King Gnuが「ユーモア」に込めた音楽的なおもしろさを深掘り!
「CEREMONY」収録のCM曲
■CEREMONY
King Gnuの3枚目のフル・アルバム。2020年1月15日にAriola Japanから発売された。
■ユーモア
スマートフォン用アプリゲーム『ロマンシング サガ リ・ユニバース』1周年記念TVCMソング
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/CEREMONY
まさに曲名どおり!
「ユーモア」には音楽的なおもしろさがモリッモリに盛り込まれています。
これぞKing Gnu(キングヌー)とばかりに、あふれる音楽愛を世に知らしめたアルバム「CEREMONY」の4曲目。
スマホ向けRPG、通称「ロマサガRS」のCMソングとしてもおなじみです。
今回は常田大希さんが作詞をした歌詞にフォーカスして徹底考察します。
ただ、歌詞に出てくるのは「得体の知れない欲望」といった妖しげな言葉。
しかも鬱蒼(うっそう)とした暗い心情が描かれているようです。
そもそも歌詞の冒頭に登場する「ひらり」のように、「~り」という語尾の言葉が繰り返し出てきます。
語尾が「イ母音」の言葉も多数登場。
韻を踏みまくることで生まれているのが独特のグルーヴ(ノリ)です。
かわいらしい鉄琴の音がなぜか邪悪な雰囲気を醸し出し、無数の音がぐるぐるミニマルにループしています。
この曲そのものが「得体の知れないサウンド」。「1番、2番~」の区別もわかりにくいかもしれません。
まさに歌詞を体現するサウンドというか、サウンドを解説するような歌詞になっているとも考えられます。
そのため前もって、この曲の構成にも触れておきましょう。
曲の構成
- 1番:1A→1B
- 2番:2A→2B
- 3番:3A→3C
- 4番:1A→2A→3A→1B
邦楽らしい「Aメロ→Bメロ→Cメロ(サビ)」という3段階の構成ではありません。
Aメロがサビ、つまり頭サビで2段階の構成になっています。
3番で新たなメロディが出てきて、最後にサビの嵐が吹き荒れつつ、1番の繰り返し。
曲の構成そのものがスパイラル状の突風のようなイメージです。
この点を踏まえて歌詞を考察します。
1番Aメロの歌詞
深夜にダンス?
ひらりこの夜を踊るんだ
なんだかんだで上手く行く
気がしてきた午前一時
出典: ユーモア/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
フライング・ロータスやケンドリック・ラマーなどのLAビートシーンをリスペクトしている常田大希さん。
ヒップホップ好きという点を踏まえると、この歌詞も少々ラップ調です。
ただツインボーカルの片割れ、井口理さんはJ-POPらしい歌ものが十八番。
そのためラップっぽい歌詞なのに、メロディのある歌い方になっています。
「イ母音」で韻を踏んでいるのは、歌詞1行目と3行目です。
とくに注目したいのは、語尾が「~り」のオノマトペと時刻。
1番、2番…と進むにつれ、それぞれ変化していくところが印象的です。
日付が変わった深夜、とにかく今を乗り切ろうと自分を鼓舞する主人公。
実際のダンスも示唆しつつ、比喩的な表現になっていると解釈しました。
サウンド的にリズム重視のダンスミュージックを意識しているという話。
それからグルーヴ(ノリ)に合わせて体を揺らすように「乗り切る」というニュアンスが感じられます。
つまり常田大希さんが徹夜で音楽制作をしている情景ではないでしょうか。
一か八かの勝負
素晴らしきこの世界を
悪あがき、綱渡り
その心、裏腹に胸騒ぎ
出典: ユーモア/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
語尾が「イ母音」の言葉だらけ。
これこそ歌詞2行目なのでしょう。
ラップ調の歌詞を歌もの楽曲らしいメロディに乗せることが、苦肉の策であり一か八かの勝負。
この曲はタイアップ曲ということで、がっつりメインストリーム(主流)に属します。
そのためヒップホップ好きというオルタナティブな嗜好性をさらけ出す場面ではありません。
それでもラップ調の歌詞やエッジの効いたサウンドを盛り込むことで、King Gnuらしさを表現。
音楽性を重視しても大丈夫だろうかという不安感があるのかもしれません。
また、人気ゲームを彩る曲というお題もあります。
そのためゲーム世界のドキドキ感を醸し出しているとも考えられます。