信号は青なのかそれとも緑なのかどっちなんだ?
あやふやなものははっきりさせたい

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公はとても哲学的な人物。

世間的にはどうでも良いことでも、ひとつひとつ納得したいタイプのようです。

もしかしたら、10代後半に突然こんな感覚を持ったことがある方もいるかもしれません。

  • 自分だけが正しいと思いたくなる
  • 逆に自分だけが間違っていると思ってしまう

大人になると「どちらでもない」という曖昧さを残してしまいます。

それは、大人になると、突き詰めるだけの体力・気力がなくなっていくからです。

こういう悩みを持つことができるのは、若者の特権といえるかもしれません。

夕暮れ時の商店街の雑踏を通り抜けるのが面倒で
踏切を渡って 遠回りして帰る

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

しかし一方で、主人公は、多くの人の間にいると疲れてしまいます。

内向的で、感受性が高いのでしょう。

雑踏の中にいるというだけで、何かを受け取ってしまい疲れてしまう

この主人公の気性は、次の歌詞にも表現されています。

放課後の教室は苦手だ
その場にいるだけで分かり合えてるようで
話し合いにならないし
白けてしまった僕は無口になる

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公のはっきりさせたいという思いと、面倒だという思い。

これはときに「決めつけ」につながっていくのです。

それがこの部分です。

言いたいこと言い合って解決しよう
なんて楽天的すぎるよ

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公は、ふたつの思いを抱えています。

  • だれも自分の話を聴いてくれない
  • 自分は誰の話も聴きたくない

ある意味、とても頑ななのです。

そして、この決めつけと感受性が、次の歌詞に端的に表現されます。

誰かが溜め息をついた
そう それが本当の声だろう

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

主人公の感じた「本当の声」とは何なのでしょうか?

「いなくなる」というのはどういう意味か

黒い羊 そうだ 僕だけがいなくなればいいんだ
そうすれば 止まってた針はまた動き出すんだろう?

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

ある意味、自棄になっているとも取れる歌詞です。

なぜここまで違和感を感じなければいけないのか。

それは主人公の中に「自分を曲げたくない」という強い思いがあるからです。

全員が納得するそんな答えなんかあるものか!
反対が僕だけならいっそ無視すればいいんだ
みんなから説得される方が居心地悪くなる

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

世間的にはこういうのを「わがまま」といいます。

目配せしている仲間には僕は厄介者でしかない

出典: 黒い羊/作詞:秋元康 作曲:ナスカ

それも主人公はわかっている。

だからこそ自分がその場から消えることで解決しようとするのです。

「自分を曲げたくない」という信念を抱えながらも、それが原因で周囲の人々が作り上げた輪を乱してしまう。

そのこと解決するための策としてはあまりにも悲しい結論です。

人の目が気になる