Belleの歌う世界
millennium paradeとBelleが歌う「U」は、映画の主題歌として作成された楽曲です。
映画「りゅうとそばかすの姫」の世界観が盛り込まれながら、楽曲そのものの魅力もある。
とくに、楽曲のボーカルである歌姫Belleの声は秀逸です。
映画の主演も演じたアーティスト中村佳穂によるその声は、独特の歌の世界に誘ってくれます。
描かれているのは、Belleが住まう仮想現実の世界です。
仮想現実の世界は、現実の世界とは違います。
リリックは、現実の世界を抜けて仮想現実の世界はいかがかと手招きするのです。
目を背けたい現実よりも、自由に生きられる仮想現実へと。
楽曲では含みのある言葉を用い、まるで誌的な印象を感じさせる表現をあえて用いています。
そうして様々な表現が加味された楽曲は、映画の世界をより鮮やかに彩るのです。
そんな楽曲「U」のリリックの意味に迫ってみましょう。
現実と仮想現実
産まれたことは孤独になること?
臍の緒がパチンと
切られたその瞬間
世界と逸れて
しまったみたいだ
出典: U/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki tsuneta
私たちは母親の母体からこの世界に切り離されるときに臍の緒を切られます。
それまで安全であった場所から離されるのです。
「パチン」と、まるでハサミでモノを切るような音によって。
独りぼっちで、別の世界に放り投げられるように、今までの世界から逸らされる。
リリックの「パチン」は、一瞬を感じる音を表現したものといえましょう。
産み落とされ、世界に放り投げられるのは一瞬。
その瞬間に、私たちはそれまでの安心な世界から逸れてしまうということが表現されています。
つまり、このリリックはそれまでいた安心な場所から、一瞬で切り離された状態。
そのあっという間の時間的表現を表したものといえます。
母体は安心の象徴です。
その安心の象徴から切り離され、私たちはこの不安な世界に一瞬に逸らされてしまった。
不安な世界は、今も続いている。
そんな気持ちにあるようです。
幼い頃から今まで、ずっと不安な気持ちでいることが表現されているリリックでしょう。
残酷な現実から眼を反らしたっていい
眼に映る景色が
悲しく笑うなら
恐れず瞼を
閉じて御覧
出典: U/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki tsuneta
不安を感じながら進む世界。
その世界で描かれる景色は、見るものの眼に悲しく映っています。
しかも、ただ悲しいだけでは無いようです。
リリックでは、「悲しく笑う」とあります。
悲しい表情で笑っても、笑っているようには見えないもの。
むしろ、とても寂しく切ない印象を感じてしまいます。
「悲しく笑う」とは、悲しいのに笑顔であるような、切ない世界だということでしょう。
自分の目の前に見える世界は、悲しく笑うような切ない景色しかない。
もし、そうして目に映る景色が切なく悲しいものならば、瞼を閉じなさいと歌っています。
「恐れず」に。
瞼を閉じることは、周囲にとがめられそうです。
ちゃんと現実を見なさいと、指摘する人もいるでしょう。
でも、悲しく切なく、自分の心を侵食する感情に飲み込まれるくらいなら、瞼を閉じてもいい。
あなたを守るためなら、恐れず瞼を閉じ、目の前を見なくていいと表現しているのです。
誰を手招く「こちら」
ワクワクする方へいらっしゃい
さぁ!皆さん
こちらへ
どうぞ鼓動の
鳴る方へ
出典: U/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki tsuneta
「さぁ皆さん」とは、すべての人、この歌を聴くすべての皆さんです。
聴衆に対し、悲しく笑う世界が目の前にあるなら「こちらへ」と語りかけています。
「こちらへ」というのは、手招いて呼びかける表現です。
呼びかけている側の方へ誘っています。
ここでいう「こちらへ」は、現実ではない世界を指しているのでしょう。
誘う先は、悲しく切ない景色を見せる現実ではない場所。
瞼を閉じた先、つまり進むべき道は「こちら」がいいよ、ということなのかもしれません。
切ない思いをしている人へ「さぁこちらへ」と手招きする。
瞼を閉じた先ですから、目に見えない場所。
ということは、ここで表現されているのは目に見える現実ではないようです。
現実ではない場所、仮想に存在する世界、つまり仮想世界かもしれません。
しかも、手招きする場所は「鼓動の鳴る方」です。
鼓動、つまり心臓が鳴るということは、ドキドキすること。
ドキドキといえば、好奇心がムクムクと芽生え、心躍るシチュエーションが浮かびます。
このリリックは、今の哀しい場所で瞼を閉じているなら、こちらへどうぞ。
切ない現実世界より、ドキドキワクワク、あなたを楽しませる場所がありますよ。
そう、仮想現実へ手招きしているのです。
さかしまな世界
さぁ!蜃気楼に
飛び乗って
さかしまな世界
乗り熟して
出典: U/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki tsuneta