「ゴッホ」について

2013年に発表の楽曲

「ゴッホ」は2013年に発表されたアルバムバンド・デ̪シネ」に収録された楽曲です。

バンド・デシネ」(Bande Dessinée)はフランスの漫画のことです。

スヌーピーなどが出てくる「ピーナッツ」のような漫画を思い浮かべるといいかもしれません。

日本の漫画のような作品は「MANGA」と呼ばれるので、別物です。

志磨はこの言葉が日本語にも聞こえるところを気に入り、採用したようです。

変幻自在の楽曲

楽曲はラップ調のパートから入ります。

ともすればちょっと小っ恥ずかしいくらいの歌詞ですが、これも志磨の魅力の一つでしょう。

このパートはラップとドラムだけの演奏です。

ラップというより語りに近いのですが、それがドラム絶妙に絡み合っています。

これが非常に気持ちいいのです。

そしてメロに入るとテンポが落ち着き、ミドルテンポのサビへと向かっていきます。

変幻自在で一つの映画を見ているような楽曲構成も、この曲の魅力です。

語られる自分の世界

葛藤するアナーキスト

アナーキー・イン・ザ・1K
ぼくのぼくによるぼくの国家は
ただ6畳一間の領土と
家賃差し引いて残した国家予算

出典: ゴッホ/作詞:志磨遼平 作曲:ドレスコーズ

1行目は伝説的パンクバンドSex PistolsのAnarchy In the U.K.」を文字ったものですね。

アナーキーは「無政府」「無国家」「無秩序」という意味の言葉です。

しかし次の行では国家という語を用いています。

狭い部屋を領土と呼び、なけなしの生活費を国家予算と呼んでいるのです。

アナーキストになりたいと言ったジョニー・ロットンに憧れて一人の世界を作る主人公。

しかしそこには現に実生活があり、日本の国家システムの中で生きている自分がいます。

自分のやりたいことと現実の狭間で葛藤している様子がうかがえるフレーズです。

交響楽的社会とは

地球の未来も気にせず
ぼくはここでひたすら考える
曰く、交響楽的社会
形而上学的道徳感

出典: ゴッホ/作詞:志磨遼平 作曲:ドレスコーズ

環境のことや世界のことなんか考えている暇はなく、自分のことで精いっぱいなのでしょう。

ひたすら考えに考えて行きつく先はどこなのでしょうか。

交響楽というのはオーケストラ楽曲のことですね。

多くの人が寄り集まり、それぞれの役割を担う社会をいっているのでしょうか。

それとも、協調して生きているようで実は一人ひとりが孤独な社会をいっているのでしょうか。

それはもう少し歌詞を読み進めるまで保留しておきましょう。

形而上学というのは、目に見えないものについて考える学問のことです。

心、精神、神……そういったものの実在を考えたり、証明したりする学問です。

アナーキストを気取っていても、結局考えた末に出てくるのは社会や一般的な道徳のこと。

ここでもやはり主人公は葛藤を重ねます。

ゴッホは嫌だ……の真意は?

漫画から受けた影響

少年マンガ原理主義に則って
いざぼくらは進め
ド正義だ 邪魔するやつらは
いい日を選んで目ェ噛んじまえ

出典: ゴッホ/作詞:志磨遼平 作曲:ドレスコーズ