音楽好き必聴の作品『CALL』
シンガーソングライター澤部渡のプロジェクト「スカート」。
彼が作り上げた楽曲はポップス・フリークにとってなくてはならない存在として知られているのです。
これまでにスカートが作り上げてきた楽曲は様々なシーンで私たちの記憶に残されています。
映画「PARKS」の劇中で流れた『離れて暮らす二人のために』。
そして「高崎グラフィティ。」のために書き下ろされた『遠い春』。
これらの有名曲はスカートの作る美しいメロディーの断片でしかありません。
そこで今回ピックアップするのはファンなら誰もが知っている名曲です。
その曲の名は『CALL』。
短い歌詞の中に深淵な世界観が広がるスカートの代表曲の1つです。
著名レーベルからリリースされた作品!
『CALL』は2016年に発表された同名アルバムのリード曲です。
それまで完全自主制作で活動してきたスカート。
本作はとある有名レーベルからのリリースということで話題となりました。
そのレーベルが「カクバリズム」です。
所属アーティストはYOUR SONG IS GOOD、二階堂和美など多岐に渡るカクバリズム。
星野源が初のソロアルバムをリリースする際にも選択した知る人ぞ知るレーベルです。
今回紹介する『CALL』はそんな恵まれた環境の中でスカートが自由に音楽を謳歌した作品として知られています。
歌詞を徹底解釈!
12曲入り37分と最小限に抑制されたアルバム『CALL』。
その中で澤部渡はひたむきに“歌”について言及しています。
そのパーソナルな表現の極北ともいえるのがタイトル曲「CALL」の歌詞だといえるでしょう。
今回はその深淵な歌詞の魅力を徹底解釈してみようと思います。
砂のついた指
指で描くのは大切な人の名前
砂のついた 指ほどいて
あなたのこと 考えてた
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
澤部渡の書く歌詞に常に付きまとうもの。
それはいいようのない哀しみと孤独です。
『CALL』の歌詞はこのように始まります。
1人夜のとばりで追想をする主人公。
仮に主人公を男性とみなしましょう。
彼の指には砂が付着しており、そのままの状態で指を組んでいたことが分かります。
指に砂が付くのは地面に何かを書いていたからです。
砂浜で1人佇みながら書くものとは何でしょう?
それは大切な人の名前です。
『CALL』に登場する主人公、そして大切な人の正体は後に明らかにされます。
主人公が冒頭で何某かの名前を砂浜に書いていることから分かるのは大切な人の不在です。
このように聴き手に想像の余地を残すのは後世に残る名曲の条件の1つだといえます。
主人公が辿り着いた場所とは?
迷いながら たどり着いた
ここでは もう意味がなくて
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
“call”という英単語には“呼びかける”という意味が含まれています。
主人公は大切な人の呼びかけに応じるように現在の場所にやって来たのです。
しかしここで疑問が残ります。
呼びかけに応じて主人公を導いた人の不在が明らかなことです。
“call”には“電話をかける”という意味も含まれています。
しかし後に続く歌詞を見ても主人公が電話で“ここにおいでよ”と導かれた形跡は残されていないのです。
仮に呼び出されて行ったとしても肝心な待ち人がいないのは釈然としません。
そこで仮説を立ててみましょう。
彼がやって来たのは“場所”ではなく“境地・心情”だと。