1台のハイエースがバンドを次の街へと連れて行く。愛しい窮屈な旅行記。
マイヘアは、恋愛ソングだけでなく日常的な曲でさえも、
思っている事や事実を包み隠さずに描いている作品が多く存在します。
今回選曲させて頂いた『音楽家になりたくて』は、バンドの日常を歌っていて、
まだ無名だった時のバンドの状況と、有名となってきた今のバンドの現状が、
織り交ぜながら綴られています。
”夢を売らない”バンドが”夢を乗せて”日本中を走り回るハイエース。
この移動車に乗り込めば、自分たちを楽しみに待っていてくれているファンの元へ連れて行ってくれる。
彼らは、年に数十本どころでは無く、
年がら年中ライブをしている、正真正銘のライブハウスバンドである為、
最悪うまくいかなくても、間を空けずにすぐ挽回する事が出来てしまう。
その一方で、同時にルーティン化となりマンネリになってしまう事もあるだろう。
大好きな音楽が仕事になっていく嬉しさと不安が入り混じりながらも、
”音楽家になりたい”という嘘の無い心の叫びが詰まっている曲です。
”こうして音楽を続ける事が出来るのは、いつも応援してくれているファンのお陰です。”
と、日頃の感謝の気持ちにも感じる、
『音楽家になりたくて』の歌詞を汲み取って行きましょう!
あの日と同じバンドを僕は続けている。
ありがとう また今度って
僕らは車を走らせた
大丈夫さ きっとどうにかなるだろう
旅情はきっと良好なんだ
なぜかいける気がしてんのさ
あの日と同じ名前の
バンドを僕は続けてる
路地裏のライブハウスに
今夜も明かりが灯ってる
ハイエースに揺られている方が
よく眠れるようになっていた
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
一台のハイエースに乗り込み、繰り返される毎日。
ステージに立ちライブをし、ステージを去り、
車に乗り込み移動。
バンドマンの生活を垣間見れる部分です。
バンドという厳しい世界に足を踏み入れ、
ツアーという旅行に出かける日々。
自分たちの音楽に出会って欲しいから各地を巡る。
自分たちの音楽を待ってくれる人たちがいるから各地を周る。
それは売れてきても、バンドが変わらないのと同じ事です。
そうやっていくうちに、いつの間にか生活そのものになり、
ハイエースがある意味住む場所になっていったのでした。
1に努力 2に挨拶 34はサボって
5には友と飲んで 気が付けば
また次の知らない街にいて
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
バンド活動の12345のルーティーンワーク。
そうやって次、また次へと、
いつものハイエースに揺られながら旅をするのです。
そうこうしているうちにも
そっと時間は幻みたいに
そうしているうちにさ
そっと未来が耳元を切って 過ぎていくだけ
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
めまぐるしく走り去る一日。
次から次へと走りぬくハイエース。
長いようで短かった、早かった。
自身のバンド人生を振り返っているように感じます。
始まるまでは、不安だらけで本番を迎えるのが怖くても、
いざお客さんを前にしたら、さっきまでの気持ちが嘘みたいに、
ライブを一緒に楽しんでいる。
物足りなさを感じながらもライブは終わる。
そういった一瞬の時間を生きるのがライブバンドの生き様なのかもしれません。
いつか俺もこんな風に。
いつか俺もこんな風にって
雑誌に噛り付いていた
みんなすぐ結婚するんだ
ロックスターより遠く感じてる
煩いな もうわかってるって
やる気がないならやめてるよ
もういいよ どっちでもいいよ
ただ今夜はそばにいたいんだ
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
バンドを始めた時から読んでいた音楽雑誌。
かっこいいなあと思いながらも、”いつかは自分も”
と胸を熱くさせていた。
その一方で、周りの友達との温度差。
自分以外は普通に会社に就職して、結婚して、
幸せそうな顏を並べている。
ロックスターになる事は、嬉しい事に近づいていはいるが、
普通の生活はどんどん遠くなっていくという気持ちの焦りが感じられます。
もがき苦しんでる姿に、寄ってくる女にも口出しされる始末。
「やる気がないならやめてるよ」
って、そう言う強がりしか出来なかった。
強がりとカッコつける言葉の裏には、
(バンドに確信がある訳でも無いし。)
という焦りや自分への情けが潜んでいるように感じます。
1にマメさ 2に優しさ 34はブチって
5で女に会って抱きしめていたら
急に怖くなって
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
恋愛の12345のルーティーンワーク。
椎木自身の恋愛気質が見えてきます。
人に想われたい。けど同時に怖いと思ってしまう。
不器用な部分が伝わってきます。
そうこうしているうちにも
そっと痛みは幻みたいに
そうしているうちにさ
そっとあの子が耳元を切って 消えていくだけ
出典: 音楽家になりたくて/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
いくつも重ねてきた恋愛。
恋の痛みはその時は大きくても、気がつかないうちに無くなっている。
なんであんなに苦しかったんだろう?
と思ってしまうくらいに。
気がついたときには、失恋した相手は、
自分の中で消えていた。
いや、無意識に消していたのかも…。