べ」