小さな星も 灯台の灯も
のみこまれていく
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
深い闇が夜空を包んでいきます。
明かりを照らすのは輝く星と灯台の光のみです。
これらの記号は主人公の心情を表しています。
星は“希望”、そして“灯台”は道標です。
主人公はようやく辿り着いた現在の心境を無意味だと吐き捨てます。
これまで築き上げてきた経験・価値観が通用しなくなった状態。
それを人は挫折と呼びます。
何かのきっかけで挫折を経験したことで主人公は未来への希望を持てない状態に陥ってしまったのです。
歌の中で...
置き去りにされた心
歌の中で 夜が更けて
置き去りなんだと気づいた
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
この時期の澤部渡の歌詞の特徴が歌に関する記述です。
アルバム『CALL』はカクバリズムのバックアップにより歌を作ることの喜びに満ちた作品です。
しかしここで澤部渡は美しいフレーズと共に歌の中に孤独を見ています。
これまでの歌詞もすべては歌の中の出来事であったことが明らかになる瞬間です。
この歌詞が登場するのは約3分という尺の中でコード進行・歌声の抑揚がもっとも盛り上がった後。
さらにこの後ピアノの旋律と共にもっとも抑制されたパートが続きます。
それだけに彼の抱える孤独を一際強く感じてしまうのです。
いつか会える、その日まで...
あの頃のように
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
一瞬の静寂を切り裂くように繋がれるフレーズを見てみましょう。
主人公は、澤部渡は何を追想しているのでしょう?
ここまでの歌詞から考察できること。
それは初めて歌を作る喜びを知ったときのことです。
人格を持ってしまった歌
月の光に 手をふりあおう
いつか会う日まで おやすみ
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
過去に作られはしたものの日の目を見ることのなかったおびただしい数の歌たちが存在したことでしょう。
それらの歌はスカートにとって、澤部渡にとって大切な存在として記憶されていました。
歌に導かれ、歌に孤独を見て、歌を歌うことでそれらの過去や絶望と向き合うこと。
それが澤部渡にとっての幸福なのでしょう。
冒頭、砂浜に書いていたのはそれらの歌のタイトルなのかもしれません。
再び輝き始めた月の明かりを美しいと感じた彼は歌に問いかけます。
またどこかで会えるよ、と。
好きな歌を...
背負いなれた 重い荷物
ほどいて また歩き出した
出典: CALL/作詞:澤部渡 作曲:澤部渡
肩に背負った荷物を降ろすのは過去の呪縛からの解放を表すクリシェのようなものです。
自由になったスカートはどこに向かうのでしょう?