コンクリートに囲まれた東京の風景を象徴しているのが、「太陽が射し込む街」という歌詞

大都会の朝の太陽は部屋の中に照りつけるのではなく、建物の隙間を縫って射し込むのです。

過剰なまでに押し寄せる「情報」は、まさに渦巻く水のようでもあります。

そんな渦を「掻き分ける」ように生きなければならない不自由な環境は「水槽」に例えられています。

しかも、この水槽の中の世界は、「平凡」に振る舞うことも「許してくれない」のです。

さて、ここまでの歌詞を読むと、大都会の息苦しさだけを感じるかもしれません。

しかし、夢に向かって突き進む「TOKYO GIRL」が輝くのは、ここからです。

「どんな風に気持ち良く泳げたら」というポジティブな思考。

平凡かどうか、他人の目を気にすることより、自分らしさを失うまいとするハートが伝わります。

さらに続く前向きな歌詞「照らして」「今日も着飾って」

そして「めいっぱいに手を伸ばして」という、エネルギッシュな言葉。

きらめくような「TOKYO GIRL」のマインドはリスナーに共感を覚えさせ、勇気を与えてくれるのです。

見つめているのは「未来」

踊れ Boom Boom TOKYO GIRL
色とりどりの恋
Let us be going! going! BOY
Kawaiiと駆ける未来
踊れ Boom Boom TOKYO GIRL
廻る街 メリーゴーランド
彩りのサラウンド 奏でるわ
ここにいるあなたへ

出典: TOKYO GIRL/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ

「踊れ」で始まるBメロ。

動的な歌詞は、ここでピークを迎えます。

「廻る街」「メリーゴーランド」「サラウンド」は、環境の目まぐるしさを見事に言い当てた表現。

「Boom Boom」というフレーズも、歌詞にリズムを生み出しています。

さらに、注目するべきリリックは「未来」という単語。

ここまでの歌詞に一貫するポジティブさは、未来を見つめているからこそのもの。

「色とりどりの恋」も、未来を見つめた先にあるものの象徴です。

未来を見つめること、つまり、夢を見ることを楽しまなくちゃ。

そんなメッセージが伝わってくるようです。

テクノポップのクールな流儀

Perfume「TOKYOGIRL」の歌詞をチェック!夢見て楽しんで、踊れ♪東京にいるあなたへ贈る歌の画像

夢見るTOKYO GIRL

たくさんのモノが行き交う街で
何気なく見てる風景に
なにかもの足りない特別な
未来を指差して求めてる

出典: TOKYO GIRL/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ

サビの歌詞は一転、シリアスなニュアンスへと変化します。

ここに、Perfume中田ヤスタカの真髄があるといえるでしょう。

「モノが行き交う街」という冷静な視点と、「なにかもの足りない」という不安な心理。

サウンドが最も盛り上がるサビの歌詞で、ポジティブさ一辺倒ではない繊細さを打ち出しています。

まさに、クールさを大切にする正統派テクノポップならではの流儀のように思えるのです。

クールな歌詞へのアプローチは、これだけではありません。

「TOKYO GIRL」という言葉以外に、舞台が「TOKYO」であることを直接言い表す言葉は出てこないのです。

さまざまな表現を凝らして、舞台が「TOKYO」であることをイメージさせているに過ぎません。

言い換えれば、押し寄せる「情報」や不自由な「水槽」は、誰の周りにもあり得るということ。

ここで、わかりやすい例を紹介しましょう。

中田ヤスタカが敬愛するYellow Magic Orchestra(YMO)のヒット曲「君に、胸キュン。」1983年)。

タイトルは当時、化粧品CMのコピーにそのまま起用され、大流行しました。

しかし、実際の曲中で「胸キュン」というフレーズが登場するのは、Aメロの冒頭のみ。

そこから先には一切登場しませんが、そのサウンドの雰囲気はタイトルと完璧にシンクロしました。

そうした高度な手法を継承しているのが、中田ヤスタカなのです。

テクノポップと「TOKYO」

未来のキーワード

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Perfume、そして中田ヤスタカが追求してきたテクノポップという音楽。

電子楽器で未来を表現してきた音楽はたびたび、「TOKYO」を舞台に選びます。

例えば、YMOの「TECHNOPOLIS」1979年)。

イントロではTOKIOのフレーズがリフレインされています。

奇しくもその同年、英国のニューウェイブバンドJapanシングル「Life in Tokyo」をリリース。

1998年には、Ace of Base「Tokyo Girl」という曲を発表します。

スウェーデンのダンスミュージックグループの曲は、アルバム「Cruel Summer」に収録されました。

そして、2010年代の今。

日々変化する「TOKYO」が、未来を予感させる都市であるということに変わりはありません。

未来の象徴としての「TOKYO」の息遣いをリアルに表現しているのが、Perfumeであるといえます。

YMOが「TECHNOPOLIS」がMVで表現した近未来の「TOKYO」。1970年代に描いた近未来は、レトロそのもの。音楽が時代とともに進化を遂げるように、都市もまた進化するということがよく分かります。

J-POPの新境地へ

2020年代への期待

日本ではまだ馴染みの薄いサウンドを積極的に取り入れ、J-POPに溶け込ませてきたPerfumeの音楽。

未来のサウンドを常に提示する姿勢は「FUTURE POP」をはじめ、これまでの作品にもよく表れています。

エポックメイキングな音楽を作り出すアーティストは、いつの時代にも存在するもの。

しかし何作にもわたり、時代をリードする作品を重ねられるアーティストは、そう多くありません。

テクノポップというジャンルを超え、音楽シーンの第一線に立ち続ける彼女たち。

ヒットメーカーの中田ヤスタカ、そしてPerfumeは、J-POPの新境地を切り開く力を持っているのです。

リスナーに寄り添う等身大の歌詞は、彼女たち自身のの等身大を映した歌詞でもあります。

30代を迎えた彼女たちが、どんな等身大の物語を紡ぎ出してくれるのか。

見届けないわけにはいかないのです。

まとめ

Perfumeの魅力を一挙に