年齢は分かりませんが、「ぼく」という子供目線で描かれる1999年のクリスマス。
主人公は「この年はいつもと何かが違う」ということを子供心に感じていました。
そう感じるのは決して子供だけとは限りません。
大人もまた、クリスマスに潜む「知らない神様」を感じている人がいます。
ぬいぐるみとおしゃべり
ぼくはどうしたらいい?
眠れない夜が増え
テディベアとお話できそうだよ
出典: 1999/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
結局「ぼく」はこの日も眠ることができませんでした。
20世紀の終わりが近づくごとに、眠れない夜が増えているようです。
世界滅亡の恐怖か、街を変えてしまった神様のことを考えているのでしょうか。
サンタクロースからプレゼントをもらっている場合ではなさそうです。
眠れないならどうするかといっても、特にすることはありません。
というより、何をすれば良いのか分からないのでしょう。
現在ならスマートフォンでもいじるのでしょうが、当時はそのようなものはないですから。
眠ることもできず、主人公はクマのぬいぐるみと話でもしようかというほどに時間を持て余しています。
イルミネーション
街は光が溢れ
子供達のあしおと
カウントダウンがはじまった ほら
出典: 1999/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
クリスマスは子供にとって楽しみな行事です。
プレゼントをもらったりケーキを食べたりできるのですから。
街もイルミネーションの光で、幻想的な雰囲気に一変します。
これも「知らない神様」の仕業でしょうか。
クリスマスプレゼントを買ってもらったり、友達と交換したりするために子供が外へ飛び出したのでしょう。
今まで主人公だった「ぼく」も子供ですから、子供目線で「子供達」というのはどこか不可思議ですね。
クリスマスがやってくれば、1999年の終わりもいよいよ目前に迫ります。
つまり、21世紀へのカウントダウンが始まるのです。
「知らない神様」が変えてしまった人
それは世紀末のクリスマスイブ
僕が愛していたあのひとを
知らない神様が変えてしまった
出典: 1999/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
突然主人公の一人称が「ぼく」から漢字の「僕」になりました。
歌詞を見ても、幼い子供ではなくもう少し上の年齢の人のように思えます。
主人公が別の人に変わったのだとしたら、その前のフレーズから既に変わっていたのでしょう。
主人公が大人なのだとしたら、「子供達」と表現するのも不可思議ではなくなります。
そして次に続く「あのひと」とは誰なのでしょうか。
まず考えられるのが恋人です。
クリスマスといえばカップルで過ごす日というイメージがあります。
ところが、彼は恋人に振られてしまったのでしょうか。
相手の心を変えてしまったのもまた、「知らない神様」です。
最初に出てきた神様と同じかは定かではありません。
しかし自分には見えないところで身近なものに変化が起こると、少し不気味に感じるものです。
そのいいようのない不可思議さを、「神様の仕業」としているように感じられます。
20世紀が終わっていく
クリスマスの訪れと同時に、20世紀の終わりがじりじりと近づきつつある世界。
新たな時代になることは、ある人はめでたいと感じるかもしれません。
しかしながら、この歌詞のように複雑に感じる人もいます。
色々な思いと共に、1999年は終わりに向かっているのです。
どうして変えてしまったの?
それは世紀末のクリスマスイブ
僕が愛していたあのひとを
知らない神様が変えてしまった どうしてよ
出典: 1999/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
場面は続けて恋人が変わってしまった時の様子ですが、最後に言葉が付け足されています。
これだけで、聴いている方まで一気に切ない気持ちさせてくるのです。
「どうして」という言葉が主人公の悲痛な思いを感じさせますね。
離れていく恋人の背中を眺めながら、拳を握っている姿が目に浮かびます。
面白いのが相手に対する「何故変わったのか」ではなく、神様に「何故変えたのか」です。
多くの場合は前者で相手を責めそうですが、彼が矛先を向けたのは神様でした。
恋人を変えてしまった「神様」への怒りでしょうか。
どうして恋人が変わってしまったのかは、主人公目線なので分かりません。
実際は様々な理由があるでしょうが、「僕」からすれば神様のせいにしか思えなかったようです。
突然のことで、こうなる心当たりが自分にはなかったのでしょう。
大きなショックを受けているのがよく分かります。