「Song 4 u」の大きな愛
2012年11月8日発表、浜崎あゆみの通算3作目のミニ・アルバム「LOVE」。
このミニ・アルバムのオープニング・ナンバー「Song 4 u」について解説します。
ピアノの響きと力強いビートのコントラストが印象的な楽曲。
とても大きな愛を歌い上げたダイナミックなラブバラードです。
リスナーに直接語りかけるような優しさに魅了されます。
浜崎あゆみは語り手の「僕」に憑依して「君」に大きな愛とその想いを伝えるのです。
誰かと一緒にいられることは奇跡なのだと思い返します。
「Song 4 u」から普段支えてくれている人々への愛を感じ取っていただけたら嬉しいです。
この曲の歌詞を紐解きながら愛の力について今一度考えてみましょう。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
言葉を伝える相手
ピアノの音色に耳を澄ます
また明日ねって
よく考えてなくて
笑顔で言ったそのすぐあと
また明日ねって
言える君が
居てくれるって気付く
出典: Song 4 u/作詞:ayumi hamasaki 作曲:HINATAspring Yuta Nakano
荘厳なピアノの音色をバックトラックにして浜崎あゆみの美声が響き渡ります。
ストリングスの演奏も曲のダイナミックさの演出に貢献しているのです。
いつしか鳴り始めたパーカッションも効果的に響くでしょう。
この曲には様々なバージョンが存在します。
中にはオーケストラ・バージョンもありますので色々な表情を楽しんでみてください。
会話をできる奇跡に覚醒める
歌詞では普段、何気なく使っている言葉を口にしたときに伝える相手がいることの大切さを描きます。
語り手の「僕」が交際中の「君」に声をかけられることの幸せに気付くのです。
日常会話というものはそのあまりの普通さの中でありがたさが分からなくなることもあります。
浜崎あゆみは難しい表現を一切使わないでこうした複雑な事情を伝えきるのです。
彼女の歌が女子高生たちの共感を獲たのは言葉の使い方の優しさ・易しさにあるのかもしれません。
常に若さがあふれる恋模様をうたってくれるのですから貴重な存在です。
交際が続くうちに会話ができることは当たり前になってしまいます。
しかし交際以前はお互いに話すことすら難しく思えたでしょう。
会話を交わせること自体に奇跡を見つけられる心の在り方が素敵です。
いつもそばにいてくれる「君」への感謝にあふれています。
人は迷うこともある
バックトラックの充実
もしもね自分が
自分の事を
疑ってしまったなら
その瞬間にほら
月も太陽も輝けないね
出典: Song 4 u/作詞:ayumi hamasaki 作曲:HINATAspring Yuta Nakano
浜崎あゆみの美声に酔っているうちにバックトラックが充実してゆきます。
視点が「君」から「僕」の内面へと移動しますので心の声に耳を澄ませましょう。
今の「僕」を支えているのは「君」です。
「僕」の内側には常に「君」が存在することを踏まえて解釈してゆきましょう。
ふたりでシェアしながら生きる
私たちは自分の意志を自明のものと考えています。
ただしこの傾向は自分が健康なときにだけ当て嵌まるものです。
私たちはどこか調子が悪くなると自分の意志に疑問を持ち出します。
周囲のことも自分のことも信じられない。
羅針盤を失ったまま航海しているような状態で日々の生活を送ることは危険でしょう。
自分の指針は自分だけなのに自信が持てない状態では輝こうにも輝けません。
自分自身が暗闇に飲まれてしまって光をどこに見出すのかも分からなくなってしまう。
人生は好調な時期だけではありません。
メンタルのバランスを崩すことは病人でなくてもありうることなのです。
若い「僕」はこうした状態を「もしも」という仮定の話として語ります。
しかしこの「もしも」は人生のどこかでいつか出会うものでしょう。
進路に迷ったり、思うようにいかない日々は誰にだってあるものです。
こうした日々から脱却するには誰かの助力を得ないと難しいものでしょう。
そんなときに「僕」のそばに「君」がいてくれることの意味深さを感じられるはずです。
私たちは生まれながらにして社会性を帯びた存在であります。
誰かの助力なくして生まれることはできません。
生まれる瞬間だけではなく一人前の人間になるために多くの人の助力を得ます。
そして思春期には生涯をともにすることを夢見るパートナーを求めだすのです。
ひとりで生きてゆくことは難しいことでしょう。
その分の苦悩をふたりでシェアできるのならば生きてゆくことに光が灯ります。
浜崎あゆみの「Song 4 u」のテーマはこの辺りの事情に寄り添うのです。