いきものがかり「ふたり」
大切な人を強く想うがゆえの切なさ・もどかしさを歌う
2009年4月から放映されたTBS系ドラマ「ぼくの妹」の主題歌として書き下ろされた13枚目シングル「ふたり」。
このドラマには、幼い頃に両親を亡くし、様々な困難に苦しみながらもお互いをたった一人の家族として支え合い生きてきた兄妹の姿が描かれていました。
作詞作曲を手掛けたメンバーの水野良樹さんは、主人公である兄妹が人を強く想うときの切なさや、それがすれ違ってしまうもどかしさを表現することで、ドラマの世界観をより広げるものにしたかったと語っています。
懐かしさやもの悲しさの漂う曲調が、否応なく心にその切なさ・もどかしさを運んできますよね。
「ふたり」の歌詞を紐解く
では、深く歌詞を紐解いていきたいと思います。
「ふたり」は、「ぼく」目線の「きみ」への想いが綴られた歌詞となっています。
それはドラマのような兄妹だけではなく、幼なじみのような存在の二人など、ずっと近くで見守ってきた大切なひとへの想いであると思われます。
イメージがぐんと広がり、親近感がわいてきますね。
「ぼく」の「きみ」への想い
抱きしめても 抱きしめても 届かない想いがあるなら
言葉にできないその痛みは ぼくが今 受け止めるよ
出典: http://j-lyric.net/artist/a04c814/l017b88.html
曲の最も強いメッセージであろう冒頭やサビで繰り返されるこのフレーズにおいても、「抱きしめても」は誰かを抱きしめるという動作だけでなく、「きみ」が誰かに対して必死に何かをしようとしていること・心を砕いている様に置き換えられます。
すると、「届かない想いがあるなら」は、どんなに想いが強くても空回りしたりうまくいかなかったりすること、「言葉にできないその痛み」は、そんなときに自分が嫌になってしまうくらい傷ついてしまうこととも考えられ、その痛みは「ぼく」が受け止めるよ、「きみ」が今どんな状況であっても味方だよ、大丈夫だよという、人が人を大切に思う気持ち・深い愛情を伝えるメッセージであると解釈できます。
大切だからこそ苦しいこともある
先の解釈の通り、「ぼく」は「きみ」を大切に想っているわけで、それ自体はとても素晴らしいのですが、素晴らしいだけでは済まないのが人間ですよね。
その想いの強さゆえに苦しくなってしまうこともあります。そんな「ぼく」の気持ちもこれらのフレーズで隠すことなく表されています。
こんなにもそばにいるのに どうしてかな 切なくなるときがあるよ
出典: http://j-lyric.net/artist/a04c814/l017b88.html
どうして 素直になれないんだろう
隣にいて欲しいってさ 言えるのなら 寂しさも温もりを持つのに
出典: http://j-lyric.net/artist/a04c814/l017b88.html
優しすぎるんだ 小さな嘘もつけないままだよ
はぐれそうな手を きみは 握り返す
出典: http://j-lyric.net/artist/a04c814/l017b88.html
自分の無力感だったり、「ぼく」だけを頼っていると思っていた「きみ」の成長への焦燥感だったり。
愛情をうまく伝えられないいじらしさや素直になれないもどかしさ。「きみ」の幸せを考えたいけれど、親とも恋人とも違う離れたくないという気持ち。
なんだか情けなくなってしまうような気持ちたちばかりで口に出して言えそうになく、切なすぎます。
けれどそういう気持ちも実は「きみ」にもちゃんと伝わっているよと「はぐれそうな手をきみは握り返す」のフレーズが言ってくれているようで救われます。
離さないで 離さないで ふたりはつながっているから
出典: http://j-lyric.net/artist/a04c814/l017b88.html
この曲全体を通しての、どんなことがあっても、物理的な距離が離れていても「ぼく」がついていることを忘れないでねというメッセージは、まるで受け取り手であるわたしたちへのエールのようですね。