人は誰かに成ることはできない
人はその人でしかありません。
当たり前のことをと思うかもしれませんが、意外と忘れやすいことです。
上京して変わってしまったと嘆く歌を耳にします。
確かに人は環境、時間、様々な要因で変わっていきます。
しかし、どんなに変わってもその人はその人でしかないのです。
側に居ないから気にかける
あの頃いつも側に居た 嫌いな好きな その人達を
今ほど大切に思えてましたか ここへ来てから気が付いたんだよ
出典: 東京賛歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
当たり前のことに、人は注意を払いません。
それが当たり前で無くなった時に初めて人はそれを意識します。
いつも近くにいる人に対しては近くにいることが当然だと思うでしょう。
しかし一度離れて暮らしてみると決してそうではないのだと気づきます。
料理するたび掃除するたび思い出す人がいます。
そうしてどんなに助けられてきたかを知るのでしょう。
そんなことに気づくことができる、それこそを成長と呼ぶのかもしれません。
離れたからこそ気づくことがあるのです。
続いていく人生を生きている
人はどこに居ても その人のままだよ
離れた誰かも 離れた自分も 生きてるんだよ
出典: 東京賛歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
冒頭で引用した部分から、ここは重要な部分だと気づきます。
「人はそう簡単には変わらない」。
最も伝えたいメッセージにあたるのがこの部分ですから。
都会に染まって変わってしまった、そんな風に嘆く声を時折聞きます。
しかし、三つ子の魂百まで、人はそこまで簡単に変われるものでしょうか。
例え変わったとしてもその人自身を辞めることはできません。
変わらないものはありますし思い出だって消えることはないでしょう。
目の前にいないからといって存在がなくなるわけでもありません。
新しい存在にとって代わられるわけではないのです。
今までの生活の地続きに確かに立っています。
そうして新しい自分を知ってそれでも自分は自分でしかないと気づくのです。
変わるようで変わらない
どこに住んでいようと人は変わっていきます。
どんな場所でもトラブルはあるでしょう。
特殊な場所なんて、本当はないのです。
東京も育った場所も人がいることは変わりません。
何処もたいして変わらない
嘘が多いのはどこでもだろう 星が見えたって どうせ飽きるだろう
すれ違う中には似た理由で ここへ来た人も少なくないだろう
出典: 東京賛歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
噓も方便、人が生きる中で嘘がない世界はありません。
東京ばかり人が冷たいだの嘘が多いだの言われます。
けれどもそれはどこも変わりません。
冷たい人も自分勝手な人も優しい人も前向きな人も。
そういう人は都会だとか、地方だとか関係なくいるもの。
人間関係が希薄でも濃厚でもどちらにせよ問題は起こります。
反対にどんな場所でも親切な人はいます。
見知らぬ他人に親切にしてもらえたという話も結構聞きます。
東京は緑が少ないともいわれます。
ですがちょっと遠出をすれば自然のある場所に行くことは可能です。
自然が豊かなところは虫が多かったり、夜は暗かったりとそれはそれで大変。
例え天体観測ができなくたって日々の生活に影響があるわけでもなく。
それよりもここだからこそ叶えられるものの方が大切だったりします。
そのために誰もかれもが東京で生きているのですから。
今までの自分に嘘はない
何をしに来たんだっけ 誰が決めたんだっけ
地面も空も 繋がってるんだよ 未来と過去も
出典: 東京賛歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
人は現在の中に立っています。
そしてその現在は現在だけで成り立っているのではありません。
現在の後ろには過去があり、現在の先には未来があります。
それは人についても同じです。
人は今だけで成り立っているのでありません。
年を重ねた分生きてきた重みがあります。
東京に来るまでの歩みも人生の一部。
東京に来てからの生活だって自身を形作るものです。
そしてまだ知らないこれからの自分も間違いなく自分でしかありません。
地面と空が繋がっているように、故郷と東京の道が繋がっているように。
上京する前の自分とした後の自分は繋がっています。
東京に来ると決めたことも、東京に不満をぶつけたことも。
かつて大切な人と過ごしたことも離れて思い返すことも。
何一つ嘘はありません。