ありきたりな日常はきっかけがあれば簡単に変わります。
主人公はそのきっかけと出逢いました。
恋とは唐突に訪れるもの。
目があっただけで触れ合っただけで巻き起こるものです。
今まで暮らしていた穏やかな世界から激しい世界へと共に行こうと誘っている「君」。
激しい世界に突き落とそうとしているのかもしれません。
きっとそれはあらがうこともできる手です。
その手を受け取ってしまえばこれまでの世界がなくなってしまいます。
だとしても主人公がその手を拒むことはないでしょう。
「けど」と今までの日常に疑問を覚え心揺らぐほどの出来事を願っていた主人公には。
その手はまさしく待ちかねたものだったのですから。
トラブルだらけだからこそ面白い
誰かと共に過ごすと面倒事も増えます。
自分1人でいる以上に気楽なことはないのです。
けれど1人だとできることにも限界があります。
誰かといることは億劫ですがそうして心が動くからこそ楽しいのです。
思い通りにいかないからこそ苦しいけれど面白い。
大層難儀な話ですが。
人間関係はトラブルの元
傷つけたり傷ついたり
我慢したりこじれたり
人が絡めば問題も
起こったりもするけど
出典: Fall/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
人との関わりを避ける理由の1つがトラブルの忌避でしょう。
それぞれ違う存在でありそれぞれに事情や意思、感情があります。
違うものを持つ同士がトラブルを起こすのは必然といえば必然です。
かつて心の平安を求めて出家をした人々がいました。
ストレスを形つくるのは人との関わりでそれは何百年たっても変わらないものです。
主人公は、人との関わりはトラブルの元と認識しています。
人と関わらなければ問題は生じず、関われば問題が起こる。
しかしここでも「でも」が出ます。
トラブルは生じるけれども人との関わりはそれだけではないのです。
主人公は同時にそのようにも認識しています。
誰でもよいわけではなくて
誰かといることでしか
見えないものがあるなら
その相手は君しかいない
握った手を離さない
出典: Fall/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
人といて生じるものはトラブルだけではありません。
1人では動かせない重い石も、2人ならば動かせます。
人数がいることでしかできない仕事もあるのです。
そして誰かといることでしか味わえない感情もあります。
人と関わることは心を揺さぶられることです。
それは苦しくもありますが同時に楽しいものでもあります。
今までにない心の動きは喜びも悲しみも一緒に与えてくれますから。
ただ、四六時中心を動かしているのは疲れますし誰でもいいわけではありません。
心が動かされる理由は1人だけでいいのです。
自分が決めた1人だけで。
人は変わっていくもの
出逢いで環境で経験で、人は変わっていきます。
良い方向に変わることもあれば悪い方向に変わることもあります。
今までの自分では考えられなかったことさえしてしまうのです。
一緒にいたいから
まだ眠る顔を見ながら
会社に入れた初めての
ずる休みの電話から
君と落ちていく
IT’S TIME TO FALL!
出典: Fall/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
嘘をつくのはいけないことです。
体調が良いのに会社を休むのもあまりいいことではないでしょう。
少なくとも主人公はそう思っているようです。
その会社を休む理由は愛しい人とまだ一緒に居たいという欲望からきてるもの。
だからこそより会社に対し申し訳なく思っているのかもしれません。
しかしそれ以上に訴えるものがあります。
きっと彼女はこのままどうしようもなくなっていきたいのです。
2人で一緒に戻れないところまで落ちていきたいから。
もう戻れない
罪悪感飲み込むほどの
切なさでついた嘘が
絶対変わらないと思ってた
この自分を変えていく
出典: Fall/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
この嘘は会社についたズル休みの嘘でしょう。
冒頭で仕事をこなしていたとありますし主人公は真面目な人物です。
自分の都合で会社を休んだこともないのではないでしょうか。
そんな自分が会社を休んでまで愛しい人の側に居る。
出会う前の主人公では想像もできなかったことなのでしょう。
嘘をついたことへの罪悪感、しかしそれ以上に騒ぐ心。
切なくて寂しくてそれ以上に幸福です。
今までに味わったことのないほどの感情の揺らぎを知ってしまったら。
人は元に戻ることなどできないのです。
それが悪いことであれ良いことであれ。